ハーバード大学医学大学院の外郭団体、「コーチング研究所/Institute of Coaching (IOC)」所蔵のコーチングに関する論文やリサーチ・レポート、ブログなどをご紹介します。
変化の激しい時代における自己変革への手引き
2019年07月12日
継続的な創造的自己破壊の勧め
変化の激しい時代において自己変革にうまく対処するには、セルフリーダーシップ、機敏さ、不快な感覚を受け入れる能力が必要である。創造的な自己破壊は、「目覚まし」のような役割を果たし、注意力と気づきの向上を促す。
自己変革のための新しいリーダーシップの資質
今日、不安定な環境が広がり、私たちは安全地帯に身を置くことができなくなっている。急激な破壊的変革にうまく対処するためには、新しい能力が必要である。非常に困難な課題に直面したときに、集中すべきことを調整したり、見直したりするために、オープンマインド、明確さ、勇気、機敏さが求められている。注意すべきことを明確にできるように、簡潔さも不可欠だ。また、オープンな考え方を持つことで、あるがままの自分を受け入れることも重要である。自分の感情に気づき、それらが私たちに与える影響をうまく管理できるようにならなければならない。
自己変革に効果的なマインドセット
- 目的や自分の本質的な力を感じることを常に意識する
- 優先順位を理解して重要なことのみに集中する
- 他の人が新しい知見を得るために何をしているか聞く
- 自分が得た教訓を取り入れて前進する
- 不要なものを捨て、進むべき道の選択によって失うものがあることを受け入れる
- 勇気ある決断を下し、一歩ずつ前進する準備をする
激しい変化が変革、創造性、心の平静を呼び起こす
自分の情熱に気づくことで、自分を「充電」し、自己を更新、再構成、再調整できるようになる。これはたとえて言うなら、現在のニーズに合った新しいOSをインストールし、新たな強みを生み出してそれを賢く活用することで、問題に対処する力を発揮することである。このプロセスは、私たちにエネルギーや刺激だけでなく、心の落ち着きを与えてくれる。
心の落ち着きとは、力強くも静かな状態であり、心の中から生まれる穏やかさのことだ。訓練を積むことで、静かなその境地に速く辿り着けるようになる。本番モードに戻るまでの時間が短縮され、力強く熱心に他者や仕事に関われるようになる。
混乱の中でも台風の目のような平静さで解決策を見出す
自己認識の高い人は、次の段階の自己開発に向けて、立ち止まったり創造的な自己破壊を行う大胆さを持ち合わせている。セルフリーダーシップとは、継続的な変革と成長のプロセスである。現状維持という選択肢はない。必要なのは、不要なものを捨て、変化して成長するという動的な適応プロセスである。
自己変革のプレッシャーを感じるときに、強く平静な心を保つ
- 深呼吸して落ち着き、考える時間を作る
- 自分の気持ちに気づき、言語化する。プレッシャーを感じたときに自分の反応を観察する
- あるがままの状況を受け入れる
- 常に気持ちや感情を挟まずに自分や他者の声を集中して聞く
- 自分が持っている選択肢や予備の対応策の中から意志をもって選択する
自己変革は持続可能なことが重要
自己変革によって、私たちは常に自分の向かう先を確認して自分自身の運命を新たに創造できるだけでなく、その過程で重要なステークホルダーと一緒に新しいチャンスを切り開くことができる。自分たちにはさまざまな選択肢があることを認識し、しかもそれを慎重かつタイムリーに選択すべきことを知っている。究極の自由とはこのようなものである。どの選択肢を選んでも失われるものがある。それは終わりであるとともに新しい始まりでもある。このようにして、私たちは協力して人生を新たに創造することができる。
成功に向けて切磋琢磨するパートナーをもつ
- 相手との関係を維持し、自分にも相手にも誠実に接する
- 重要なステークホルダーと継続的に対話する
- 共に目指す目標を設定する
- 互いの期待や限界を理解し尊重する
- タイムリーなフィードバックと将来に向けた提案によって共に成長する
速く進むべき時とゆっくり進むべき時を知ることが大事だ。自分が充電する時間を確保し、目的、目標、意図を定期的に再確認する時間を取るべきだ。永続的な成功のためは、このような姿勢・行動が欠かせない。
私の経験上、自己変革の能力がある人は、次のような資質を持っている。皆さんも自分の進路を定め、目標に向かう旅を楽しんで欲しい。
自己変革力のあるリーダーが持つ資質 | 必要な能力 | 取り組んでいること | さらなる成長方法 | 自己評価方法 |
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明確さ | 目標へと向かう力を強化する |
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集中力 | 目的を意識し、エネルギーを集め、活力を生み出し、障害を排除する |
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勇気 | 本当のエンゲージメントを実現し、強い心を与え、不安と恐怖の克服を可能にする |
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オープンマインド | すべての感覚を使って傾聴し、「あるがまま」を受け入れ、好奇心と注意深さを獲得し、優れた解決策を協力して生み出すことを可能にする |
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自信 | 自分のさまざまな能力やポテンシャルを活用して自信をつけ、障害を乗り越え、信頼や共感を生み出す |
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機敏さ | 重圧への対応を容易にし、適応したり罠を回避したりするのに必要な、精神的・感情的な粘り強さを与える |
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簡潔さ | 物事を明確にして管理しやすくし、他者に刺激を与え、自由を生み出し、美しくある |
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自己変革に向けて自分を鼓舞する
自己変革とは、現状維持は不要だと考えることである。困難な状況に積極的に向き合うとは、自己変革を正面から受け止め、勇気を持って積極的に自己破壊し、自分のあり方や考え方を絶えず更新・革新することなのである。
自己変革の重要なポイント
- 困難な状況を新たな標準として受け入れる
- 行動の速度を上げたり下げたりして、自分のペースを決める
- 変革がもたらすチャンスを見極める余裕と時間を確保する
- パートナーと協力して自分の強みをはっきりと見定め、それをさらに活かす
- 常に自分のビジョンと夢に目を向け、楽しみながら目標に向けて邁進する
【筆者について】
マリーールイーズ・ゾーリンジャー(Marie-Louise Zollinger)氏は、長年にわたり国際的な多文化ビジネス環境においてエグゼクティブコーチに従事。グローバルな組織の変革期における経営幹部へのリーダーシップコーチング、ファシリテーション、幅広いコンサルティングの経験を持つ。2001年にNewsight Consult AGを発足。国内外の提携パートナーと共に活動をおこなっている。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Courageous Coping with Disruption: for progressive outcomes in exponential times
(2018年12月31日にIOC BLOGに掲載された記事の翻訳。IOCの許可を得て翻訳・掲載しています。)
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