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しなやかで強い組織では何が起きているのか?

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あなたの組織では、どれくらい、現状を打破する「新しいものを生み出す対話」が起こっているでしょうか?

Loretta Malandro博士は、長年、リーダーシップ・コンサルタントとして働いた経験から、いかに多くの管理職が、「難しく面倒な対話」を避けているかを痛感しているといいます。

そして、「『面倒な対話』を避けているとき、あなたは、(管理職として)誰の役にも立っていない」と指摘しています。(Malandro, 2009)

また、42%の企業CEOが、「最も自信が無い領域」として「対立の解決 (conflict resolution)」を挙げている(Heffernan, 2015)というデータもあります。

「対話」や「対立」にどう向き合えばよいのかわからないと、組織が現状を打破したり、新しいものを生み出したりすることは難しくなります。イノベーションの文化を築くためにトップCEOたちがしていることについて、Adam Bryant氏は、200名以上に対するインタビューを元にした著書の中で、次のように結論付けています。

企業の管理職は、とりわけ、直属の部下と、もっと 「大人の会話(adult conversations)」ができるようになる必要がある、と。

大人の会話とは、「必然的な『意見の不一致』と『誤解』」に取り組まなければいけない類の「対話」のことです。(Heskett, 2014)

従来の「対話」が、いかに「クリエイティビティ」を抑圧しているかについて世界で唯一「創造学」の修士号を付与しているニューヨーク州立大学バッファロー校創造学国際研究センターのジェラルド・J・プッチオ博士は、TEDで講演しています。

「クリエイティビティとは、人間に本来備わっている自然なことであり、人は、いわゆる『意図的なクリエイティビティ』に携わることができる。『クリエイティビティ』とは、その他のあらゆる能力と同じ『スキル』である」と。

ところが、組織で通常起こっているのは、結局、自分たちは「慣れ親しんでいるもの」「すでに知っていること」に固執し、「同調」してしまうことだ、と。(Puccio, 2012)

しかし、「武器製造業者」と「それに反対する人々」という、対立する人々の間に「対話」の場を設け、それを世界規模で実施した実績によってノーベル平和賞に3度ノミネートされているシーラ・エルワージー博士は、「向き合う」ことで「価値あるもの」が発見される (Elworthy, 2014)と話しています。

そして、組織に有効な「コンフリクト(対立)」には、「練習」が必要であることを、企業でリーダー訓練を提供するBrooke Deterline氏は指摘しています。

「私たちは、オーディションのために、試験のために、あるいはテニスの試合でより上手くプレーできるようにするために、『練習』します。だったら、なぜ、職場で起こり得る議論やコンフリクト(対立)の練習をしないのでしょうか?」(Heffernan, 2015)

「対立」に「向き合い」、「探索」を可能にする「対話」を起こすために、コーチングには、「クリエイティブ・クエスチョン(創造的な問い)」や「クリエイティブ・リスニング(創造的に聞く)」という言葉があります。「問い」は、「探索」を開きます。

企業の取締役会の役員を対象にコーチをする Donna Hamlin氏は、「1つの発言に対して、必ず3つは質問すること」を提案しています。これによって、「対話」を「開かれたまま」にすることができるからだと。(Heffernan, 2015)

PwCによる2015年のCEOグローバル・サーベイ結果では、「変化は、もはや1回のイベントなどではなく、間違いなく『不断のプロセス』となった」ことが示唆されています。(Doty, 2015)

変化が、もはや「不断」であるのなら、リーダーに求められるのは、従来のやり方・考え方を超え、今まで見えなかったものを見るための「創造的な問い(クリエイティブ・クエスチョン)」を「絶えず」創り続けること、投げ続けることなのではないでしょうか?

グーグルが、「最高のマネージャー」の特性を見極めるために、データマイニングを実施したとき、当初の予想は、「専門技術」が、トップに挙がるだろうと思われていたそうです。

ところが、結果は、最下位の8位でした。最も驚きだったのは、社員たちが、自分が問題の解決を試みるときに、「答えを与えるのではなくて、『問い』を投げかけることによって自分を助けてくれるマネージャー」の方を選んでいたことだと、Margaret Heffernan氏は紹介しています。(Heffernan, 2015)

有効なコミュニケーションの鍵としての「問い」についてエドガー・シャインは、次の注意点を指摘しています。

「質問をする側」が、「質問される側」に対して、自分を、一時的に、「攻撃を受けやすい (vulnerable)」 状態にすることが必要になる、と。(Schein, 2014)「質問される側」は話しやすく、「質問をする側」は聞ける状態にするためです。

ところが、ハーバード・ビジネス・スクールのジェームス・へスケット教授は、長年、企業経営者を見てきて、次のように感想を述べています。

企業の経営陣は、「聞く」 ことには興味がない (Heskett, 2014)と。

「聞く」ために、Heffernan氏が、「会議で一言も発言しない」 という実験を提案すると、多くのエグゼクティブは、「拷問のようだ」 と言うそうです。(Heffernan, 2015)

「一方的に話す」ことに慣れきってしまっているのです。実際、人の話が聞ける人は多くはありません。

理由はいくつかあります。

「コミュニケーション」を「相手を説得すること」だと思っているかもしれません。従来の上司部下の関係の延長線上で、上の立場の人間が「話す」ものだと思っているのかもしれません。その場合は、「聞く」よりも「話す」ことで、自分の今の立場を守りたいと考えるのでしょう。

けれど、「対話」 は、「上か/下か」、「知っている/知らない」、「正しい/間違っている」といった二極化を超えたときに、広がり始めます。「質問」し、そして「聞く」 ことで、リーダーが、自分を「開かれた状態」、「攻撃されやすい状態」に置くことが、組織をロバスト(しなやかな強さ)にするように思います。

あなたの組織では、社員たちは、上司たちは、お互いに、どれだけ、創造的に聞いているでしょうか?

そして、どれだけ「創造的な問い」 (クリエイティブ・クエスチョン) を投げかけているでしょうか?

チームが、クリエイティブであるために、リーダーとして、どんな問いかけができるでしょうか? 部下たちに、どんな問いを作ってもらうことができるでしょうか?



【参考資料】
Doty, E., 2015, Leading Teams through Change at the Speed of Business, PwC
Elworthy, S., 2014, Pioneering the Possible: Awakened Leadership for a World That Works, North Atlantic Books
Heckman, R.J., 2015, Building the Best C-suite Teams, Korn Ferry
Heffernan, M., 2015, Beyond Measure, Margaret Heffernan
Heskett, J., 2014, Has Listening Become a Lost Art?, Harvard Business School/Working Knowledge, February 4, 2014
Malandro, L., 2009, Discover Your Leadership Blind Spots, 2015 Bloomberg L.P.
Puccio, G., 2012, Creativity as a Life Skill, TEDxGramercy
Schein, E.H., 2013, Humble Inquiry, Berrett-Koehler Publishers, Inc

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