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イノベーションと『破壊的な質問』

イノベーションと『破壊的な質問』 | Hello, Coaching!
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私が13年にわたってエグゼクティブコーチをさせていただいている鹿沼グループの福島範治社長が、2月13日付の日経ビジネス「再生の研究」欄に登場されました。

鹿沼グループは、ゴルフ場を栃木県に3コース、静岡県に1コース運営する会社です。

経営破綻に陥ったお父様の会社を再建するために、福島社長が入社したのが98年。その翌年から今まで、私は継続的にコーチをさせていただいています。

さまざまな苦難を乗り越え、ここ何年間は利益が出る体質となっていましたが、昨年の東日本大震災で、会社は一気に危機に陥りました。

2011年3月は来場者数が前年同月比で50%強にまで下落。経営に暗雲が立ち込めます。

しかし、翌月にはすぐに前年同月の90%まで回復。利益の改善は著しく、4月から11月の営業利益は、前年同期の2倍にまで伸びました。

・ひとりの社員が1日の中でフロント、レストラン、帰宅客対応など複数の仕事を次々にこなす「マルチ化」を実践
・メンバー会員が、次回のプレーを予約する「サービスフロア」を重厚感溢れるものへと拡充
・レストラン内に、「特設焼肉コーナー」を設置

など、「『また来たい』と思ってもらえるゴルフ場」というビジョンに裏打ちされた施策を次々に社員と共に打ち出し、未曽有の危機を「変革のチャンス」へと変えたのです。

私は、福島社長が、危機の中にあっても「常識に捉われない発想」を続けたことが、今回のV字回復を成し遂げる大きな要因になったのではないかと思っています。

そんな福島社長に、「コーチングを受け続けていただいている理由」をお聞きしたことがあります。

曰く、「社員に自発的に考え、行動してもらうために『問いかける』ということが、もはや自分の価値観となっています。それは、自分がコーチから『他の可能性はないのか?』『本当にこの方法が最良なのか?』ということについて、常に問い続けられているからだと思います。その習慣が土台となっているのです。コーチをつけ始めた最初の頃は、毎週のセッションでこの土台に大量の『土』を盛ってもらっているような感覚でした。今は頻度こそ少なくなりましたが、定期的に『砂』をそこにかけ、メンテナンスをしてもらっている感じです。このメンテナンスが完全になくなると、土台そのものがもろくなってしまう気さえしています」

ハーバード・ビジネス・スクール教授のクリステンセン氏は、画期的なサービス・製品を開発したり、革新的なビジネスアイディアを事業化したりした人々に対するリサーチをベースにした近著『イノベーションのDNA~破壊的イノベータの5つのスキル~』の中で、「いかにしてイノベーションを引き起こすことができるか」について提言をしています。

提言は5つのスキルとしてまとまっていますが、そのトップに来るのが、「破壊的な質問をする」ことです。

クリステンセン氏は、「イノベータは、つねに常識を疑う」と言います。

「思考を自動操縦に任せることはせず、製品であれ、サービス、プロセス、地域、ビジネスモデルであれ、対象となるものの脳内地図は正確だろうかと、常に質問を投げかける」と。

私はコーチとして、福島社長にできる限り「当たり前」を覆すような質問を投げかけることを意識してきました。

・なぜこのやり方でなくてはいけないのか?
・どんな可能性を自分は排除しているのか?
・なぜ今すぐにそれが実現できないのだろうか?
・それが無理である真の理由はなんだろうか?
・2倍ではなく、なぜ10倍にすることができないのだろうか?

多くの企業の経営陣は、自分が作り上げてきた仕組みやシステム、商品体系の中で昇進していきます。ですから、経営サイドに立った時に、なかなかこれまで築き上げた「常識」を疑うことが難しくなります。

自己否定できずに、イノベーションが立ち遅れる。

いま、少なくない数の日本企業が、クリステンセン氏の言う「イノベーションのジレンマ」に直面しているように思います。

常識を疑う「破壊的な質問をする」こと。

それが、エグゼグティブコーチである私たちの大きな役割であり、存在意義だと思っています。

【参考資料】
『イノベーションのDNA ~破壊的イノベータの5つのスキル~』(翔泳社刊)
クレイトン・クリステンセン (著)、ジェフリー・ダイアー (著)、
ハル・グレガーセン (著)、櫻井 祐子 (翻訳)

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