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組織の変革エンジン ~模倣の組織的連鎖~

組織の変革エンジン ~模倣の組織的連鎖~ | Hello, Coaching!
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組織の中で業務に関する知識や経験が豊富で、最も優秀なひとりとされるエグゼクティブに、さらになぜコーチングが必要となるのか?

そうした議論に対しては、多くの場合、「コミュニケーション力や関係能力の向上に伴う影響力の変化」がコーチング後の期待値として示されます。

ここで、以前ご紹介した米国調査機関による「エグゼクティブが力を発揮できない理由」に関するリサーチ結果をもう一度見てみましょう(※1)。


「エグゼクティブが力を発揮できない理由」

●社外の人材からエグゼクティブを採用した場合

・インターパーソナル/リーダーシップスキル(協調性、影響力など)が欠如している                     34%
・組織内に体系的/構造的な問題がある            18%
・組織とエグゼクティブとの間で目標に対する合意がとれない  15%
・エグゼクティブ開発チームからのサポートが欠如している   10%
・組織のエグゼクティブ選任が適切でない            7%
・技術的スキル/コンピテンシーが欠如している         7%
・パーソナルスキル(セルフマネジメント、集中力、意欲など)が欠如している                       4%

●社内の人材からエグゼクティブを登用した場合

・インターパーソナル/リーダーシップスキル (協調性、影響力など)が欠如している                  33%
・組織内に体系的/構造的な問題がある            16%
・組織とエグゼクティブとの間で目標に対する合意がとれない  10%
・エグゼクティブ開発チームからのサポートが欠如している    9%
・組織のエグゼクティブ選任が適切でない            8%
・技術的スキル/コンピテンシーが欠如している         8%
・パーソナルスキル(セルフマネジメント、集中力、意欲など)
が欠如している                      8%


インターパーソナルスキル、リーダーシップスキルの欠如が、上位にランクされています。

しかし、確固たる成功体験と自信を持ったエグゼクティブの「関係能力」や「対話能力」、そして「相手への影響力」は、どうしたら変化させることができるのでしょうか?

また、エグゼクティブ自身の変化は、組織にどのように影響を与え、そして、組織全体のどのような変化につながっていくのでしょうか?

大手通信会社の営業部門のトップを務めるA氏。高業績を上げ続け、周囲からの評価も高かったA氏は、自身のやり方に強い自信を持っていました。

A氏の周囲は、彼の功積やリーダーシップを認める一方で、
「独裁的で、全てを自分ひとりで決めようとする」
「方向性は明確だが、持論が強すぎて周りの人が本音を言えない」
「A氏が細かく入り込み過ぎて、人が育たない」
という指摘をしていました。

A氏自身も、コーチングの開始当時は、「今までの自分のやり方は変えられるのか? そもそも、変える必要があるのか?」と口にしていました。

最初こそ、不安や懸念、時に変化に抵抗を示していたA氏ですが、コーチングが進むにつれ、「どことなく自分自身が変化してきているように感じる」という感想を話し始めるようになりました。

実際に、コーチングの中間時点におけるA氏の周囲の関係者たちへのインタビューでは、次のようなフィードバックが出てくるようになりました。

「以前は、業績という視点が中心で、業績に関する話が大半を占めていた。しかし、最近は、組織の未来、あるべき姿、人の話を多くするようになった。『人を育てよう』という意思が見えるようになった。周囲の人達は、A氏のこうした変化に、最初は戸惑いがあったと思う。しかし最近は、リーダーの語る組織の未来、あるべき姿を踏まえ、自分たちが何をすべきか考えるようになってきている」

「去年の年末から急激に変わったと思った。意図的かどうかわからないが、下に任せるようになった。それが、よい形で作用していると思う。最近は信用して任せてもらえるので、自分の力で、より思考するようになったと自分自身も感じている」

周囲の人たちからのこうしたフィードバックを踏まえ、A氏に聞きました。

「あなたは、どのようにして変わることができたのですか?」
「当初、変化させることが難しいと思っていた影響力を、どのようにして変えることができたのでしょうか?」

彼はしばらく考え込み、数秒の沈黙の後、ポツリと言いました。

「真似をしたのかもな、コーチングを......」

実際に、A氏が主催する会議に出席したときのことです。彼の持ち味である明確なリーディングの中に、絶妙なタイミングで、考えさせる「質問」が織り込まれていました。

A氏とのコーチングの中で私が実際に用いた質問もいくつかそのまま使われていました。

エグゼクティブ・コーチングの中で、私からA氏にコーチング手法をティーチングしたことはありませんでした。しかし、A氏は、自身がコーチングを「体感・体験」する過程で知らず知らずのうちにコーチのインターパーソナルスキルを吸収し、結果的に自分のものとして新たなスタイルを構築していったのでしょう。

さらに興味深いのは、A氏の部下で、全国エリアを管轄するB氏のコメントです。

「Aさんが私とのコーチングの時間をとってくれたことに感謝している。最近は、私がどのような状況にあるかを会話の中から引き出し、『一緒に考えよう』という姿勢で接してくる。これまでは、そのような関わりはなかった。Aさんのスタイルを参考にし、今年から自分自身も全国のエリア長と1対1のミーティングをするようになった。対話を通して彼らから状況を引き出すことで、部下が自分で考えるようになってきていると思う」

エグゼクティブのインターパーソナルスキルの変化は、「コーチの模倣」によって生まれ、組織員のインターパーソナルスキルの変化は、「エグゼクティブの模倣」によって生まれる。

数多くのエグゼクティブ・コーチングの経験から、このような実例に頻繁に遭遇することで、こうした仮説を持つようになりました。

コーチ・エィは、こうした原理に基づき、組織の中で求められる行動パターンが「組織内に浸透する速度」を高めるために、システミック・アプローチによるコーチングの組織導入プログラムを開発しました。

そして、より早期に企業文化の変化を生み出す試みを行っています。

組織リーダーのリーダーシップは、組織文化や企業倫理に重要な影響を与えると言われています。

倫理的な組織文化形成に寄与する要因の上位2つを制度や戦略ではなく、リーダーシップに関連する項目が占めたリサーチ結果などもあります(※3)。

コーチングの体感・体験に端を発するリーダーのインターパーソナルスキル、そして影響力の変化が、「模倣の組織的連鎖」のエンジンを起動させ、組織文化の変化をもたらすことができると考えられます。

【参考資料】
※1 IED(the Institute of Executive Development)、Alexcelグループによるエグゼクティブ・トランジションに関する最新の調査結果("Executive Transitions Study 2010")の一部。

※2 コーチ・エィでは100名以上コーチを有し、同時に複数名のコーチを組織化できるため、企業内のあらゆる課題をスピーディーに解決に導くことができます。また、その効果を持続させるため、コーチング文化の醸成を実現させる構造「システミック・コーチング™」により、組織を継続的にドライブするリーダー開発を実現することが可能です。

※3 AMA (American Management Association)が、HRI(Human Resource Institute)に委託・実施した企業倫理に関する調査結果("AMA/HRI Business Ethics Survey 2005")より。

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