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対話する能力

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コーチング研究所が実施したリサーチに、「上司の関わり方」と「部下の顧客志向性」の関係について考察したものがあります。

92人の上司とその部下を対象にした調査で、部下にあたる1189人を「顧客志向性の高い群」と「顧客志向性の低い群」に分けて分析したところ、次のような結果が出ました。

■「上司からの関わり」が部下の「顧客志向性」の向上に有意に影響を与えている項目トップ5

  1. 部下の業務推進のための会話の時間の確保
  2. 部下に気づかせたり、自発的に考えさせたりする質問
  3. 部下の目標の進捗に関するフィードバック
  4. 部下から忌憚のない意見を十分に引き出す
  5. 部下にとって話しやすい・相談しやすい雰囲気

この項目をまとめると、部下の「顧客志向性」の向上に影響を与えるのは、上司が部下にフィードバックをすることにプラスして、部下が上司に対して「自分の思ったことを自由に話す」ことができるコミュニケーションと言えます。

上司からの「対話」のセットアップが、自発的な行動、顧客志向の行動を生み出していると、推測できます。

では、実際にはどのような「対話」が起こっているのでしょうか。

「何」が話されているのか

あるリゾートホテルのスタッフから次のようなエピソードを聞きました。

「上司から『これをやればうまくいくからやってください』と、やり方を指示されることはまずありません。その代わり、顔を合わせるたびに、『ゲストに満足してもらうために、何ができると思うか?』と聞かれます。

上司から問われて、どうしたらゲストに満足していただけるか、そのことを日々考えるようになりました。

ゲストの方たちが日々体験していることを知っている必要があると思い、富裕層が購入していらっしゃるものを雑誌で調べたり、地域のミシュランの店を巡ったりしたこともあります。

同僚とも、この上司からの問いを軸に据えてよく話します。たとえば接客の細かいオペレーションについて、とても細かいことまで話し合います。

お互い思いついたことを『私はこう思う』という視点で話すので、時にはぶつかることもありますが、とことん話し合う中でもっと良いアイディアが生まれて、それを具体的に実行していくのは、とてもやりがいがあります」

「対話」をセットアップする

このエピソードからは、スタッフ同士がお互いに自由に話し合える企業文化とも言うべき環境が創り出されていることがわかります。そして、その中では「ゲストに満足してもらうために、何ができると思うか」という「問い」が、上司とも同僚とも共有されています。

共通の「問い」に基づいて、自分の「感覚」や「想い」を自由に話す。
同じ点は何か、違いは何かについて、お互いに話す。

つまり、「主観」を自由に表現し、「対話」する。

組織である以上、何かを決めて、それに向けて行動を起こす必要があります。しかし、決まっている答え、正しい答えがあるわけではないし、上司の経験が正しいわけでもない。ましてや、多数決で出した答えが正しいとも限らないわけです。

我々を取り巻く世界は、ますます、答えのない時代になってきています。

一つの答えがない時代。
正解がわからない時代。
権威や経験などが通用しない時代。

そこで問われるのは、一人ひとりの「感覚」や「想い」です。

「私は、何を感じているのか」「私は、何をしたいのか」という主観。
自分の思っていること、主観を出し合って、一緒に考える。
そして、主観の違いについて、話す。

それぞれが自分の主観を話せば、当然そこには意見の不一致やコンフリクト(対立)が起こるでしょう。コンフリクトを、相手を打ち負かすようなやり方で乗り越えるのではなく、それぞれの主観や想い、アイデアを自由に話し、相手がどのような景色を見ているのかを理解し合う。コンフリクトを避けるのではなく、違いや混沌の中から自らが生み出すものこそが、未来を創るのだと思うのです。

「対話」型の組織文化をつくり、問いを共有する。

組織の中で「対話を創り出す」能力が、新しい時代のリーダーに求められているのだと思うのです。

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【参考資料】
会社へのロイヤリティが高い部下の視点を顧客に向ける関わり(コーチング研究所、調査期間:2011年9月~2019年7月)

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