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部下から見れば上司は一人

部下から見れば上司は一人 | Hello, Coaching!
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私は高血圧の治療のため毎朝薬を飲んでいます。1ヶ月ほど前の診察で、その薬を替えることになりました。

ところが、それ以来調子が悪いような気がする。夜に鼻がつまって眠りが浅いのです。私は3ヵ月後の次の診察を待たず、相談に行くことにしたのですが、その予約が一杯で取れません。仕方なく、予約無しで診察を受けることにしました。受付の人から、時間がかかるからと念を押され、私も覚悟して丸1日の休みをとりました。

11時に受付。

予約の患者さん優先なので、空いたときに診察してもらうことになります。待合室にはいつものとおり大勢の患者さんが座っている。10分おきぐらいでしょうか、ひっきりなしに診察室に入っていきます。

待っている間に、いろいろなことを考えていました。

絶対に新しい薬が合わないのだと思う。先生は副作用についてよく説明してくれるだろう。薬を元に戻すか、違う薬にすれば良くなるに違いない。これで夜もまた眠れるようになって、元の調子に戻れる。ひとりでいろいろと思いをめぐらせていました。

待つこと約2時間。やっと名前が呼ばれました。

「どうされたんですか?」
「先月薬を替えてもらってから調子が悪いんです。夜に鼻がつまって、よく眠れないんです」
「え、この薬でそんなことが起こるはずありません。朝の血圧はどうなんですか?」
「標準値に下がっています」
「だったらもう少し様子を見てください」

先生は、この忙しいのに何をしに来たんだと言わんばかりです。一瞬のうちに、いろいろな思いが頭の中をかけめぐりました。

先生も疲れているのはよくわかるけど、そんなつっけんどんに言わなくてもいいじゃないですか。わざわざ仕事を休んで来たんだから、少しは話を聞いてください。インターネットで調べたら副作用に鼻づまりと書いてあったんです。この人に何を言っても無駄だ。関係を悪くするくらいなら黙っていよう。ひどい先生だ。薬の副作用以外に思い当たることはないのだから、ちゃんと調べて欲しい。病院を変えてみようか......


上司と部下の関係と、医師と患者の関係には、多くの共通点があります。

上司も医師も指導的な立場にある。
患者から見れば医師は一人。医師から見れば患者はたくさんいる。
部下から見れば上司は一人。上司から見れば部下はたくさんいる。

面談の場面は、外来の場面ととてもよく似ています。

数少ない面談の機会に、部下はいろいろと話を聞いてもらいたいと思っている。あれも話したいこれも話したい。提案したいこともある。上司と話すことでもっと効率を上げ、会社に貢献したいと思っている。いろいろと夢をふくらませているのです。

ところが、上司にとってみれば部下は大勢いるわけですし、しかも分刻みの、立て続けの面談で疲れている。部下から業務改善についての提案があったとしても、短い時間の中で十分に話を聞くことができない。場合によっては、一言で却下してしまうこともあるかもしれません。

上司と部下の間でも、私が病院で体験したようなことが起こっているのだと思います。

さて、私は病院を替えることにしました。別の病院に行って、これまでの事情を説明しました。その医師は、幸い私の話をよく聞いてくれました。薬の副作用の可能性についてはよくわからないのですが、いろいろな処方を試してみようということになりました。

医師を替えることは簡単ですが、上司を替えることは難しい。

そういう私も、今日から全社員に対する分刻みのインタビューが始まります。

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