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トップマネジメントのチーム力

トップマネジメントのチーム力

スタンフォード大学のチャールズ・オライリー教授は、
組織文化について数多くの研究で論じられていることは
次のように整理できると述べています。(※1)

(1)組織文化は、主に上級幹部が持っている価値観と行動を反映している
(2)組織文化は、企業の業績を決定する重要な一因となる

つまり、トップマネジメントの各メンバーの意識・行動の状態が
業績を左右するといえる、ということです。

では、それがどのような状態であることが望ましいのでしょうか?

ピーター・ドラッカーは、トップマネジメントが
「チームとして機能する」ことの重要性について
下記のように述べています。(※2)

「トップマネジメントとは、一人ではなくチームによる仕事である。
 トップマネジメントの役割が要求するさまざまな体質を
 一人で合わせ持つことは不可能である。
 しかも、一人ではこなしきれない量の仕事がある。

 (中略)

 トップマネジメントがチームとして機能するには、
 いくつかの厳しい条件を満たさなければならない。
 チームは単純ではない。仲のよさだけではうまく機能しない。
 人間関係に関わりなく、トップマネジメント・チームは
 機能しなければならない」

私は、数多くの企業で、エグゼクティブ・コーチングを行ってきましたが、
トップマネジメント・チームが会社全体の経営目標に基づいた視点で、
皆で考え、活発に意見をぶつけ合い、お互いに協力し合えている企業は、
そのチーム力が組織文化、業績に良い影響を与えていると、確信しています。

では、トップマネジメントのチーム力向上には、
何が必要なのでしょうか?

コーチング研究所が分析したデータがあります。

このデータからは、組織のトップである社長の
直属の部下への関わりが高い企業では、
会社全体の役員及び管理職間のコミュニケーションレベルも高く、
トップマネジメント・チームのメンバー間のコミュニケーションも
活発であることが推測されます。


ある大企業の社長のAさんの事例です。

Aさんの会社では、時代による環境変化が激しく、
大々的な事業変革が戦略上の重要なテーマとなっていました。

しかし、新しいビジネスの創造につながる
具体的な行動が起きていないことが急務の経営課題でした。

Aさんは、自身にエグゼクティブコーチをつけ、
組織全体の変革に取り組むことにしました。

エグゼクティブ・コーチングの中で、組織全体のリサーチを実施、
その結果から見えてきたのは次のようなことでした。

・新ビジネスの創出について、社員が役割、部署を越えて話し合い、
 考えていく必要がある。

・しかし現状では、社員同士(部署内、部署間)で
 会話がほとんど行われていない。

・その状態を変えるためには、まず、トップマネジメント・チームである
 部門長間で、新ビジネス創出について
 「共に考え、意見を交わし、協力して取り組む」ことが行われている必要がある。

・しかし、今の部門長たちには一体感が無い。

そしてAさんは、変革の第一歩として、
「チーム力が高く、お互い協力し合うトップマネジメント・チームをつくる」
ことを取り組みの核とすることにしました。

実は、Aさんは、それまでも直属の部下である
部門長たちの能力向上のために、
いろいろと取り組んできた「つもり」でいました。

コーチとのセッションを通じて熟考を重ねながら、
Aさんが言葉にしたのは次のようなことでした。

・自分自身が成功してきた方法がベストだという確信から、
 部門長たちに自分のやり方を指導してきた。

・部門長たちが自ら考えなくなってしまっているのは、
 トップである自分の彼らへの関わりの結果なのではないか。

・部門長たちの成長のために、各人に責任を持たせ、
 仕事を任せてきたが、部門長同士が協力しなくなってしまった。

ここから、Aさん自身の変革が始まりました。

今まで自分が正しいと信じてきた、
部門長たちへの「自身の関わり方」を一新する決意をしたのです。

まず、部門長たちに「自分で考えさせる」こと、そして、
「皆で協力して取り組ませる」ことを重視し、取り組むことを決めました。

・各部門長と1対1で定期的に対話し、変革について
 各人がどのようなビジョンをもっているのかなどについて、
  関心を持って聞く。

・理想の組織文化やトップマネジメント・チームの在り方など、
 Aさんの考えを会議や1対1の対話の場などで、継続的に発信する。

・変革に向けた中期経営計画の検討・作成を部門長に任せ、
 共同で取り組ませる。

Aさんが関わりを変えることをはじめてから、
事業の変革に向けた部門長の意識や行動は、徐々に変化し始めました。

「私は、トップマネジメント・チームの他のメンバーと協力して、
 事業の成長に向けて取り組んでいる」というアンケートに対し、
 プロジェクトスタート時は7段階評価で平均が3.6点だったのが、
 半年後には6点にまで上がったのです。


「トップマネジメントのチーム力」は、
企業の業績を左右する、とても重要なファクターのひとつだといえますが、
そのチーム力を高めるための影響力を一番持っているのは、
トップである「社長」だと、私は思います。

「社長が、トップマネジメント・チームの各メンバーに
どのように関わっていくか?」

これが、トップマネジメントのチーム力を左右すると考えます。

トップマネジメントのチーム力を更に向上させていくために、
あなたは何をしますか?


【参考資料】

※1 CharlesA.O'ReillyIII.,2014
  "The Promise and Problems of Organizational Culture"

※2 『マネジメント[エッセンシャル版]』(ダイヤモンド社)
   ピーター・F・ドラッカー (著)、上田 惇生 (翻訳)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

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