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未来は過去から

未来は過去から | Hello, Coaching!
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いきなり「未来」について問われると戸惑うことがあります。

こんな経験をされたことはないでしょうか?(女性の方はこのような経験を男性にさせたことはないでしょうか?)

突然、奥様や彼女に聞かれる。
「ねえ、今日外食しましょうよ。どこがいい?」

いきなりの質問に戸惑い、
「えっ、どっ、どこでもいいよ」

少しムッとした表情で向こうが返す。
「どこか行きたいところないの?」

とりあえず何か言わなければいけないという切迫感から、
「じゃ、じゃあイタリアン」

彼女の眉はさらにつりあがって、
「この前もイタリアンだったじゃない。ワンパターンね」

返す言葉もなく、
「......」

男としてその瞬間ディシジョン(決断)が求められるわけですが、何も浮かばず頭が白くなってしまう。もし、これが「優しい」奥様や彼女であれば、きっと違うアプローチを取るでしょう。

「ねえ、今日外食したいと思ってるんだけど......あっ、そういえば昨日あなた外で食べたわよね。何食べたの?」
いきなり未来を決断させるのではなく、まずは過去を思い出させてくれる。

「えっ、昨日? 上司と寿司食べたんだ」
「そうだったの。最近わりと外食が多かったけど、どんなもの食べてたの?」
さらに過去に遡ってくれる。

「そういえば、結構和食が多かったな。割烹とか。さっぱりしたものが多かった」
「そうだったの。実は、今日外食しようと思ってるんだけど、何が食べたい?」
過去から「素材」をある程度集めたうえで、おもむろに未来に振ってくれる。

「そうだね、たまには力がつくような脂っこいものも食べたいな。あっ、焼肉なんかどうだろう?」
「いいわね! 行きましょう!」

こんな奥様、彼女が実在するとは思えませんが(笑)、相手の未来を引き出すには、まず過去に振るというのが実は鉄則です。

理由は2つあります。ひとつは、人は、比較対象するものがあると話しやすいから。もうひとつは、思い出せば答えられるものの方が、考えなければ答えられないものよりも話しやすいからです。いきなり比較対象するものもなく考えろといっても、相手は困惑するのがオチです。

コーチングの研修に参加したマネージャーの中で、すごく盛り上がってくださる方がたまにいらっしゃいます。

「鈴木さん! コーチングって素晴らしいね! これからは俺も部下から引き出すよ! 引き出して引き出して引き出しまくるよ!」

そういうのを聞くと、危ないなと思うわけです。そういう方に限って、現場に帰って部下にぐぐっと詰めより「おい、お前の夢は何だ?」みたいなことをしてしまう。何の前振りもなく白い画用紙を用意されて、いきなり「さあ、君の未来を描いて」と言われても、よっぽど普段そのことについて考えていなければ出てはきません。

それよりは、まず、「今やっている仕事の中で、自分で得意だなと思うことは何?」「去年一年を振り返って、何をしているときに一番モチベーションが上がった?」「そもそも、この会社でどんなことを実現したいと思って入社したの?」など、思い出しやすい近くの過去から始めて、だんだん遠くの過去に遡っていく。頭の中に未来を語るために必要な材料をイメージさせて、そして未来に意識を振る。「ところで、この3年ぐらいで何を達成したいと思う?」きっと、部下はこれまで以上に多くのことを語ってくれるでしょう。

相手の未来を聞きたくなったら、まず過去に振る。相手に優しいちょっとしたテクニックです。

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