Coach's VIEW

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視線

時世を反映してでしょうか、エグゼクティブコーチング(※欄外参照)の中で、
プレゼンテーションについて扱って欲しいと、
最近2人のクライアントの方から言われました。

危機を乗り越えるために全員一丸となる必要がある、
それを全社員に向けて伝えたい。
ついては、より伝わるようにコーチングをしてもらえないだろうか。

2人とも全く同じ依頼内容でした。

どのようなプレゼンテーションが
話し手の真剣さを、本気度をより伝えるのか。

もちろん本気でない人が本気をつくろってもそれは聴衆に見抜かれます。
ただ、本気であっても、それを伝える媒体としての表情や身振り手振り、
声が正しくその役割を果たしていなければ、
本気度を10分、15分で伝えることは難しいでしょう。

本来、その人が本気かどうかを見極めるには、
その人がどんな「行動」を取っているかを一定の期間見ていく必要があるはずです。

ただ、社員はその短い時間の中で、社長がどれくらい本気かを見極めようとし、
社長はそれに応えようとする。

だから、どうすれば本気が本気として伝わるかを考えることは大事になります。


このコーチングをするために、YouTubeで、何人かのスピーチを見てみました。

見たのは、キング牧師、ジョン・F・ケネディ第35代アメリカ合衆国大統領、
オバマ次期大統領、そして福田前首相、麻生首相。

前者3人と後者2人のスピーチは様々な面で違いがありますが、
決定的な違いはその視線にあるような気がします。

前者3人の視線は、ごくシンプルに言えば、真っ直ぐです。
その眼差しは未来を見て、見ている未来を真っ直ぐに聴衆に届けている。
きょろきょろしていない。
軸がある、ぶれていない、真剣である、
可能性を信じている、変革を起こそうとしている、
そういった言葉を真っ直ぐの目線から感じ取ることができます。

そして、何よりも彼らが本気であるということが強力に伝わってきます。

後者2人の視線は、一言で言えばあちらこちらに動く印象です。
一箇所に長くとどまらない。
不安定、不安、決めのなさ、揺れ、弱さ、
そんな言葉がどうしても思い浮かんでしまいます。

本気さが残念ながら視線からは伝わってこない。

その政策の良し悪しについてあれこれと言う知見もありませんし、
立場にもありませんが、
小泉元首相は、報道陣のインタビューに答えるときも、
演説をするときも、驚くほど視線は真っ直ぐでした。

そんな所からも国民は彼が打ち出す方向性がぶれない、
本気であるということを感じ取っていたと思います。


さて、前出のクライアントですが、その内の一人については、
社員に向けて話をしているところを見せていただきました。

彼の視線は100人の社員を前にして、下へ上へ、右へ左へ、頻繁に動きます。
彼の真っ直ぐな想いは残念ながら視線で掻き消されてしまっていました。

その後の面談で、視線が不安定であったというフィードバックをすると同時に、
視線について考えていただきました。

「なんで視線があちらこちらに動くんだと思いますか?」

「癖だと思うんだけどね」

「もちろん癖というのもあると思うんですが、
2縲怩R人で話しているときはあんなにばたばた動きませんよね。
なぜ大人数になるとあんなにせわしない視線になるんだと思いますか?」

「なんか誰に話をしているのかわからなくなっちゃうんだろうね」

「100人近く目の前にいるときには誰に話そうとしていますか?」

「誰に? そう考えると誰も意識していないね。漠然とみんなに話そうとしている」

「現実には『みんな』なんていう人はいないですよね。
どこに向けてというのがあいまいになると、視線がぐらつくのかもしれません。
100人でなくてもある程度人数が増えるとそうなるんでしょうね」

「誰に、というのを決めるということか」

「その場にいる誰に伝えるかというのを意識して話す。
明快な対象に向かって話しているときは視線が真っ直ぐ伸びますから。
その視線を見て、周りは話している方の真剣さを感じ取る。
試してみる価値はあると思います」

「そうか、試してみるよ」

リーダーの力が問われる昨今。
まずひとつできることは、視線を真っ直ぐに伸ばすことかもしれません。
話す対象を定めることは、そのためのひとつのサポートになります。

※ エグゼクティブコーチング:
  経営者、経営幹部を対象として、
  組織におけるリーダーシップの向上を目的に行うコーチング。
コーチ・エィのエグゼクティブコーチングについては こちら をご覧ください。

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