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リーダーシップをプロセスとしてとらえる

リーダーシップをプロセスとしてとらえる

「リーダーシップ」というと、
リーダーの性格といった「資質」や、
部下に対してどうふるまうかといった「行動」
にフォーカスが当てられがちです。

これに対し、リーダーシップを
「プロセス」として捉える理論があります。

「リーダー」を、「社員を管理する者」ではなく、
「実践のコミュニティー」の一員、

すなわち、

「人々は共同事業で結びつけられ、歴史を共有し、
そのためにある種の価値観、信念、話し方、そして物事のやり方
を共有している」(Drath and Palus, 1994, p4)

その中の1人である、とする見方です。

つまり、組織とは、リーダー1人が決めて、
動かしていくものではなく、
そこにいる全ての人々が、一緒に考え、決め、
動かしていくプロセスである、と。

そこにいるすべての社員が、
「リーダーシップ」という「役割(ロール)」を担うわけです。

ここで注意が必要なのは、
「リーダー」と「リーダーシップ」は
分けて考える必要があるということです。

「リーダーシップ」は、「リーダー」と一対で考えられる傾向がありますが、
「リーダー」という役割を持っていないとしても、
「リーダーシップ」を発揮することは可能であり、
実際、誰しもそのような場面を何度も経験していると思います。

Bruner(1986) と Kegan(1982)は、

「組織のメンバー全員が、自分自身、そして周囲の世界についての知識を構築する」
と言及しています。

これを基に、Drath と Palus (1994) は、

「組織内で共に働く人々が、グループとして機能するためには、
 メンバー全員で会社をどう見るかを構築し、
 社会的に理解できる解釈を創りあげる必要がある。

 そういった世界の見方が、メンバーが解釈し、予測し、計画する基礎になる。

 このため、リーダーシップには全員の参加が必要とされ、
 全員が意味を創り上げ、その意味に従って行動するのである」
と発展させています。

とはいえ、「リーダー」 というポストがもう要らなくなる、
ということではありません。

Horner(1997)は、
「鍵は『リーダーの役割』の『進化(evolution)』にある」
としています。

「成功するリーダーは、しっかりとチームと自分を結びつけ、
 『ファシリテーション』『コーチング』そしてグループ外の関係をうまく扱うなど、
 これまでとは異なる新しい役割を果たすようになってきている」(Fisher, 1993)

つまり、従来の「与える者」「与えられる者」にメンバーを分けるのではなく、
リーダーは、物事を促進したり、部下をコーチしたりするわけです。

その意味において、「コーチング」は、
権威的で一方的なコミュニケーションの形態を取らないことが分かります。

また、経営の中心には、「対話」が必要条件であることがわかります。

「初期段階のチームは、従来の組織構造の中にいる個人よりも、
 もっと多くのコーチング、ガイダンス、
 それに自分に向けられる関心を必要としている」(Wilson, et al., 1994, p6)
とあるように、「リーダー」は、これまでの伝統的なやり方ではないにせよ、
組織にとって、社員にとって、これからも極めて重要な存在であり続けるでしょう。

「オープンであること、また『共有の意味』を創り出すことを通し、
 リーダーはメンバーにコミットさせ、
 仕事のプロセスの導き手となることができる。
 そのことで、メンバーはそれぞれのスキルを伸ばし、
 より広く組織に貢献することができる」(Hackman, 1987)


「システミック・コーチング」とは、
一人のリーダーが自分の意志やビジョンを
全体に浸透させるというものではありません。

「リーダー」の役割と「リーダーシップ」を再考し、
組織のメンバー全員に「対話」の機会を創り、
「対話」を通して、「意味」や「理解」、「解釈」を「共創する」。

また、意味や理解、解釈を「共創する」ことから、
「対話」の場で、「意味」や「理解」、「解釈」を
「共有」できるようになるのです。

「対話」が浸透し、「対話」を通した
「意味」、「理解」、「解釈」の「共創」と「共有」が
システミックであると考えています。

それは、「インプロバイゼーション(即興劇)」に似ています。

そこに、「監督」はいません。
「シナリオ」もありません。
「役割」も決められていません。

誰かが口火を切り、そこに「対話」が生じる。

その「対話」を通して、
自分の役割や物語の方向、この劇の意味を予測し、
それを基に新たな会話が生まれ、
役割やシナリオが確認されたり、変更されたりする。

そこに生まれる関係性、そして、
「共創する」という意識が、
インプロバイゼーションの生命になり、
やがて、お互いの役割や劇の進行、そして劇の目的が「共有」されてゆく。

もちろん観客の反応も、その劇の進行に関わってくる。
観客も含めた劇全体が、一つの生命を持つことになる。

「プロセスとしてのリーダーシップ」はそのようなものであり、
「意味」や「目的」、「解釈」の共有、浸透も
このプロセスの中にあると思います。


【参考文献】

Bruner, J. (1986).
Actual minds, possible worlds. Cambridge, MA: Harvard University Press.

Drath, W. H., and Palus, C. J. (1994).
Making common sense: Leadership as meaning-making in a community of practice.
Greensboro, NC: Center for Creative Leadership.

Fisher, K. (1993).
Leading self-directed work teams: A guide to developing new team leadership skills.
New York: McGraw-Hill, Inc.

Hackman, J. R. (1987).
The psychology of self-management in organizations.
In M. S. Pollock and R. O. Perloff (Eds.),
Psychology and work: Productivity change and employment (pp. 85-136).

Horner, M. (1997)
Leadership theory: past, present and future, MCB University Press, 1352-759,
Team Performance Management, Vol. 3 No. 4, 1997, pp. 270-287.

Kegan, R. (1982).
The evolving self: Problem and process in human development.
Cambridge, MA: Harvard University Press.

Wilson, J. M., George, J., and Wellins, R. S. (1994).
Leadership trapeze: Strategies for leadership in
team-based organizations. San Francisco, CA: Jossey-Bass, Inc.

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

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