Coach's VIEW

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「他者に影響される」リーダーシップ

「他者に影響される」リーダーシップ
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私たちは成長する過程で、教育を通じ、自分で問題を定義し、自分で問題に向き合い、自己完結的に解決していく、そういう姿勢や能力を訓練されてきました。

  • 自分なりに課題を整理する
  • 自分なりに全体プランを考える
  • 自分なりに解決策を考え提案する

そして、自ら主導権を持ち、周囲に影響を与えていく。その力が強いほど、「あの人にはリーダーシップがあるね」と評価もされる。

リーダーとして役割を与えられ、難しい課題に直面し、解決の責任を引き受け、常に「では、どう解決するか?」と反芻し続けながら、逃げずに、ぶれずに、不屈の精神で、自己完結的に解答に到達する。

私がコーチングでお会いする経営幹部の大半は、組織の難題に向き合い、「で、どうするのか?」という問いに、向き合い、解決し続けてきた人たちです。

大手メーカーの事業部長であるAさんも、その一人でした。

いままでうまくいってきた方法は、今後もうまくいくのか

Aさんは、事業の細部を知り尽くし、正確な判断力、迅速な決断力、徹底した実行力で周囲から信頼され、2万人のグローバルな組織を率いて、若くして事業トップへと登り詰めました。

コーチングの調査結果からも、Aさん自身の有能さ、強さ、正しさには、全くの疑いがありませんでした。しかし一方で、Aさんの率いる組織における変革に対する社員の参加意欲の低さ、良い仕事をする自信、次のリーダー開発の進捗などに関するスコアは、軒並み低迷していました。

Aさんは、その調査結果を見ながら、気丈に言葉を発しました。

「この結果について、自分なりに分析し、要因を突き止め、どうしていくかを考えます」

凛々しい表情から発せられた、力強い言葉でした。しかし、そのとき、私は瞬間的に違和感を覚えました。

「自分なり」それは、これまでAさんがとってきたやり方と同じではないか? それで、本当にその先に行けるのだろうか? 「どうするか?」という問いは、Aさんにとって right question なのだろうか?

私は、自分の内側で感じた感覚をAさんに共有しながら、伝えました。

「Aさんなりの理解の仕方、そこに限界があるということはないですか? Aさんの理解の仕方をブレイクさせる人は誰でしょうか? この調査結果を、誰と共に議論できそうでしょうか?」

誰かと一緒に考える

今回の結果について「他者を介在させる」、まずそのことにAさんは不快感を覚えたようでした。

「まずは、自分が納得したい...」
「全体との整合性が必要...」

私の提案に対して反論を述べながらも、Aさんは何かを思いついてきているようでした。

「こう言いながら、結局は、自分が一番うまくやれる、と思ってるんですね。それを続けちゃぁ、確かに変わらないな...」

そして、最終的にある女性管理職Bさんの名前を挙げました。

「彼女の視点はいつも新鮮なんですよ。一目置いています」

* * *

Aさんにとって、Bさんとの意見交換は有益だったようです。

「Aさんは細部までわかっている。それについては安心できるが、一方で反論はできない」
「Aさんは質問攻めにしてくるので、つい守りに入りたくなる」
「Aさんの前では、自分がどう役立てばよいかわからない」

そしてBさんは、最後に「私に何ができますか?」とAさんに尋ねたそうです。その言葉は、Aさんの仕事人生において、部下から初めて聞いた言葉だったと言います。

R・キーガンによる成人の発達段階

成人の発達を研究するR・キーガン博士によると、人は心理的発達の過程でいくつかの段階を通過すると言います。(※1)

まずは、環境順応の段階。

これは人が恐れや不安、依存から行動を起こし、仲間から受け入れられること、仲間に順応することが最優先の段階です。

次いで、自己主導の段階。

ここは、不健全な依存から健全な自立に移る段階です。自意識の発達が見られ、自分の世界観や目標や課題はあるものの、自分のものの見方・偏見が限界を創っています。

そして最後の段階が、自己変容の段階です。

この段階に達すると、自己変容に協力的な人間関係をもち、新しいことや変化を受け入れ、見解やアイデンティティを再構築し、自己拡張していきます。但し、自己変容段階に到達する人は、たったの10%であり、変容をもたらす人間関係もこの段階の人同士の間で起こるといいます。

「自己完結 × HOW」から「他者の介在 × WHO」へ

自身の限界を認めながら、他者の視点を介在させ、自己主導を手放し、自己変容に心を開いていく。

「自分は、どう考えるか?」という「自己完結 × HOW」の視点から、
「あなたならどう考える?」という「他者の介在 × WHO」の視点へと変化していく。

今回のBさんとのやりとりを通じて、私には、Aさんが段々としなやかになっていくように感じられました。

「以前は、自分の思ったようにならないことが不安でした。今でもときどき以前のやり方に戻したくなるし、まだ実験です。ただ、最近では、みんなから意見が出てくるようになったし、自分がそれを聞いていることが増えています」

だからと言って、Aさんの求心力は変わりません。依然として、Aさんからは明確なビジョンも力強さも感じます。それと並行してAさんは、自分の考えや決定のプロセスに他者に介在させ、他者から影響されることを受け入れる、そんな一種の脆弱さをも取り込み始めているようでした。

リーダーシップには「他者から影響されること」、そういう視点があることをAさんは気づかせてくれました。

あなたに気づきを与えてくれる人は誰でしょうか?
あなたの変化に向けて、誰に影響されたいでしょうか?

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【参考資料】
※1 加藤洋平(著)『成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法』日本能率協会マネジメントセンター、2017年
ダン・サリヴァン (著), ベンジャミン・ハーディ(著)、森由美子(訳)『WHO NOT HOW 「どうやるか」ではなく「誰とやるか」』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2022年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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