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停滞しているリーダーがつかむべき「ヘビ」の正体

停滞しているリーダーがつかむべき「ヘビ」の正体
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あなたには今、恐れていることはありますか?

アメリカの哲学者 ラルフ・ウォルドー・エマソンは、恐怖は常に無知から生じると言っています。(※1)

自分が「知らないこと」に対して、人は恐れを抱くということなのでしょう。自分が今までに経験したことがないことに直面する。特にこのような時に、人は強く恐れを感じるのではないかと私は思っています。

新しい仕事に取り組む
新たに知り合った人たちと人間関係を築く
行ったことのない土地・国に行く
仕事を変える

これらはまさに、自分が今までに経験したことがない「知らないこと」に向かうトランジションだといえます。

トランジションで抱く恐れとは?

私は、今までに5回仕事を変えています。32歳のときには、突然、所属していた会社の関連会社の社長になりました。

その会社は、業績がかなり悪化しており、厳しい状況に置かれていました。年齢も若く、経営の経験も無い自分が、業績回復にむけた困難な取り組みを、知らない人たちと共に実行していかなければならない。しかも、ほぼ全員が私よりも年上です。

経験の浅い自分が会社を復活させることができるのか?
できなかったら、会社はどうなってしまうのか?
そして、自分はどうなるのか?

当時の私は、このような恐れを抱いていました。

恐れの中に踏み込んでいく

世界的なイノベーションとデザインのコンサルティング会社「IDEO」の創設者・共同経営者のトム・ケリー氏とデイヴィッド・ケリー氏は、著書の中でスタンフォード大学名誉教授の心理学者、アルバート・バンデューラ氏による「ヘビに対する恐怖症」の克服方法を紹介しています。(※2)

被験者は、多くのステップを順番にこなしていきます。

例えば、ヘビを抱えている男性を「マジックミラー越しに見る」という最初のステップがあります。被験者は、ヘビが男性の首に巻きつき、窒息死させるに違いないと強く信じています。

しかし、いくら時間が経っても、ヘビはぶら下がっているだけで、男性を絞め殺しません。そして、「開いたドア越しにヘビを見る」「他者がヘビを触る様子を見る」などのプロセスを経ながら、被験者は自ら少しずつヘビに近づき、最後にはヘビの横に立ちます。

このように、小さな成功体験を積み重ねていくと、自分が信じて疑わなかった考え方が徐々に変わっていきます。

最後にヘビに触れられるようになると、ヘビへの恐怖心は消えてなくなります。そして、その後、「恐怖症」は再発しなくなるのです。そればかりか、自分の力で自分が状況を変えられると感じられるようになっていきます。そして、自分の力で人生を変えていく自信を持つことが可能となっていくのです。

恐れを感じていることに対して、自ら踏み込んでいく。そして、小さな成功を積み重ねていく。

それが、自分の未来を創造していくための自信を手に入れることにつながるのです。

私にとってのヘビは何だったのか?

では、私にとっての「ヘビ」とは何だったのでしょうか。

それは、全く知らない、自分の父親と同じ位の年齢の人たちとの「新たな人間関係」でした。

社長就任当時、私は、社員たちとほとんど話をしていませんでした。会議の場などで私が言いたいことを話すことはありましたが、それ以外で言葉を交わすことはほぼありませんでした。

若かった私は、舐められたくないと思っていたでしょう。ボロが出るのを恐れて、自ら話しかけることをしなかったのです。

3ヶ月位経った頃でしょうか。会社再建の打開策も見出せず、行き詰ってしまっていました。

そこで私は、私にとっての「ヘビ」を触りに行くことを決意します。

私は、社員たちともっと話すことにしました。日常的に声をかけるようにし、特に、キーパーソンとは1対1で話すことにしました。

あるとき、自分の父親と同じ位の年齢の人と面談することになりました。その人は技術面のキーパーソンで、技術の基盤をつくってきた人でした。

それまでは、ほとんど話をしたことがありません。きっと「この若造、気に入らない」と思っていたのでしょう。私と話すのがとても嫌そうでした。

しかし、

「会社を再建するために助けて欲しいんです」

私がそう口火を切ると、その人は少し驚いた様子で言いました。

「えっ? どんなことをですか?」

私は、どんどん質問していきます。

「他社に負けない技術は何ですか?」
「その技術でどんな事業が開発できると思いますか?」
「他には?」

結局、その人とは2時間位話をしました。そして、その対話の中で、会社再建のための新事業のアイディアが生まれました。

私は、新たな人間関係を築くことに成功しました。

その結果、会社再建、その後の更なる成長につなげていくことができたのです。

人は、ビジネスの様々な局面で、ヘビに出くわします。

それは、突き詰めると「人と人との関係性」に起因することが多いのではないでしょうか。

特にトランジションのときは、新たな人間関係構築がとても重要だといえます。

そして、自らそのヘビを触りにいくことが、トランジションの成功を左右するのだといえるでしょう。

自分の未来を創る

自分が今までに経験したことがない「知らないこと」に直面したときは、恐れを感じます。しかし、それは成長の機会だと捉えることもできます。

今までに経験してきたことと同じことだけを行っていれば、何も恐れを感じずに、安心した状態でいられるかもしれません。しかし、その時は成長していない可能性があります。

ヘビを避けずに、ヘビを触りにいきましょう。そして、自らの未来を創造していく力を手に入れるのです。

あなたにとってのヘビは何ですか?

ヘビに触る準備はどの位できていますか?

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【参考資料】
※1 ラルフ・ウォルドー・エマソン、他(著)、斎藤光(訳)、『アメリカ古典文庫17 超越主義』、研究社出版、1975年
※2 トム・ケリー、デイヴィッド・ケリー(著)、千葉敏生(訳)、『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』、日経BP社、2014年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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