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変えられぬ状況を、いかにして変えるのか

変えられぬ状況を、いかにして変えるのか
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これから私たちはどうなるのでしょうか?

新型コロナウイルスによって、私たちの生活は随分と制限されるようになりました。そしてこの状況がいつまで続くのか、更に悪化するのか、はたまた遠くない未来に好転するのか、そんなことも全く分からない状況となっています。

家族や自分、そして周囲の人たちの健康や命をどう守ればいいのでしょうか。

組織や会社をどう持ちこたえさせたらいいのでしょうか。

あまりにも答えがはっきりせず、自分でコントロールの出来ることにも制限があるように感じます。

こんな状況を突然背負うことになった私たち。

仮に、これがある程度長く続くとしましょう。この不確定要素が沢山あると感じられるこの状況は、長期的に私たち一人ひとり、そして組織のパフォーマンスにどの様な影響を与えるのでしょうか?

確実性を欲する脳

話は少し変わりますが、こんなことはないでしょうか。

どこからか聞こえてくるピアノの音色、思わず聞き入りその旋律を自分も頭で追い始める。

しかし突然、ピアノの奏者が間違ったキーを叩き、思わず心が乱されるようなこと。

映画で主人公が途中様々な苦難に見舞われ、はらはらドキドキしながら展開を見守る。最後はハッピーエンドと思いきや、そうでなかった時に何となく納得のいかない気持ちが残るようなこと。

「ニューロリーダーシップサミット」の創設者で『最高の脳で働く方法』の著者デイビット・ロック氏は、私たちの脳は常に物事を予測し、それが予測した通りに起きると、報酬の感覚が得られるようになっている、と言います。

前述のケースでは、予測とは異なる結果となり、脳が事前に欲した報酬を得られなかったために心が乱れたり、納得いかない気持ちになったりしたのです。私たちの脳は物事が予測した通り起きること、つまり確実性を常に欲しています。

では、仮に確実性が得られない状況が長く続くとどうなるのでしょうか。

ロックによると、確実性が得られない感覚は私たちの脳にある大脳辺縁系の強い反応を引き起こすのだそうです。そしてこの大脳辺縁系の過度な活性化は次のような状態を引き起こすとしています。

  • 思考力が低下し、最もやり慣れたことをする自動操縦モードになる
  • 自己認識、自己コントロール力が落ちる
  • さらなる危険を警戒し、リスクを取らなくなる

これらは、今どの企業や組織においても、コロナの状況下であってもなくても、避けたい状態ではないでしょうか。

「捉え方」で状況を変える

こうした不確実な状況にありながら、社員に普段以上の力を発揮させることが出来る方々がいらっしゃいます。

私のクライアントにも、たくさんいらっしゃいます。そうした方々の共通点を私なりにあげると、厳しい状況であっても「明るく、前向きだ」ということです。

それはどこから来るのでしょうか。

「いい勉強させてもらっています」
「こんな時だからこそ、やれることがあるんです」
「ピンチこそ、変わるための絶好の機会ですよ」

こんなことを口々に言うわけですが、要するに「ピンチをチャンス」だと捉えているわけです。

口だけではありません。その表情や語気からもその方々が本当にそう信じているのだと伝わってくるものがあります。

前述のロックは、これを「出来事の再解釈」と呼んでいます。

つまり、捉え方を変えることによって、脅威を感じる出来事を脅威でない、と判断するものです。

ポジティブな「再評価」をすると、前頭前皮質のある部分が活性化し、それに伴って、思考や自己コントロール力に影響を起こしていた大脳辺縁系の活動が低下するのです。

長期化する困難、二度と同じではない未来

皆さんの組織メンバーには今、どんな兆候が表れているでしょうか。

在宅になったり、対面からメールや電話といったコミュニケーション手段が大きく変化する水面下で、パフォーマンスや言動、心情にかすかな変化が現れていたりはしないでしょうか。

私自身も自分の胸に手を当てて考えてみると、「どうなるのか分からない」という思考が、新しいことを考えようという思考にブレーキをかけている気がしています。

確実性の得られない今の状況に、不安やちょっとしたいら立ちを感じたりもしています。

皆さん自身、そして皆さんの部下はどんなことを今感じ、実はどんな変化をしつつあるのでしょうか。

最近私のクライアントが「こんな時だからこそ、コーチと話せる時間があってよかった」と仰ってくださいました。

目の前の対応に追われる中、立ち止まって長期的な視点で、組織やメンバーの事を考える時間も相手も、なかなかいないのだそうです。

この状況は、この先長期化する可能性もあります。長期化すればするほど、わずかな変化も積み重なり、気づいたら大きな違いを生み出しているかもしれません。

それがポジティブな変化の積み重ねなのか、ネガティブな変化の積み重ねなのか、結果は大きく異なると思います。

コロナが終息した後にたち現れる日常は、もはやかつての日常とは違ったものになると予想しています。いわゆるニューノーマルです。

とても緊急な問題のすぐ隣に、実は「緊急ではないけどとても重要な問題」が横たわっています。長いトンネルの向こうに広がる未来を、変え始めるのは今なのかもしれません。

この状況をどうとらえなおすことが出来るでしょうか?

こんな時だからこそやれることは何でしょう?

その話を誰としますか?

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【参考資料】
デイビッド・ロック(著)、矢島麻里子(訳)『最高の脳で働く方法 Your Brain at Work』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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