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コーチングを支える11の能力

コーチングを支える11の能力 | Hello, Coaching!
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国際コーチング連盟は、2012年に「GLOBAL COACHING STUDY (グローバル・コーチング調査)」(※1)を発表しました。

コーチングがグローバル規模で発展するに伴い、どのようなニーズがあるのかを把握することを目的としたもので、117カ国、12,133人のプロフェッショナルコーチが調査に協力しています。

この調査では、ワールド・バンク・インディケーターズによる地域別コーチ数のリサーチ結果が紹介されており、コーチの多い順に以下のような結果となっています。

ヨーロッパ  45% (うち 西ヨーロッパ38%)
アメリカ    33%
アジア     7%
その他    15%

国際コーチング連盟発祥の地であるアメリカを抜き、ヨーロッパ、特に西ヨーロッパにおけるコーチングの普及は目覚ましいものがあります。

コーチングは、人材育成、特に次世代リーダーといわれる人を育成する手法としてその優位性が証明されつつありますが、それを可能とするためには、コーチングに関するノウハウ、スキル、知識が必要であり、これらの習得には体系立った訓練が必要です。

そこで、国際コーチング連盟では、以下の項目をコーチングの基礎能力ともいえる「コア・コンピテンシー」としています(※2)。

・聞く能力
・質問する能力
・信頼を築く能力
・コミュニケーション能力
・気づきを促す能力
・行動をデザインする能力
・学習を促す能力
・計画する能力
・主体性を促す能力

(「コア・コンピテンシー」には、上記の能力の他に、
・コーチの倫理規定とプロとしての基準を満たしていること
・コーチングに関する同意を取り交わす
という契約や 職務に関する2項目があります)

では、それぞれの能力の差は、実際のコーチングの会話の中でどれほどの違いを生むのでしょうか。

最近私が見聞きした2人のコーチの例を基に「質問する能力」に見られる違いをご紹介しましょう。

ひとりは、まだコーチとしての経験が浅い新米コーチ。もうひとりは、上記に挙げた能力が高い、ベテランのトップコーチです。

経験の浅いコーチが繰り出す質問には、次のようなものが多くありました。

・今、あなたの課題になっていることは何ですか
・うまくいっていること、いっていないことを教えていただけますか
・今の問題を解決できると思いますか
・今すぐに始められることは何ですか
・社内のコミュニケーションを良くしたいと思っているのですか

など、時と場合によっては機能する質問もありますが、どちらかというと、その場で考えてすぐに答えられる質問が多いのが特徴です。しかし、これではクライアントの視点はあまり動かず、その場限りの思考で終わってしまいます。

一方で、スキルレベルの高いコーチはどのような質問を繰り出すのでしょうか。

弊社の中でも、とりわけ大手企業の経営者層をクライアントに多くもつ経験豊富なコーチに、セッションの中でどのような質問をしているのかを聞いてみました。

・あなたはどのような組織を創りたいのですか
・会社は、どのような風土ですか
・会社の理念は社員に浸透していますか
・社員のコミュニケーションレベルは高いほうですか、低いほうですか
・社内のアカウンタビリティはどのような状態ですか
・あなたの会社は、お客様からはどう見られていると思いますか

など、質問を受けた本人についてだけではなく、相手がおかれている背景や会社で関わっている人々、顧客などのステークホルダーなど、さまざまな視点に立って質問を繰り出していることが分かります。

つまり、経験の浅いコーチの場合、コーチングを受ける側の意識が比較的自分の内側だけにとどまる傾向となるのに対し、経験豊富なコーチの質問に向き合うと、
「社員はどう思っているのだろうか」
「自分はどう相手に見えているのだろうか」
「うちの会社は、どんな会社だと捉えられているのだろうか」
と、クライアントはさまざまな視点から自分の置かれている状況を見ることとなり、コーチングが終わった後もその「問い」が頭の中に残る状態になるのです。

そして、その問いはクライアントが日常の中で「新たな行動を起こす」原動力となります。

前述の国際コーチング連盟では、コーチの資格試験を実施しており、次のようにレベルを3つに分けています。

ACC(初級):「スキルを使うことができる」
PCC (中級):「相手によって個別対応することができる」
MCC(上級):「問いが相手の中に残る」

レベルによって、発揮される能力と相手に与えるインパクトが違うことがわかります。

さて、冒頭でご紹介した、グローバル・コーチング調査では、コーチングの今後の可能性についても触れられており、主なポイントとして以下の3点が挙げられています。

・コーチングのベネフィットについての意識が向上する
・投資対効果が数値化される
・一般的なコーチングに対する認知度が上がる

さらに、人材開発の手法としてコーチングのグローバルニーズがますます高まっている今、国際コーチング連盟では、「コア・コンピテンシー」の強化にむけて資格制度の見直しなども検討しているようです。

プロのコーチのみならず、人を育成する立場にある人は「コーチとしての基礎能力」を一層磨いていく必要があるといえるでしょう。

ぜひ、定期的に自分の能力をチェックしてみてください。


【参考資料】

※1 2012 ICF Global Coaching Study

※2 コーチのコアコンピテンシー
Coaching core competecies International coach federation

日本語訳:日本コーチ協会

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