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自分で気付く力

自分で気付く力 | Hello, Coaching!
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先日、四国の自動車販売会社について書かれた本を読みました。この会社、リーマンショックや震災の影響で他社が売り上げを落とす中、順調に契約数と新車販売の利益率をアップし続けているのだそうです。

販売会社での営業トレーニングは非常にユニーク。

商談模様をお客様に承諾を得て録音し、それを上司と営業担当者本人とで一緒に聞くのだそうです。しかも、聞き終わって上司が発する言葉はただ一言。

「自分で聞いてみて気付いたことは何?」

たったこれだけだそうです。

上司は、もちろん本人よりも沢山の改善ポイントに気付いています。でも、一切「注意」も「教え」も「指摘」もしない。

「気付いたことは何?」

これをひたすら繰り返し質問し、本人に徹底的に考えさせ自由に話をさせる。

その販売会社の経営者は「人は、結局、自分で気が付いたことしか直さない」と明確に割り切っています。

「お客様の心をつかみ、高い満足度でリピートを産む営業マンには『気が利く高い人間力』が求められる。それを高めるには、『教える』のではなく、シンプルかつオープンな質問で『自分で気付く力』を時間をかけて高める以外にない」と。

「気が利く人間力の高い人」を創るには、「自分で気付く」訓練をしなければならない、ということなのでしょう。

考えてみると、何も営業に限ったことではなく、仕事のできる人というのは、要するに「気が利く」ということなのかもしれません。お客様やチームメンバーの真意を理解し、信頼と安心を得ることができる。即座に相手の立場に立って考え、誠心誠意行動できる。経営目線でモノを見ることができる...。これらは、突き詰めてしまえば、自分で「気付く」からこそできることだともいえます。

ではなぜ、「気付いたことは何?」を繰り返すことで、こうした能力が開発できるのでしょうか?

「気付いたことは何ですか?」

これは、数ある質問の技術の中でも、オープンクエスチョンと呼ばれる部類のものです。

自分の気付き次第で、一言で答えられる場合もあれば一時間以上話すこともできる。この問いを繰り返されると、自分の「気付き」を可能な限り増やそうとアンテナを張り巡らせ、視野や視点を広げながら、考え続ける習慣がつくことは間違いなさそうです。

相手の視点に立つことができれば、その言葉以外の仕草や雰囲気にまで関心が及ぶこともあるでしょう。さらに、自分の気付きが独りよがりではないか? 誤解ではないか? と、相手にフィードバックを受けることもあるでしょう。

こうしたことを通じて、アンテナはますます研ぎ澄まされ、「気付く力」もより高まっていくのではないでしょうか。

では、世界中の組織でマネージャーは「気付いたことは何ですか?」を問い続ければいいように思いますが、皆さんの職場ではいかがでしょう。

「仕事の現場では時間がなかなかない。目の前の課題がどんどん増える、指導もせずに本人の気付きを辛抱強く待つなんて考えられない」という声が聞こえてきそうです。

先の販売会社の経営者は、「私たちは、『人にかけた時間こそが企業の競争力になる』と信じ続けている」と言います。

時間はかかるが、あえてそこに時間をかけ根っからの「気が利く、人間力の高い人」を育てる。それが、最終的には自社のアドバンテージになる、という決め。問いかけによる「気付きを促す」トレーニングの繰り返しは、実は部下の仕事力を高める、近道なのかもしれません。

皆さんがこのコラムをお読みいただいて気付いたこと、考えたことは何でしたか?

【参考文献】
『教えないから人が育つ ~横田英毅のリーダー学~』
 天外伺朗著 (講談社)

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