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脳を飽きさせない
コピーしました コピーに失敗しました一説によると、1分間に平均的な日本人が話す単語数は150単語ぐらいだそうです。
それに対して、平均的な日本人が1分間に脳で解析できる単語数は約600単語。つまり脳の解析スピードの方が話すスピードよりもずっと早いわけです。これは何を意味するのかというと......。
簡単に言えば、脳の回転の方が速いために、人の話を聞いていて「飽きる」ということが頻繁に起きます。脳はしょっちゅう「お散歩」に行ってしまうわけです。目の前の人の話を聞いていたつもりが、気がつくと違うことを考えている。そんな経験はありませんか?
特に男性の脳はそうです。ご結婚されている方は、一度や二度ではないはずです。奥様から「あなた聞いてるの!」と叱咤された経験は。これはもう脳の構造上しょうがない。そういうものです。だから、聞くことが「受動的」なものであると思ってしまったら、これは辛い。
「聞くことは、じっとしていなければいけなくて、忍耐が必要で、我慢が必要で、絶えなければいけなものだ」などと思ってしまったら、ものすごく苦しいでしょう。外を歩き回りたくてしょうがない子どもを家にとどめるようなものですから、相当に大変です。
とすると、お散歩しやすい脳を「引きとめよう」と思えば、やはり「能動的」に相手の話を聞く必要があります。受身ではなく、一歩前に出るような感じで聞く。刑事コロンボが聞き込みをするかのように聞く必要があります。そして、能動的に聞くためには、当たり前ですが、相手に対して興味関心を抱かなければなりません。興味関心があるからこそ、能動的なリスニングができます。
ということは、おわかりだと思いますが、初対面の人の話を聞くのは実はそう難しくない。お客様の話を聞くのも、ましてやコーチングのクライアントの話を聞くのもそう難しくはない。利害関係もありますし、相手に興味も持ちやすいですから。
いつも一緒にいる人に興味を持ち続けるには
難しいのは、「いつも一緒にいる人」の話を今日も新鮮な関心をもって聞くことです。これが難しい。
いつも一緒に仕事をしている部下の話を、今日も新鮮な想いで聞けるか。20年連れ添った妻、夫の話を今日も新しく聞けるか。ここが最もリスニング能力が試される瞬間です。
だいたいちょっと一緒にいれば、その相手に対して多少なりともレッテルを貼ります。この人はこういう人。こういう話をする人。貼ったレッテルが大きければ大きいほど、新鮮な興味は持ちにくいですから、相手の話が聞けなくなります。
では、いつも一緒にいる人に興味を持ち続けるにはどうしたらいいでしょうか。
ひとつの解は、「何を知らないかについて予め知ること」です。
行く部署行く部署で業績を一気に上げてしまう、ある企業のマネージャーさんがこんな風に語ってくれました。
「僕は、部下について自分が何をまだ知らないのかを把握しようと努めています。そうでないと、『こいつは企画書作りが得意なやつ、こいつは不得意なやつ』と、非常に相手を『粗く』見てしまうからです。粗く見てしまうと、話も粗くしか聞けなくなってしまいます」
だから彼は、「予め」知らないことを知ろうとします。
「この部下を動機付けるために最適な言葉はなんだろう?」
「一発で彼のモチベーションを下げてしまう言葉は?」
「なぜ彼はこの会社を選んだのだろうか?」
「どんなことを将来実現させたいと思っているのか?」
「彼にとっての成功とは一体なんだろう?」
こうした部下に対する質問を予め50近く用意し、「知らないことを知る」ことによって、比較的長い間、相手に興味を持つ続けることができるといいます。
知らないことを知ることで、相手に興味を持つことができ、結果として能動的に話を聞くことができる。脳のお散歩を食い止めるためにも、何を知らないのかをまずは知ってみませんか。
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