Coach's VIEW

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直接感じる

仕事柄、経営者とお話をする機会がよくあります。
 
「経営で何が一番大事ですか?」とお伺いすると、

「最後は直感だね」

そんな風におっしゃる方が多くいらっしゃいます。
 
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改めて考えてみたいのですが、直感とは一体何なのでしょうか?

先日、本屋さんで手にした
『脳は直感している』(佐々木正悟著、祥伝社新書)という本には、
「本人が自覚できない情報を脳が直接感じ取っている(それが直感である)」
と書いてありました。

直感というのは、脳が「『直接』感じている」ということ。
当たり前といえば当たり前ですが、
今まで直感という漢字を、
「直接」と「感じる」に分けて捉えていなかったので、
とても新鮮でした。

「私」が、つまり「意識」が認識する前に、「脳」が直接感じている。

脳はそれを言葉ではなく、非言語的なメッセージを使って「私」に送る。

「お尻がむずむずする」「胸のあたりが軽く圧迫される感じがする」
「おでこがすっとするような感じがする」「特定のイメージが目の前に展開する」......。

これらは実際に「私」に向けて送られてくるメッセージです。

それをキャッチして、それをベースにして行動を起こしていく。
これが直感に従うということになります。

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将棋の羽生名人は、対局における雌雄を決する究極の場面で、
なぜだかわからないけれども、
「そこ」に打つのが正しいように感じることがあるそうです。

そして、多くの場合その打ち手は「正しく」、
戦局を勝利に導く大きな一手になったりする。
「頭」を使って論理で割り出すわけではないんですね。

おそらく経営者も同じなのでしょう。

「ここに経営資源を集中した方が良さそうだ」
「ここで撤退した方がいいはずだ」

ありとあらゆる情報を検討して、
それでも論理では答えを割り出すことができず、
でも最後になんとなくそう感じる。

スーパーコンピューター何台分にも相当する演算能力を兼ね備えた脳が
何かを感じ取っていて、
何らかのメッセージを、イメージや他の非言語的メッセージによって「私」に送る。
このメッセージに敏感になり、信頼し、
遅れることなく行動を起こすことが大事だと、多くの経営者は言うわけです。


ただ、最近思うのは、「モノ」「カネ」に関しては、直感に敏感に反応するのに、
「ヒト」、つまり社員に対しては、
この直感をあまり活かしていない経営者が
少なからずいらっしゃるのではないかということです。

会社で働いている人を見て、聞いて、五感を使って情報を脳に送る。
その情報を受けて脳が直接感じたことを、きちんとメッセージとして受容し、
それをもとに行動を起こしている人が少ないのではないかと。

だから、突然幹部が辞めたり、社員のメンタル問題が起こったり、
気がつくと風土が脆弱になっていたりする。
 
事業的な直感は働いていても、
そこに一気に向かうだけの「人員体制」が取れなくなってしまう。
 
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うまくいっている企業の経営者は、どうも会社をふらふらしているようです。
自分の部屋に閉じこもったりはしていない。

ふらふらして、五感をフルに使って、ヒトを脳に直接感じさせる。
違和感を覚えたら、決して先延ばしにせずに、それに対処するための行動を起こす。

「どうした?」
「何かあったか?」
「最近この部署の雰囲気どうだ?」
 
声をかけ、直感を裏付ける情報を集める。
声をかけるのも、そこにきちんと狙いがあるわけです。
そして、浮かび上がった課題への対応を明日に持ち越さない。


知人である経営者は、先日、私にこう言いました。
 
「人に対するアンテナを磨き、アンテナが受信したものを立ち止まって見る余裕を持ち、
 そしてそれを信頼すること。マネジメントではこれが一番大事だと思うんだよね」

コーチとして、経営者として、
「ヒトに対する直感を見逃さないようにしなければ」と襟を正す今日この頃です。

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