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"一日保育士"になって学んだ関係性の作り方
コピーしました コピーに失敗しました今日から2020年度が始まりました。
新型コロナウイルスの影響に世界が大きく揺れる中ですが、組織に新しい風を吹かせてくれる新卒社員が入社したり、新体制がスタートしたりする企業も多いかと思います。
組織の中に新しい関係性が生まれ、変化する時。
リーダーのみならず、誰にとっても他者との関係づくりに目を向けざるをえない時なのではないでしょうか。
子どもの関係性 vs. 大人の関係性
私の息子は、保育園に通い始め今日で丸5年になります。
最近、帰宅後に保育園での様子を聞くと、毎日違う友だちの名前が、しかもたくさん出てくるようになりました。
話のつじつまが合っていないように感じた私は、息子がどんな様子なのかが気になり、保育園にお願いして、“一日保育士”を体験することにしました。
朝礼が終わり、先生から30分間の自由時間がアナウンスされるや、子どもたちはあれこれ相談しながら動き出し、クラスの中には遊びごとに分かれた5つのグループができあがりました。
驚いたのは、その後です。
5分もたたないうちに、グループの構成が目まぐるしく動き出しました。
グループが大きくなったり、小さくなったり、メンバーが一人ずつ代わったり、一気に全員が入れ替わったり。さっきまでとても仲良くしていた相手に、急にそっけなくなったり、ケンカしたばかりの相手と新しい遊びで楽しそうに遊んでいたり。
子どもたちのこのダイナミックな様子は動画でお見せしたい程ですが、私の想像をはるかに超えたスピードで、刻々と「関係性」が変化していくのです。
・グループに入りたい時は「僕も入れて」とはっきり言葉で言う
・言われたら、とりあえず「いいよ」と即答する
・飽きたり、楽しくなくなったりすると、自分から別のグループへ移る
・遊びに必要な人数が足りないと、すぐに大声で募る
・一人で遊んでいる子をそっとしておく(特に心配しない)
・ケンカしても、ランチタイムには隣同士に座って楽しそうに食べている
このような仲間たちですから、息子の話に一緒に遊んだ友だちが何人出てきてもおかしくありません。
保育園は、「自分はこれがやりたい」という主体化された意志で満たされた場だったように思います。その意志を誰も邪魔していないことが、関係性づくりに自由とスピードをもたらしているキーのように私には見えました。
大人の世界では、なかなかこうはなりません。
軽やかに、躊躇なく、関係性を変化させる彼らの行動を観察しながら、大人である我々が、いかにしがらみやエゴ、プライドによって「関係性を変化させる」ことに躊躇しているか、関係性づくりのスピードを落としているか、に思いを巡らせました。
大人はなぜ、関係性を変えられないのか?
私たちコーチ・エィのミッションは、「関わりの可能性を、ひらく。」です。
関係性を変化させ、組織の中に新しい関わりを創り出そうとするとき、私たちは、知らず知らずのうちに「関係性を変えるのは時間がかかる」とか「関係性は複雑なものだ」とか、「人と人との関係性を扱うことは厄介なことだ」といったことを前提にしていないでしょうか。
この前提こそが、厄介なことにさせている元なのかもしれません。
どうすれば関係性を変えられるのか?
まずは、「関係性を変えるためには特別なことが必要である、時間がかかる」という思考を解放し、その前提を疑ってみることから開始したほうがよさそうです。
保育園児たちは
「関係性はすぐに変えられる」
「失敗したら、またすぐに築きなおせる」
ということを教えてくれました。
「私は何がやりたいのだろうか?」
「誰と一緒にやりたいのだろうか?」
シンプルなこの問いに向き合い、子供たちが軽やかに「僕も入れて」「いいよ」「一緒にやろうよ」と誘い合うように、自分から声をかけてみる。
新しい関係性を築きたい相手にも、これまでの関係性に変化を起こしたい相手にも、自分から一歩を踏み出してみる。
リーダーにとって、年度初めに必要なのは、完璧に準備した堅苦しい挨拶ではなく、「これがやりたいんだ、一緒にやろう」という一言かもしれません。
結果は分かりませんが、できる能力は備わっているはずです。
私たちも、その昔、子どもだったのですから。
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