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コーチングとティーチング

コーチングとティーチング | Hello, Coaching!
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「学習」という言葉を辞書で引いてみると、「経験や伝聞を通じてその知識や技能を獲得し行動が変容すること」と定義されています。

教師は生徒に学習して欲しいと願っています。上司は部下に、親は子に、医師は患者に学習して欲しいと願っています。

コーチングもティーチングも「学習」に向けて行われているのです。

学習の定義で大切なのは、「行動が変容すること」

学習の定義で大切なのは、「行動が変容すること」にあります。つまり、再現性があるということなのです。

言われた通りにはできるけれど、自分ひとりではできない。これでは学習したことにはなりません。いわゆる指示待ち族です。

自分で考え、行動し、その結果に責任を持つことのできる自律型の人材を育てるためには「学習」が重要なのです。

効果的な「学習」のためにはコーチングとティーチングをうまく使い分ける必要があります。

まずは相手に、コーチングとティーチングの違いを理解させることが大切です。


今から10年前、私がコーチを始めて間もない頃の出来事です。知り合いからひとりのクライアントを紹介されました。社員数約100名の会社の若手経営者です。コーチングの目的は、「よりよい会社経営」。週に一度、30分のコーチングが始まりました。

ところが3ヶ月目のセッションでのことです。「ところで桜井さん、いつになったら経営について教えてもらえるんですか?」私はびっくりしてコーチングとは何かを説明し、ティーチングとは違うことを理解してもらいました。すると、彼は言いました。「だったら私の求めているものとは違う」。

このようなすれ違いは、上司と部下との間でも起こります。上司がコーチングを学びそれを使おうとする。ところが部下は、

「なんで教えてくれないのか」
「言いたいことがあるならはっきり言って欲しい」

などというような反応を起こすことがあります。

コーチングを機能させるためには、まずはコーチを受ける相手にコーチングとティーチングの違いを理解させ、今はどちらを行っているのかを共有しなければなりません。

コーチングとティーチングを、人や対象、状況によって使い分ける

もうひとつのポイントは、コーチングとティーチングを、人や対象、状況によって使い分けることです。

一般的にコーチングは、「その領域において高い能力を持ち、かつ、自分で決めることができる範囲を広く持っている人」に有効だと考えられています。そのためエグゼクティブやマネジメント層に対するコーチングは早くから行われてきました。しかし最近では、より現場に近いところにもコーチングが応用されるようになっています。

先日ある大手金融機関の新入社員研修の責任者、Kさんと話す機会がありました。Kさんは、コーチングとティーチングの使い分けについて次のように話しています。

「法令などの知識的な学習には、ティーチングの方が適している。しかし、営業のアポ取り電話のようなスキルに類するものは、コーチングの方が効果が高いのではないかと思う」

Kさんの会社には、非常に優れた営業マニュアルがあります。

これまで新人営業マンには、そのマニュアルをティーチングによって徹底的に叩き込むという研修が伝統的に行なわれていました。Kさんは、その研修の一部にコーチングを取り入れたのです。

新人に対してマニュアルを渡すのをやめ、どのようにしたら好印象を与える電話がけができるかをコーチングによって引き出して、手作りのマニュアルを作成しました。出来上がったマニュアルは荒削りなものでしたが、以前のマニュアルを使っていたときに比べて実際の電話がけのスピードや本数が格段に良いというのです。

Kさんは言います。

「現場では、コーチングよりもティーチングの方が効果的な場合もたくさんあります。ですから、全部をコーチングに変えようとは思っていません。でも、今まで当たり前のようにティーチングでやってきていたことも、コーチングを取り入れることで学習効果があがる領域が他にもたくさんあるのだと思います」

あなたは部下の「学習」を高めるために、何をコーチングし、何をティーチングしますか?



[コーチングの基本]
「コーチング」「ティーチング」のメリットと限界
コーチングとティーチングを効果的に使い分けるためにはどんなことを知っておけばいいでしょうか。 ...

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