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長生きの秘訣

長生きの秘訣
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「人生100年時代」という言葉を聞く機会が増えました。

私はちょうど今50歳ですが、リーディンググラス(老眼鏡)が必要になったり、肩関節周囲炎(五十肩)になったりしている自分に気づくと、「100歳までをどう生きるか」よりも「どうすれば100歳まで生きられるか」という問いのほうが先に頭に浮かんでしまいます。

さて、長生きに関する研究はいくつもありますが、おそらく最も長く詳細に研究されているのは、ハーバード大学の成人発達研究(Harvard Study of Adult Development)ではないでしょうか。(※1)

この研究は1938年に開始されたもので、なんと80年近く経った今でも追跡調査が続いています。

当初の対象者724人の多くはすでに亡くなっていますが、現在でもその子孫も含め2,000人以上に対する研究が続いています。

ロバート・ウォールディンガー教授はこの研究の4代目の研究責任者です。教授らは、調査対象者に仕事、家庭生活、健康状態などについてのインタビューを定期的に行い、血液検査、脳検査などのデータも取り続けています。

この研究で明らかになった、私達を最も健康かつ幸福にするものは何だったと思いますか?

私達を最も健康かつ幸福にするものは何か?

それは、「良い人間関係」でした。

身近な人達との良好な人間関係は、肉体的な健康を維持するだけでなく、脳機能の減退も抑えることができ、長生きにつながることがこの研究によって明らかになったのです。

一方、友人の数の多さはこれらに関係がありませんでした。

身近な人達との人間関係が私達の日常にどのような影響を及ぼすかについては、みなさんの多くが体験されたことがあるのではないでしょうか。

たとえば、両親、配偶者、子ども、親友、恋人、職場の同僚、上司、部下、先輩といった身近な人達との関係が、何かをきっかけに悪くなってしまった時、そのことが気になり仕事が手につかなくなったような経験は、誰もが少なからずあるはずです。

エグゼクティブ・コーチングでも、身近な人との関係悪化がビジネスでのパフォーマンス低下につながった例をたくさん見てきました。良好な人間関係の重要性は、年齢や役職に関わらず、誰にでも共通するものなのです。

もしかすると、皆さんの中には、今まさに身近な人との人間関係に悩んでいる方がいらっしゃるかもしれません。

人間関係の問題を解決するのは厄介で難しいものですが、関係悪化が続くと「仕事をする能力が奪われる」危険があります。(※2)

免疫システムが弱くなり、血圧が上がり、ストレスを感じやすくなり、記憶障害や学習障害などにもつながるからです。

では、人間関係を修復するにはどのような方法があるのでしょうか。

人間関係の修復に有効な2つのポイント

このようなテーマをネットで検索したり本を読んだりすると、関係を修復したい相手に対するアプローチとして様々な事例が出てきますが、私はこれまでのエグゼクティブ・コーチングの経験から、重要なポイントは次の2つに絞られると考えています。

1つは、「自分自身が相手に与えている影響を知る」ことです。

「どうしてあの人はこうしてくれないのだろう」と、つい「相手」に目を向けがちですが、あなたが相手の影響を受けているように、相手もあなたの影響を受けて今の状態が生じています。

お互いに影響を与え続けているなら、あなたが相手に与えている影響を考えずにこの問題を解くことは出来ません。

実は、人間関係の問題が常に複雑で厄介な問題だと感じられる原因もここにあります。自分自身が相手に与えている影響を把握することが、そもそも困難なのです。

自分自身が相手に与えている影響を把握することが出来る人のことを、「自己認識が高い人」といいます。自己認識は、自分が周囲に与えている影響を周囲の人達から教えてもらうことによって高めることが可能です。

信頼できる人に自分がどのような影響を周囲に与える傾向があるかを聞くのが、すぐにできる有効な方法です。

このようにして手に入れた自分自身の傾向から、関係を修復させたい相手に与えている影響について考えてみることが出来るからです。

あなたが相手に与えている影響を知ろうとするプロセスで、急に相手の状態を理解できる瞬間が訪れることがあります。これが関係修復のための大きな前進となるのです。

2つ目のポイントは、人間関係の修復は必ず「双方向」で行われるということです。

双方向(interactive)の語源は、「inter-(相互に)」+「active(自発的)」です。

いくらあなたが相手との関係修復に向けて自発的に働きかけたとしても、相手が関係修復にreactive(受動的)であれば、なかなか解決には向かいません。

関係修復は、あなたも相手も「この関係をより良いものにしたい」と「共に主体的」、すなわち双方向で行われることによって成功するものなのです。

たとえば、こんな風に相手に切り出してみてはどうでしょうか。

「私達の関係について話したい」と。

「私」や「あなた」を主語にするよりも、あなたと相手の間に「関係」というテーマを置いて話そうとすることは、お互いが主体的に解決へと向かう可能性を高めます。

ご紹介した2つのポイントは、いずれも少し勇気がいることですがやってみる価値は十分にあるでしょう。

なぜなら「自己認識が高い」ことや「双方向のコミュニケーション力が高い」ことは、そもそも優れたパフォーマンスを発揮するリーダーが共通して備えている要素でもあるからです。

ウォールディンガー教授の研究では、「50歳で最も幸せな人間関係にいた人が80歳になっても一番健康だった」ことが分かりました。

今のあなたの人間関係は、将来のあなたの幸せと健康状態、そして寿命を決める可能性があるのです。

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【参考資料】
※1 TEDトーク Robert Waldinger
※2 ロン・フリードマン (著)、月沢 李歌子(翻訳)、『最高の仕事ができる幸せな職場』、日経BP社、2015年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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