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『問いの共有』が行動を起こす
2008年01月30日
どんな場面で、どんなタイミングで、部下をコーチするか。これは、マネージャーにとって、大きなテーマかもしれません。しかし、前提をつくっておくことで、いつでも、どんなときでも、コーチすることが可能になります。
それは、「問いを共有すること」です。
社内において、また、チーム内で「問いの共有」があれば、それについて、部下にいつでも声をかけ、その「共有されている問い」について話し始めることができます。 また、自由に話させることもできます。
一人ひとりに対して個別に問いかけるのではなく、全体で、未来に向けて、問いを共有するのです。
「近い将来、我々が遭遇するリスクには何があるだろうか?」
「我々のサービスは今、世界一だろうか?」
「今、仕事に情熱をもちこんでいるか?」
部下は、こうした問いを投げかけられることによって、ふだんはもっていなかった視点をもつことになります。
自分だけの小さな世界から、もっと大きな世界からの視点、複数の視点をもつことになるのです。それによって、組織の中における自分の責任や、役割に対する意識も高まります。
「わかったつもり」から、「行動」へ
また、「問い」には、「わかったつもり」から、「行動」へと移行させる力があります。問われれば、どうしても、「わかったつもりでいたのに、まだわかっていないことがあった」ということに、気がつかないわけにはいきません。「わかったつもり」とは「安定」した状態です。いわば、現状に胡坐(あぐら)をかいた状態だから、行動は起こりにくい。
「わかったつもり」になっている人たちは、
「そんなことはもうわかっている」
「だから、言っただろう」
「だって、こうなんですから」
と決まり文句を言います。彼らの行動は遅く、パターン化していて、ときに、強面の上司ですら彼らを動かすのはむずかしいものです。けれども、恒常的に問われ続けると、「わかったつもり・安定」から「わからない・不安定」へとシフトしないわけにはいかなくなります。すると、どうなるか? 行動が起こるのです。
人は不安定になると、安定するために行動を起こします。これは、仕事のアサインや新しい役割を任命するなどのよいタイミングとなります。
「問いの共有」のもう一つの大切な働き
もう一つ、「問いの共有」には、大切な働きがあります。というのは、いずれにしろ、私たちは、頭の中で常にほとんど決まった問いかけをしているからです。
「このままでいいんだろうか?」
「大丈夫だろうか?」
この「問い」は無意識に発せられる「問い」なので、別の「問い」を積極的に起こさない限り、放っておくと、頭の中はすぐにこれでいっぱいになってしまいます。
だから、これらの「問い」の居場所がなくなるよう、常に、未来に向けた「問い」を共有し続ける必要があるのです。
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