Coach's VIEW

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本当に優秀なコーチとは

多くの経営者やマネージャーは、
「自分が」やらなければならないと思っています。
自分が業績をあげなければいけない、
自分が影響して部下を動かさなければならない、と思っているわけです。
確かにそれがなければマネージャーとしての存在価値を
疑われてしまうかも知れません。

約一年前から、歯科医師のコーチングをしています。

最初に取り組んだのは、収益を増すために、
患者さんをランクに分け、各ランクに応じたサービスを行うこと。
より綿密なサービスを行うことで紹介が生まれ、新しい患者さんが増える。
彼はある経営セミナーでその手法を学び、実行してみようと思ったのです。
彼はミーティングでそのことをスタッフに伝えました。
ところが、スタッフの反応はいまいちでした。

次に取り組んだのは、キャンセル率を下げること。
データーを見るとキャンセル率がびっくりするほど高い。
どうやったらキャンセル率を下げられるか、
彼はアイデアを考え、それをスタッフに伝えました。
ところが、スタッフの反応は今度もいまいちです。

その後も、ことごとく彼の出すアイデアはスタッフに伝わりません。
私は彼に質問しました。

「今の医院に必要なことは何?」

「もっと、スタッフに任せること。
 責任を持たせて自由にやらせること。
 最終的には、スタッフ一人ひとりの魅力で
 患者さんがくるような医院にしたい。
 自分がいなくても回るような医院にしたい。」

彼は、アイデアをスタッフに考えさせ、
自分は口出しをせずに、自由にやらせてみることにしました。
彼はコーチになったのです。

最初の成果はキャンセル率の劇的な減少に現れました。

今までは、受付で次回の予約をとっていたものを、
診療が終わったらその場で
歯科衛生士が直接次の予約をとるように変えたのです。
患者さんは、直接歯科衛生士と予約をしていますから
心情的にキャンセルしにくくなります。
患者さんと歯科衛生士のコミュニケーションも
必然的に増えていきます。それをきっかけにして、
それぞれの歯科衛生士に患者さんがつくようになっていきました。

スタッフの魅力で患者が来る。
自分がいなくても医院がまわる。
彼の思ったことが実現しはじめたのです。

先日のコーチングセッションです。

「去年よりかなり収益がアップしています。
 年間の目標はもうちょっと頑張れば
 達成できそうなところまで来ています。」

「それは素晴らしいですね。
 うまくいっている要因は何だと思いますか?」

「自分が、口出ししないことにつきますね。」

医院の経営は順調です。しかも、スタッフは、
自分たちがうまく行かせているという実感をもっていますから、
ますますやる気になっている。すべて彼の思い通りに進んでいるのです。

「先日、一番信頼しているスタッフから
 ショックなこと言われちゃったんですよ」

「何を言われたんですか?」

「この一年間、スタッフは本当に成長したと思う。
 いろいろアイデアを考えて、工夫もして
 みんな頑張ってとっても良い医院にしてきたと思う。
 でも院長は何もしてないじゃないですか。」

本当に優秀なコーチは、
コーチのおかげですなどとは露とも思わせないものなのです。

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