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首位奪還
コピーしました コピーに失敗しましたすでにご存知の方も多いと思いますが、先日報道されたように、キリンビール株式会社様(以下、キリンビール)が9年ぶりにビール系飲料のトップシェアを奪還しました。
この結果は、原料調達‐商品開発‐製造‐物流‐営業‐店頭活動というバリューチェーン、そしてバックオフィスの社員の方たちの並々ならぬ努力の結果なのだと思います。
キリンビールの首位奪還に向けたさまざまな取り組みのひとつに、「コーチング」があります。
「社内コーチを300人育成する」
この目標に向け、導入のきっかけとなったエピソードを、キリンビールの担当者の方からお聞きしました。
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数ヶ月前に、ある営業担当者から、都内の某大学に清涼飲料自販機の設置交渉をしているということを聞かされていたんです。その活動事例を社内報で紹介しようと思い、そろそろ設置が完了しているころを見計らってその担当に状況を聞いてみると、彼はこう答えました。
「実は、うまく進んでいないんです......」
その話を聞いたとき、すでにコーチ資格を取得していたスタッフとふたりで、「こういうときに、社内でお互いに『どうすれば前に進むと思いますか?』なんて会話ができたらいいんだろうね」と話をしている中で、「ハッ」と気づきました。
「仕事をしていればこうした場面は社内の至るところにある。もし社員同士が日常的にコーチし合うことができたら、会社の生産性は著しくアップするにちがいない。そうだ、社内コーチをつくろう! それもたくさん!」
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そして、昨年から3年間で300名(社員の10%)の社内コーチを育成するというプロジェクトが始まりました。初年度は、88名が試験に合格。早速社内外で「認定コーチ」として活躍されています。
これまで多くの企業がコーチングの研修を実施していますが、そのほとんどは、1~2日間の集合研修。コーチングの良さを理解するには良いのですが、実際に変化、成果を上げるためには十分な取り組みとはいえません。
コーチングを導入して、実際に成果を上げるためにはいくつかのポイントがあります。
・継続...毎週トレーニングを行う
・長期...最短4、5ヶ月できれば6ヶ月以上のトレーニングを行う
・集中...5~20名程度の小グループでトレーニングを行う
・実践...学んだコーチングスキルを社内で実践する
・体験...コーチを受ける
キリンビールでは全社員の了解の下、これらの要素をすべて満たした形でトレーニングを実施しました。
トレーニング前後の第一期生のコミュニケーション能力の変化をリサーチ(※)したところ、
「話を聞く能力」
「問いかける能力」
「褒める・認める能力」
など第一期生自身のコミュニケーション能力が上がっているだけでなく、その部下の方たちの、
「自立積極性」
「組織への貢献実感」
も上昇していることがわかっています。
すでに、第二期生として新たな100名のトレーニングが始まっています。今年もビール系飲料のシェア争いから目が離せません。
※コーチング研究所(CRI) のリサーチによる
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