Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
「リーダーシップ」の正体
コピーしました コピーに失敗しました「あなたにとって、『リーダーシップ』とは何ですか?」
コーチングのトレーニングで進行役をしているとき、この質問を参加者であるビジネスパーソンやエクゼクティブの方々に投げかけると、多くの方は、
「強いこと」
「自分の信念を曲げないこと」
「ぐいぐい引っ張っていくこと」
と典型的なリーダーのイメージや資質を答えてくださいます。そこから想像されるのは、ジャック・ウェルチや、ビル・ゲイツなど、カリスマリーダーと呼ばれる人たちのリーダーシップ像です。
リーダーシップは特別なもので、特殊な人にのみ備わっているもの、という印象を受けます。
ところが、「あなたは、どういう場面で、リーダーシップを発揮することが求められますか?」とお聞きすると、答えは次のように変化します。
「会議で出席者の異なる意見をまとめなければならないとき」
「お客様に商品についての知識を、正確にお伝えしなければならないとき」
「部下の成長に合わせて、その人に能力や強みを発揮させたり、時には本人が困難だと思うようなことをやらせたりするとき」
こうなると、ぐんとリアリティが増してきます。そして、リーダーシップを発揮するということが日常的に起こるものであるということの実感が高まります。
次の問いかけはこうです。
「その場面で、どのようなスキルを発揮する必要がありますか?」
すると、
「会議の意見をまとめなければならない場合は、お互いの言い分をきちんと聞き分けるスキル」
「お客様に商品のことを伝える場合は、お客様のニーズをきちんと質問して聞き出し、それにマッチした内容を伝えるスキル」
「部下の育成で能力を発揮したい場合は、部下の日常の様子をしっかりと見て把握するスキル」
「常に声をかけるスキル」
とさらに具体的になります。
まさにカスタムメイドのリーダーシップが存在し、それを発揮するためのスキル開発は、日常的に取り組むことができるものとなります。
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以前ご紹介した「リーダーシップアセスメント」で、私自身のリーダーシップを測定した結果、今リーダーシップ能力を開発していく上で、特に取り組む必要がある領域は「仕事を任せること」。権限委譲と部下育成の両方にかかわるスキルです。
トレーニング参加者のリーダーシップ開発には携わっているものの、自分事になると話は別。数年来の課題であり、ひとりではどうにも先に進まないので、部下育成に定評のあるAさんにコーチを依頼することにしました。
先日そのAさんと話す機会を設け、自らリーダーシップを発揮し、相手にリーダーシップを発揮させるため、日頃、何に意識を向けているかについて聞いてみました。
「僕は、その人ができなかったことをできるようにさせることが好きなんですよ。たとえば、半年や1年前を振り返り、『あの時はこれができなかったけど、今はできるようになったね』ということを共有するとき、一番やりがいがある。そのためには、育成のための時間数を決めて、年間スケジュールに入れているんです」
部下育成といえば、「自ら見せて、後はその人が自分の姿を見てフォローする」という方法ばかりとっていた私には、まさに目からうろこ。
その日から、「この人は今何ができて、これから何ができるようになるといいんだろうか」と常に意識するようになりました。
今では、この課題に取り組むことが、自身のリーダーシップの発揮につながっているのだと、はっきり実感することができます。
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リーダーシップという言葉の裏には、発揮する場面、具体的なスキル、発揮する人の物の考え方や背景など、さまざまな要素が含まれています。
解釈は人の数だけありますから、そのことについて一人ひとりから話を聞くことは、実に興味深いものです。
「あなたはどんな場面でリーダーシップを発揮し、そのためにはどんな力をつける必要があるでしょうか?」
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