Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
自分と他者との認識のズレが生み出す、行動のエネルギー
コピーしました コピーに失敗しました自分が自分自身に持っているイメージと、本当の姿とのズレを認識したとき、居ても立ってもいられない感覚に見舞われた経験はありませんか?
私の場合、街中で自分の姿がショーウィンドーに映り込み、思いもよらない姿をそこに見て、すぐその足でスポーツクラブに向かったことがありますし、録音された自分の声を聞いたときに、あまりの早口に驚き、その後話すスピードを半分にしたこともあります。
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今、コーチングマネジメントを学ぶプログラム「コーチ・トレーニング・プログラム(以下CTP、現在のコーチ・エィ アカデミア)」で、毎週15人から20人の受講者と電話会議によるクラスを行っています。
受講者の役職やポジションは、チームのマネージャーから経営層、経営者に至るまで幅広く、全体の9割は、組織に属するリーダーの方々です。
私が現在担当しているのは、「コーチング型リーダーシップ」のクラス。1ヶ月間で、自身のリーダーシップのあり方やリーダーシップスタイルを見出だすことが目的のクラスです。
そのクラスの中で、受講者の方が必ず熱くなる瞬間があります。その瞬間は、「あなたのコミュニケーションについて、周りの人からフィードバックを受けてきてください」という課題を出した翌週にやってきます。
フィードバックを受けること自体はそれほど難しいことではありません。教材にそれを簡単に聞くことができるアセスメントが載っているので、受講者は、それを部下や上司に渡してチェックしてもらえばよいのです。
□ 質問するときに相手を萎縮・警戒させないように気をつけている
□ 相手をやる気にさせる提案や要望をしている
□ 話しやすい・相談しやすい雰囲気である
など、リーダーが持つコミュニケーションスタイルを21個のチェックリストにしたもので、受講者はすぐに、部下や周りいるステークホルダーに渡してフィードバックを受けてきます。そして、次の週、その瞬間はやってきます。
私が、「課題に取り組んでみてどうでしたか?」と聞くと、第一声を発する人は100%、次のように言います。
「自分で思っていたのと、周りが思っていることに差がありました」と。
特に、自分でやっていると思っているのに、周りからは「やっていない」とフィードバックされた方は、とても興奮した様子で話されます。
ある受講者の方の場合、自分では「話しやすい・相談しやすい雰囲気である」と思っていたのに、周りの誰もその項目にチェックを付けなかったそうです。これでは、居ても立ってもいられない気持ちも起こるでしょう。私に言わせれば、冒頭のショーウィンドーに映った自分を見たときに体験する感覚です。
このようにフィードバックには、時に多少のショックを伴うことがあります。しかし、興味深いのはここから。多くの方がフィードバックを受けた直後から、新しい行動を起こしているというのです。
この方の場合、フィードバックを受けてからというもの、「話しかけられたら、相手と視線を合わせて話すようにしている」と報告してくださいました。
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「人はどうしたら行動を起こすか」というのは、人材を育成する立場にいる方にとって大きな課題ですが、自分が持っている認識と、他者が持っている認識との「ズレ」に気づくことは、行動を起こす大きなきっかけになります。
先ほどのショーウィンドーのケースは、自分が自分自身に持っている認識のズレですが、これもフィードバックによって、すぐに行動が起こる一例です。
前回のCoach's Viewで書いたツィッターをやっているときも同様です。いろいろな方のツィートを読む中で、ドキッとしたり、ワクワクしたりするのは、自分と違う視点を得るからです。
私自身、こうした記事を読むと、「新しいことにチャレンジしてみよう」という気持ちが沸々と湧き上がってきます。これも一種の「ズレ」による行動なのだと思います。
「どれだけ自分と他者との認識のズレに気づくきっかけや環境を持っているか」
これこそが、新しい行動を起こすカギになるのではないでしょうか。
「今まで、自分と他者との認識のズレに気づいたことはありますか?」
「それをきっかけに新しい行動を起こしたことはありますか?」
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