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人が決めたこと、自分が決めたこと

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「人から言われたことより、自分で思いついたこと、自分で決めたことをやりたい」

「やらされ感でやる仕事の生産性を1とすると、仕事の意味・意義を理解して取り組むと生産性は 1.3 倍になり、企画を考える段階から参画すると 1.3 の二乗になって 1.69倍になる」

これは、ある講演で聞いた話ですが、モチベーションの高低に関するこうした話題は、エビデンスはともかくとして、感覚的にはよく理解できます。

クライアントの意思決定とコーチのアドバイスの関係

コーチング研究所のデータに、「コーチからの指示・アドバイスはクライアントの主体性を奪う」ことがうかがえるものがあります。(*)

コーチングを受けたクライアントに、「自分自身で意思決定をした」かどうかを5段階で自己評価してもらったところ、最高点の「5」とした人のうち、約96%の人が、「コーチに指示・アドバイスをされていない」という質問に対して、「とてもあてはまる」と「あてはまる」を選んでいます。

一方、「自分自身で意思決定をした」についての評価が「2」だった人で、「とてもあてはまる」としたのは0%で、「あてはまる」を選んだ人は14%にすぎず、「あてはまらない」「まったくあてはまらない」を選んだ人が、43%となっています。

このリサーチは、20カ国、978人を対象にしていますから、コーチからのアドバイスが多くなると「自分が決めた」という感覚が減少することは、国や民族を超えて同じように起こっているのだと思います。

相手の主体性を発揮させるためには、指示やアドバイスはしないほうがよい。自分で思いついたことや決めたことの方がやる気が出る。

これは、相手の主体性やモチベーションを考えるときに重要なポイントです。

しかし、組織というものは、組織が決めたミッションやゴールに向かって動くもの。何でも自由に、自分で思いついて、自分で決めて動けるわけではないことも事実です。

組織で決められたミッションやゴールであっても、それを「自分ごと」として捉え、モチベーション高く実行する。枠組みの中で、自発性、自律性を発揮できることが組織人にとって最も大切なことだと思うのです。

ある大手製造業が、営業職マネージャーにコーチングを導入しました。

プロジェクト終了後に行ったリサーチで、上司である営業マネージャーがコーチングを始めたことによる成果について、部下の人たちがどう認識しているかを調べたところ、

  • 部下が選んだ「上司の変化」のトップ項目は、「上司が部下である自分の話を聞くようになった」
  • 部下の選んだ「自分自身の変化」のトップ項目は、「ミッションやゴールを共有できた」

という結果が出ました。

このことからは、「上司が部下の話を聞くようになったことで、 ミッションやゴールが共有できた」と解釈することができます。本人に話させることで、それが本人のものになる。言って聞かせる、何回も言う、それはそれで大切なことです。

しかし、結果として本人の腑に落ちなければ意味がありません。そのためには、相手に話させること。本人がたくさん話すことで、咀嚼し、理解し、自分の言葉になることではじめて、本当の意味で自分のものになる。

自分のものになれば、自ずと自発性、自律性は発揮されるのです。対話無しにそれが実現することはないでしょう。

上司と部下の関係において、指示やアドバイスは無くてはならないコミュニケーションのひとつです。

しかし、相手の主体性を高めるという視点から見れば、指示やアドバイスをしない、コーチングという対話はきわめて重要な働きをするのです。

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