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リーダーは対立を創り出す

リーダーは対立を創り出す
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「対立する意見は、どうしたら出てくるのでしょうか?」

クライアントのこの一言で、コーチングセッションが始まりました。

詳しく聞くと、クライアントの会社では経営チームで何かを議論する際、互いに追認する意見ばかりが出るのだそうです。

クライアントは続けます。

「経営スピードは上ってはいます。が、議論がしつくされている感がない。何か、とても大事なことを見落としたまま、意思決定をしてしまっているのではないか? 時々、そんな不安がよぎるんです」

対立する意見がほとんど出ず、同意や追認の声ばかりが出てくる。

みなさんもリーダーとして、一度は感じたことがあるかもしれません。

なぜ「全会一致」は起きるのか?

「対立の意義」というテーマでTEDのスピーカーを務めたマーガレット・ヘファナン氏は、「全会一致とは、参加者が真剣に考えていなかったことを意味する」と述べています。

人はそれぞれ異なるはずですから、100%同じ意見や考えを持っていることはあり得ない、ということなのでしょう。

だとすると、その場の全員が自分の言葉で、自分の考えを述べていれば、人数分の異なる意見や考えが並ぶことになります。

さまざまな意見が出た上でリーダーが決めることができていれば、先ほどのクライアントのような不安は薄らぎ、「より良い意思決定」をできる可能性が高くなります。

一方で、ヘファナン氏は、次のようにも触れています。

「欧米の企業の重役を調査した結果、85%が、仕事で提起したくない問題や悩み事を抱えていることがわかった。起こりうる対立への心配や、どうすればいいかわからない議論へ巻き込まれることへの不安がある」と。

人間は、脳の構造上、互いの共通点を見つけることで効率よく動こうとするようです。自分の考えを脇におき、相手の考えとの共通点を無意識にも見つけようとしているのかもしれません。

作家伊坂幸太郎さんの本の一節にも、面白い表現がありました。

「言葉は、頭の中の上司の決裁をいくつももらった後でようやく外に出ていくようなものだからね。人間は正直になれない」

「The Science Behind Telling the Truth」の著者Mark Murphy氏は、「人は、『(あることに)反対する』あるいは『ネガティブな情報を聞く』のが好きではない」と言っています。

これらからもわかるとおり、「対立意見を出す」のは、人にとって難易度の高いことのようです。

では、リーダーはこの「難易度の高いこと」をどのように乗り越えていけばいいのでしょうか?

ソ連崩壊を予測させたもの

CIA長官の特別補佐や国家情報会議の副議長を務めたハーブ・マイヤー氏は、ソ連の崩壊を世界で初めて予測したひとりです。

彼の仕事は、各国から集まる情報を評価することでしたが、自分に寄せられる調査結果が、「冷戦は依然として続いている」「ソ連の軍事力に衰えは見られない」など、常識を追認する内容ばかりであることに不安を感じます。

そこで、「もし今の常識的な認識が真実ではなかったとしたら、CIAにはどんな情報が寄せられるだろう?」という問いをたて、ソ連が崩壊しかけている場合に起こりうる現象を自ら書き出し、それを現場に送ったのです。その結果、ソ連の崩壊につながる事象を見つけることに成功したと言います。

同じような意見しか出てこないなら、あえて「対立意見を出すための問い」をする。

ソ連崩壊を予測するエピソードからは、こんなことが言えるのではないでしょうか。

ただ、リーダーが「何か対立する意見はないか?」とそのまま聞いたとしたら、どうでしょう。この質問に対立意見が出てこないことくらいは、みなさんも容易に想像がつくでしょう。

そこには工夫が必要です。対立する意見を相手が自由に言えるよう、「質問の戦略」を用意しておく必要があります。

「もし、これとは間違いなく異なる考えがあるとしたら、どんな考えがあるだろうか?」
「もし、競合が同じ課題に遭遇したら、どのような意思決定をするだろうか?」

このような質問の仕方を、「if質問」と言います。

「仮の状態」を想定した質問であるため、話しやすさが生まれます。

「もし自分たちが間違っていたとしたら、どんなことがあり得るだろうか?」

ハーブ・マイヤー氏が立てたこの問いも、まさにこの「if質問」でした。

私自身は、コーチングで「もし、"あなたにしか"思いついていない考えが"必ずある"としたら、それは何でしょうか?」という質問をするのが好きです。

クライアントは、少し驚いた表情をしながらも、じっくり考え始めます。

そして「"私にしか"どうかはわかりませんが」という前置きと共に、ご自分の考えを楽しそうに話してくださるという体験を何度もしました。

マーガレット・ヘファナン氏は、「CEOの42%が、職務の中で最も自信がないのは、衝突を解決することだと答えている」と言っています。

リーダーが「仮の状態」を想定した質問を増やし、この数字が1%でも2%でも下がれば、世界は変わるのかもしれません。

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【参考資料】
・マーガレット・ヘファナン(著)、 鈴木あかね(翻訳)、『小さな一歩が会社を変える』、朝日出版社、2017年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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