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コーチの舞台裏
2006年04月19日

「どんな質問をしたらいいかわからない」
これは、コーチングを学び始めたほとんどの人が行き着く課題です。
「コーチングでは、質問を通じて相手から引き出す」
「コーチは効果的な質問をする」
というセリフがよく使われています。
しかし、あまり「質問、質問」と意識をし過ぎると、
肝心の相手が話をしている間に、次に何を聞こうか考えていて、
結果としてピントの外れた質問をしてしまうことがあります。
あるコーチのメンターをしていて、
私がクライアント役をしたときのことです。
こちらが話し終わると、毎回3秒くらい間がありました。
「あの~もしもし? 今、何をしているんですか?」
「平野さんが話していることを書いていました。
次の質問は何にしようかと思って・・・」
質問 Question の語源は、ラテン語のquaerereであり、
そこから、「探求する」という意味をもつ「Ask, Seek」と、
「事実を追求する」という意味の「Question」が派生しています。
"What is this ?"
"This is a pen"
というのは、私たちの頭の中にある質問の基本形のように思います。
コーチングセッションで行う質問で陥りがちなのは、
このタイプの質問です。
「あなたの価値観は何ですか?」
「あなたのゴールは何ですか?」
価値観を知るのに、直球で「価値観は何?」と聞かれれば、
その人が日ごろ用意している答えしか出てきません。
そこで、価値観を知るための質問による棚卸しが必要となるのであり、
そのための準備がコーチ側には求められています。
昨年、アメリカの人材育成のカンファレンスに行った際、
あまりにも多くのテストが出展されているのに驚きました。
テストは、「診断されるもの、結果を見るもの」と解釈されがちですが、
実はテストで有益なのは、「質問に答えるプロセス」を提供することにあります。
ありとあらゆる質問を投げかけられることで、
自分では無意識に行っている行動パターンに意識を向けることができる。
それに気づくことで、他の選択肢があることを発見する。
これはまさに"quaerere"効果です。
先ほどの価値観の話に戻ると、
「あなたのことを周りの人は何て言ってる?」
「今の会社を選んだ動機は?」
などと質問し、棚卸しするのが効果的であり、
そのことについて意識を向け、話すことで、
そこに反映されている自分の価値観に気づくことができるのです。
私の周りにいる有能なコーチは、コーチングセッションの際に、
テストの一覧や質問100問など、たくさんのツールを用意しています。
コーチングセッションの舞台裏では、これらを目の前に広げて、
そこから適切なものを選び出して使っています。
棚卸しをする、そのことについてお互いに話す。
このイメージをもつと、コーチングにおける質問に、
より広がりが生じてくることと思います。
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