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「自己認識力」を高めるには

「自己認識力」を高めるには

エグゼクティブサーチ、コーン・フェリー社のアナリストである
David Zes氏とDana Landis氏は、
リーダーの「自己認識力」と「組織の業績」の
関連性についてリサーチしています。

彼らは、上場企業486社の社員6,977名を対象に、
その「自己評価」と「他者評価」の「一致度」について調査すると共に、
対象者の属する企業の「株価パフォーマンス(stock performance)」 を
2年半にわたって追跡しました。

そうした中から、

・「業績の悪い会社の社員は、『収益率』の良い(robust ROR)会社の社員よりも、
 『自己認識力の低い』率が79%高い」(※)

そして、

・「『収益率(ROR)』がより良い上場企業は、
 『自己認識力』がより高いプロフェッショナルを雇用している」(※)

という結論に至ったそうです。

20世紀最高の経営者といわれるジャック・ウェルチは、
「ウェルチさん、あなたはなぜ、20世紀最高の経営者と言われるようになれたのですか」
というメディアからの質問に対して、たった一言、
「自己認識力」の高さだと答えています。

こうしてみると、「自己認識力」の高さは、
リーダーがなんとなしに身に着けるものではなく、
リーダーにとって「なくてはならない能力」、
つまりコンピテンシーのように思えてきます。

では、いかにしたら、私たちは「自己認識力」を
高めていけるのでしょうか?

コーチング研究所が、85名のエグゼクティブに実施した
コーチングの成果に関する調査によると、
93%の方が「他人からのフィードバックを事実としてうけとれるようになった」
と答えており、それと同時に86%の方が
「自分を客観的にみて、自分の状況を確認できるようになった」と
「自己認識力」の向上をあげています。

この結果から、第三者からのフィードバックを
効果的に受け取れる「フィードバックリテラシーの高さ」が
「自己認識力」を高める要因のひとつになっていると考えられます。

しかしながら、そのフィードバックが
耳の痛いものであればあるほど、
それをうまく活用できない場合があることも事実です。

たとえば、自身では、「何事であれ、自分は誠実な対応をしている」と
固く信じているエグゼクティブに対して、
周囲から「誠実さは感じられない」というフィードバックがなされたとき、
そのエグゼクティブの反応は、大きく2つのパターンに分かれます。

「そんなことはない。周囲の人は何を見ているんだ!!」
「誰が(この結果を)言ったんだ!!」

というケースと、

「どうせ、私の事を知らない連中が言ったことだ」
「結果自体に関心がない」
「周りの人たちからのフィードバックに意味があるとは思えない」

という、2つのパターン。

多少、誇張していますが、「他者からのネガティブ評価」に対して起こる
ストレス反応には、「戦うか?」「逃げるか?」の
二通りの感情的な反応パターンがある、ということです。

この反応パターンに陥ることで、エグゼクティブ自身は、
自分の内側にある「好ましい自己イメージ」を自分の中で保つことはできますが、
「自己評価」と「他者評価」のギャップを埋めることはできません。

すなわち、「自己認識力」が高まることはありません。

以前、私がコーチングしたエグゼクティブのお話です。

事前に周囲からいただいた、そのエグゼクティブへのフィードバックは

「人の話をまったく聞かない」
「一方的でおしつけがましい」
「話をもっと聞いてほしい」

など、コミュニケーションの「聞く」に関する項目については、
驚くほどネガティブに評価されていました。

おそらく、この周りからのフィードバックを
本人にそのままお返ししても、
前述の「戦うか? / 逃げるか?」の反応に陥るだけで
終わってしまう可能性があると私は思いました。

そこで、フィードバックをお返しする際に、
いくつかのステップを踏んでみることにしました。

たとえば、

「部下は、どんな想いをもってこのフィードバックを伝えていらっしゃると思いますか?」
「これまでに、他者からフィードバックを受けてうまくいった体験は何ですか?」
「そもそも、他者からフィードバックを受けることに対してどんなイメージを持っていますか?」

など、フィードバックに対する、本人の認識や理解を
いくつかの視点から言語化していただく時間をとったのです。

すると、そのエグゼクティブは、
「耳が痛い」フィードバックには、自分が身構えたり、
無視してしまいがちになりやすい、ということが分かってきました。

しかし、フィードバックというものについて問いかけられ、
言葉にする過程の中で、徐々にフィードバックへの理解が深まり、
「自身と組織を成長させる価値ある情報」と再定義されるようになっていきました。

そして、耳の痛いフィードバックであったとしても、
過剰なアレルギー反応を起こさずに、
「一度じっくり向き合ってみよう」という気に変わっていったのです。

後日、この方は一言、
「『フィードバック』についての認識を深めるコーチからの問いかけは、
 『フィ―ドバックワクチン』を打つような行為だね」
とおっしゃっていました。

「耳の痛い」フィードバックを受けるときには、
事前に「フィードバックワクチン」を打ち、
他者からの「フィードバック」に対して開かれた状態になることが
「自己認識力」高めるひとつの方法と言えます。


【参考文献】

※Cashman, K., 2014,
Return On Self-Awareness: Research Validates The Bottom Line Of Leadership Development,
2014 Forbes.com LLC

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