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イノベーションを起こすのはこんなリーダーシップかもしれない

イノベーションを起こすのはこんなリーダーシップかもしれない
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私が駐在している上海では、新型コロナウイルスの感染拡大も収束し、日常を取り戻しつつあります。

一方で、中国国内では1~3月の第一四半期に、46万社が倒産、約230万人が失業したとも報道されており、周囲の中国人からは経済に対する先行き不安に関する声が多く聞かれます。

これまでの延長線上では勝ち残ることができないと考え、ポストコロナに向けて多くの中国企業が様々な変革を起こし始めており、シュンペーターの言う「創造的破壊」が次々と起きていると感じます。

この世界的危機が始まる前からその必要性を認識しつつも、なかなか足を踏み出すことができずにいたイノベーション。しかし、この状況に直面し、足を踏み出さざるを得ないと考えている方も多いのではないでしょうか。

では、イノベーションを起こすために、リーダーには何が求められるのでしょう?

答えがわからないことに向き合う覚悟

先日、私のクライアントであった日本人駐在員Aさんが、5年の駐在期間を終えて、無事に帰国されました。

帰国前に、駐在期間中のご自身の一番の変化についてうかがったところ、「覚悟を決める度胸がついた」とのこと。Aさんにとって「覚悟」とは何かを聞いたところ、しばらくの沈黙の後、「何だろう?」の一言。

そして、思っていること、考えていることを言語化しながら、Aさんの探索が始まりました。そして、30分ほど話した後、「答えがわからないことに向き合う覚悟じゃないかな」と、はにかむようにおっしゃいました。

そこから、Aさんと私の二人で、過去のセッションを振り返りました。

答えのある場所

駐在着任当初、Aさんは自分の知識、経験を伝えるのがミッションだと思っていました。

部門長として、ローカル新市場の開拓に向け、赴任直後にビジョンを示し、目標を掲げ、やる気に満ちていた。

しかし、1年、2年と過ぎる内に何か違和感を覚えるようになった。全て描いていた通りにいくとは思っていなかったが、成果が出ない。

部下たちには、毎日のように指示、命令、アドバイスしてきたが、何を伝えればいいのかわからなくなっていた。

良くも悪くも、変える、まずやってみるという点で非常に変化のスピードが早い中国。キャッシュレス、シェアサイクル、タクシーアプリ、フードデリバリーなど、身の回りの生活だけでも全く想像していなかったことが、あっという間にあたりまえになる。

ある日のコーチングの中で、私はAさんに、

「Aさんが手にしたいと思っている答えとはどこにあるんでしょうかね?」

と問いかけました。

その時、Aさんが口にしたのは「そもそも答えなんかないかもしれない、答えは探していくものだ」ということ。

さらに、

「誰とその答えを探すとよさそうですか?」

と聞いたところ、その後、Aさんは思い切って部下に聞いてみたそうです。「中国のことをもっと教えてもらえないだろうか?」と。

最初、中国人の部下たちは驚いたものの、部下の一人が、Aさんのために勉強会の定期開催を提案してくれました。

最初は三人で始まった勉強会でしたが、テーマによって誰に聞くといいかで盛り上がり、回を重ねるごとに人数が増え、他部署の中国人メンバーまでが参加するようになりました。そして、様々なアイデアが出て、市場開拓への新たな動きも出るようになったとのこと。

この時、Aさんは気づいたそうです。

「リーダーは答えをもっていなければいけないと思っていたが、必ずしもそうではない」ということに。

リーダーシップを問い直す

Aさんには、リーダーたるもの未来を示し、引っ張っていくものだという前提がありました。そして、自分の持つ限られたリソースのみでビジョンを作り、部下に指示をするというルーティンを繰り返していた。

しかし、そのままではAさんの器以上のものは生まれません。

ハーバードビジネススクールのリンダ・A・ヒル教授は、その著書の中で次のように語っています。

「イノベーションが生まれやすい組織を築きたければ、多くのリーダーはまず自分の役割を考え直したほうがいい。」(※1)

「本物のイノベーションを促すのであれば、リーダーらしさの核だと一般に思われている『わたしについてこい。わたしが進むべき道を示す!』という態度を真っ先に捨てなくてはならない。どうすればメンバー全員からイノベーションを引き出せるかという発想に切り替える必要がある」(※2)

自分の考えるリーダーシップの前提に気づくことができたAさんは、それを変化させることができました。

しかし、あたりまえだと思っていることに自ら気づくことは、なかなか難しいのではないでしょうか。自分という個人だけでなく、チーム、組織の中でもあたりまえとされているリーダーシップがあるかもしれません。

しかし、あたりまえなので、そのことに気づくのはなかなか難しいものです。

色に染まっていない外部の人に聞いてみるのもいいかもしれません。私たちコーチも、その外部の人間の一人です。

* * *

最後にAさんは言いました。

「日本に戻ったらまた違うリーダーシップが機能するかもしれない。答えはわからないけれど、それを探してみたい。そう思えるようになったことが駐在期間での一番の収穫かもれない。」と。

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【参考資料】
※1、※2 『ハーバード流 逆転のリーダーシップ』(日本経済新聞社)リンダ・A・ヒル他(著)、黒輪篤嗣(訳)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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