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関連性

関連性 | Hello, Coaching!
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「上司」と言われる方々は、意識するしないに関わらず、日々、「自分の行動」が「部下の状態や行動」にどのように関連するかを考えているものです。

ある日、部下をほめたら、部下のやる気が上がった(ように見えた)。とすると、上司の中で、自分の「ほめる」という行為と部下の「やる気」には関連性がある、という仮説が打ち立てられます。

また、別の日に部下を強く叱ったところ、部下の行動が改善された。すると、自分の「叱る」と部下の「行動の改善」には関連性がある、と考えます。

このように、自分のどの行為が、部下のどの行為や状態に結びつくか、そのつながりを懸命に探しているわけです。いろいろ試し、本を読み、先輩に聞き、研修で情報を得、できるだけ汎用的な関連性を見つけたいと思っています。

コーチング研究所では、リーダーのどのような行動が部下のどの行動と関連性が高いのかを、膨大なデータから割り出そうとしています。

例えば、「私はこの会社のビジョン、方向性を理解している」という部下の状態と関連性が高いリーダーの行動は、「組織の戦略を明確に示している」や「節目だけでなく日常でもビジョンの話を持ち出している」という行動であることがわかっています。

これは、「料理に塩をふる」という行為と「料理がしょっぱい」につながりがある、というのと同じ位、わかりやすいケースでしょう。

一方、研究所の最近のデータでは、ちょっと驚くような結果もいくつか出てきています。

例えば、部下側の「私は創意工夫をしながら仕事に取り組んでいる」と最も関連性の高いリーダーの行動は、「部下に話しかけられたら手を止めて話を聞いている」でした。

これは、想像が及びにくいのではないでしょうか。

自分が仕事に集中している時に、部下に話かけられたとします。その時、瞬時に「今ここで手を止めて話を聞くことと、部下の創意工夫を高めることには関係がある」と、イメージできるでしょうか?

また、「私は不測の事態・変化にすばやく適応できている」と関連性が一番高いリーダーの行動は、「部下に感謝やねぎらいの気持ちを伝えている」でした。これもちょっと想像を越えます。「部下に感謝すること」と、「部下の不測事態対応能力の高さ」につながりがある! とは、なかなか思えないものです。

あえてこれらの結果を考察すれば、「仕事で忙しい上司が自分の耳に話を傾けてくれる、それならば一生懸命考え、工夫をしよう」と部下は思うということなのかもしれません。

また、部下の側からすると、上司から感謝やねぎらいを伝えられると安心感が高まり、気持ちが落ち着いた状態となって、いざというときに冷静に対応できる。逆に言えば、感謝やねぎらいを伝えないと、部下はどことなく気忙しくなり、不安が高まり、いざというときに、冷静に対応ができない、ということなのでしょうか。

もちろん、「関連性がある」ことと「因果関係がある」ことは違いますが、上記のような理由で、両方の変数が「同じ方向に動いた」ということはありえるかもしれません。

お伝えしたいのは、この考察が正しい、つまり、「部下をねぎらうと、不測事態対応能力が高まりますよ」ということではありません。それよりも、こうした「上司と部下の関連性」に関するリサーチを見ると、上司が自分の行動の影響力を、どれ位、先の先までイメージすることできるか、ということではないかと思うのです。

ありがとう、と言えば、部下は喜ぶ、でとどまらずに、それがその先、部下のどんな行動につながっていくのか。それを想像することができるイメージ力。ありがとう、と言わないことで、どこに紐付いていくのかを予見できるビジュアル力。

将棋指しが自分の四手、五手先を読むような、「見通す力」がリーダーには求められているのかもしれません。それが当たらないまでも、そのことについて思いを馳せ、考える。それは、組織を牽引していく上で、とても大事な行いであるように思えてなりません。

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