Coach's VIEW

Coach's VIEW は、最新のコーチング情報やリサーチ結果、海外文献の紹介を通じて、組織改革や人材開発、リーダー開発グローバルビジネスを加速させていくヒントを提供するコラムです。


「真のグローバルリーダー」の条件とは

先月末、ニューヨークで講演をする機会をいただきました。
集まってくださったのは日本企業に勤める駐在員の方々。
テーマは、「グローバルリーダーに求められること」でした。

この講演の中で、私が一番強調したかったのは、
「多様性を受け入れる」ということです。

至極当たり前のことではあるのですが、多様性を受け入れることができなければ、やはりグローバルリーダーは務まらないと思うからです。
この多様性に対するスタンスが、
グローバルにリーダーとして活躍できるか否かを決めると言っても過言ではないでしょう。
 
 
では、どうすれば多様性を受け入れることができるでしょうか。
そのために一番大事なことは何なのでしょうか。

テキサス在住の私のコーチにこの質問をぶつけてみました。
彼女は間髪入れずに、
 
「Curiosity is the most important.(好奇心が最も大事だと思う)」
 
と答えてくれました。

「なんでこの人はこういう行動をとるんだ!?」
と嘆くのではなく、
「この人がこういう行動を取るのはなぜなんだろう?」と
好奇心をいだく。

前者の態度は、至るところ、説得か妥協かに通じます。
「○○なんだからこうしてよ!」か「しょうがない...」か。
これでは、相手から自発的な協力を得ることはなかなかできません。

一方後者は、相手をより深く知ることにつながります。
相手を知れば相手を動かす糸口がつかめます。
 
 
よく駐在員赴任前研修などで、
「赴任する国の国民性を知ろう」というような試みがなされます。
もちろんそれも大事なことではありますが、
案外、諸刃の剣だったりすることもあります。

「アメリカ人とは、中国人とは、こういう人たちなのか」

そういった概念が強くできてしまうと、かえって目の前の人が見えなくなる。
「アメリカ人」「中国人」という人がいるわけではありません。
目の前に立ち現れるのは常に唯一無二の個人です。

「集合概念」が強くなればなるほど、「個」に対する好奇心は薄くなります。


何も異国の地だけで起こることではありません。
日本にいても、抱きがちなマインドセットです。
「20代の若者」、「女性」、「団塊の世代」、「日本で働く外国人」......。

必要なのは、カテゴリーとしての特徴は情報として把握しつつも、
向かい合ったらそれを一旦脇に置き、目の前の人に好奇心を「起動」させること。

一歩踏み出して、近づいて、内側の好奇心に火をつけ、

「この人はなんでそうするのだろう?」
「どんなアイディアを持っているのだろう?」
 
と自分の中に問いを立ち上げる。
 
グローバルリーダーであるならば、あるいはそれを目指すのであれば、
決して失ってはならない大切なスタンスだと思います。


ところが、実際には、頭でこのことを理解していても、
多様性を受け入れようと一人ひとりに好奇心を抱くのは
そう簡単なことではありません。

もしみんなが好奇心を抱くことができたら、
世界は一気に平和な場所になるでしょう。
でも現実はそうではありません。

古今東西、多くの問題は、お互いの間に横たわる「違い」
(肌の色、宗教、政治、世代、国、性別、階層など、つまりは多様性)であり、
人類はそれを未だに乗り越えられていないわけです。

多様性は興味の対象ではなく、多くの場合、恐怖の対象でした。
(そのように意識的に認識はしなかったかもしれませんが、
 おそらく潜在的にはそうだったに違いありません)

だから多様性を許すのではなく、力で制圧しようとする。
歴史の言葉を借りれば、それが「帝国主義」といわれるものです。

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実は、「グローバル企業」と一口に言っても大きく2種類に分かれます。

一つは、言葉は悪いかもしれませんが、帝国主義的にグローバル化していく企業。
自分達のやり方を徹底的に世界に推し進めようとするわけですね。
多様性を最小限しか認めず、力で押さえ込んでいく。

もう一つは、徹底的に現地化を図る企業です。
もちろん、企業戦略も企業文化も共有しますが、
それに肉付けをする形で現地の意見を取り込んでいく。
時には現地で引き上げた意見をヘッドクォーターが吸収し、
再びグローバルに還元する。
 
「中心」の考えを常に「末端」に浸透させるのではなく、
それぞれの「部分」に自律性を与え、全体をネットワークとして機能させる。


あなたは、どちらが「真のグローバル企業」だと思いますか?

私は、後者こそが真のグローバル企業であり、
「多様性を受け入れている」と思うのです
(もちろん業種によって、企業の成長段階によって、
 その瞬間取っている戦略によって、最善の組織形態は変わると
 思いますが、理想的には後者ではないかと考えます)。

そして、その実現は、一人ひとりのリーダーが、
一人ひとりの部下に、フォロワーに好奇心を持つことから始まるのではないでしょうか。

「好奇心を持って相手に意見なんか求めたら大変だ。
 それこそ何が出てくるかわからないし、混乱を招く」

そんな風に思われる方もいるかもしれません。
この不安に対する答えは、先だって私があるグローバル企業(※)のディレクターから伺った次の言葉が参考になるかもしれません
(※ この企業は、世界100ヶ国以上にビジネスを展開している、まさにグローバル企業です)。

「プリンシプル(原理原則)は大切にしないといけないと思います。
 とことん話してそれでも意見が割れたら、一度プリンシプルに戻ってみる。
 『お客様がボス』であったり、『良きモノづくり』であったり、
 プリンシプルは企業によって様々ですが、
 この部分は決して違いを認めない大原則として共有しておく。

 そして、意見が合わないときには、
 そのプリンシプルに照らしたらどうだろうかと、
 改めて一緒に考えてみる。世界中の人と一緒に仕事をするんです。
 様々な意見があって当然です。
 それを押さえ込むことは企業の発展にはつながらないと、
 経験から強く思います」


プリンシプルを共有した上で、個に好奇心を持ち、
多様性を取り込み、時にそれを全体に還元していく。
それがグローバル企業を目指す組織に、グローバルリーダーを目指す個人に、求められている心得ではないかと思うのです。

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弊社コーチAも現在グローバル展開の緒に就いたところです。

2月にニューヨークにオフィスを立ち上げ、
この7月には上海、シンガポールで事業を開始します。
 
私達もまた真のグローバル企業と言っていただけるよう、各拠点の声に真摯に耳を傾け、強いネットワークを構築していきたいと思っています。

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