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言行不一致

言行不一致 | Hello, Coaching!
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リーダーに、「リーダーとして何が大事だと思いますか」と聞くと、「やはり言行一致させることでしょう。言っていることとやっていることが違うと、部下はついてこないよね」。

そんな風におっしゃる方が多くいらっしゃいます。

一方、部下の側に、「リーダーには何を求めますか」と聞くと、これまた、「言行一致ですね。じゃないと信用できない」。

もちろん、それだけがリーダーの資質ではないですが、信頼されるためには、信頼するためには、言行一致はやはりとても大事であるようです。

さて、実際多くのリーダーは言行一致しているか? 敢えて大胆に言い切ります。

していません!

あまりに大胆だったでしょうか。何かを裏でやっているとか、社員にうそをついているとか、そういうことをここで言いたいわけではありません。

多くのリーダーは自分でも気がつかないうちに、言行不一致を引き起こしていることがあります。


先日、ある企業の会議をオブザーブさせていただく機会がありました。部長さんが課長さんに、「いいか、もう指示一辺倒では、部下はついてこないんだよ。もっと部下に考えさせなきゃだめだ。お前らちゃんと部下に考えさせろよ」と"指示"していました(笑)。

部下に考えさせるようなコミュニケーションをとって欲しいならば、まず、部長自らが、課長に考えさせるようなアプローチを取るのが有効だと思うのです。モデルになりますからね。それはやらずに、「考えさせろ」と指示してしまう。これは「言行不一致」ですね。別名、「遂行矛盾」ともいいます。

例としては、
・「なんでもっと部下のことをほめないんだ!」と叱ってしまう
・「部下には厳しいこともしっかり伝えないといけないぞ」と優しく諭してしまう
・「お客様を感動させるような接客をしろ!」と口うるさく言って、部下を辟易させてしまう(部下は決して感動しない)

悪気は無いんですね。部下に、なんとしてでもそうして欲しいという思いがあるから、ついやってしまう。しかし自分は、伝えている内容と矛盾したことを実践しているわけです。

では、そういう方に対してコーチはどうするか?

「矛盾していますよ、言行不一致ですよ」とまずは伝えます。たいていの方は「しまった!」というような顔をされます。

オブザーブさせていただいた部長さんも、「そうかあ。それは気づかなかった。言われてみればそうだよね......」

わりとすっとこちらの視点を受け入れてくれました。

次に、「部下にそれを実践してほしいのであれば、まずは自分がその体現者になった方がはやくないですか」と提案します。親が子どもにすることは子どもが孫にする。これもすっと入ります。わかりやすいロジックですから。

そして、最後に聞きます。
「こういったわかりやすいロジックなのに、今までどうしてできなかったんでしょう?」
「人には言っておいて自分では実践してこなかったのは、なぜだと思いますか?」

これはちょっと突っ込んだアプローチですね。が、これがないと、「言行不一致」は改善されません。

「自分の言うことを聞かせたいんだと思う」
「自分が全体をコントロールしていたいんだと思う」

そういう「言行不一致」を引き起こしてきた、欲求の部分が引き出せたら、ほとんど完了です。この欲求をしっかり認識していただかないと、また同じ行動を繰り返してしまいますから。

最後に、「では戻りますが、最優先したいのは何でしたか?」と再確認します。

「言うことを聞かせることですか? それとも考えてもらうことですか?」

たいていは明快に答えてくださいます。

「考えてもらうことです」

コミットメントを確認するわけです。

いつもいつもこんなに「きれいに」いくわけではありませんが、成功率80%ぐらいでしょうか。

上司に対して行うのは難しいかもしれませんが、もし「言行不一致」を起こしている部下の管理職や、グループリーダーの方などいたらぜひお試しください。

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