Easterliesは、日本語で『偏東風(へんとうふう)』。「風」は、外を歩けばおのずと吹いているものですが、私たちが自ら動き出したときにも、その場に「新しい風」を起こすことができます。私たちはこのタイトルに、「東から風を起こす」という想いを込め、経営やリーダーシップ、マネジメントに関する海外の文献を引用し、3分程度で読めるインサイトをお届けします。
リーダーがパーパスを「伝える」こと、「聞く」こと
2021年07月11日
パーパスを持つとはどういうことか
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、2018年に発表した記事の中で、「組織のパーパスを自分事にしている従業員がより高いパフォーマンスを発揮することが分かっている」と述べている。
"Making work meaningful: A leader's guide(※1)"
では、どのようにして従業員は、組織のパーパスを自分事化できるのだろうか。
記事の中では、マネジメント手法として、4つの具体策が取り挙げられている。
- 匿名性を排除し、お互いが相互に与えている影響を知ること
- 顧客への影響に関する手触り感を持たせること
- 良い仕事をしている人に「気付き、承認し、称える」こと
- 日々の仕事をより大きなゴールとつなげること
このようにして、徐々に各々の中で、仕事に対する自分なりの「意味づけ」が出来あがっていくのだという。
しかし、2020年12月に同社が発表した記事には、このようなことも書かれている。
「トップチーム内で考えられたパーパスは、従業員が思うパーパスとは必ずしも一致しない」。
"Purpose, not platitudes: A personal challenge for top executives(※2)"
そのため、「対話」を通して、まずはその違いを認識する必要があるという。
要するに、各々の従業員が組織のパーパスに対して抱いている解釈について、まずは「聞く」ことがリーダーに求められているというわけである。
どのように聞くのか
「聞く」とは、どういうことなのか。
ここで、アメリカの経済誌「The Economist」で紹介された、人質交渉人による「聞く」スタンスが、ヒントになるかもしれない。
人質交渉人は、犯人と面と向かって対峙する。
彼らは、単にじっと黙って相手の要望を聞き入れるのではなく、対話を続けながら、相手の価値観や情を表すシグナルを探っていくのだという。
"The secrets of successful listening(※3)"
彼らは、相手の発言から感じた自分自身の解釈を持ち込み、相手に確認を取りながら、話し続ける。
双方向にやり取りを続ける中で、相手が真に欲していることは何かを探っていくのだ。
上記は少々極端な例だが、犯罪者に限らず、人間は誰しもそれぞれに「求めていること」がある。
組織のリーダーである私たちは、得てして、周囲にパーパスを「伝えよう」と努力するだろう。
しかし時には、「伝える」のではなく「聞く」ことに徹してみても良いのかもしれない。
相手が何を大切にし、なぜ今ここで働き続けているのか?
どんな想いを持って日々仕事をしているのか?
私たちはリーダーとして、部下の話のどのようなところに耳を傾けているだろうか?
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【参考文献】
※1 Dan Cable, Freek Vermeulen "Making work meaningful: A leader’s guide", McKinsey Quarterly, August, 2018
※2 Arne Gast, Nina Probst, Bruce Simpson, "Purpose, not platitudes: A personal challenge for top executives", McKinsey & Company December, 2020
※3 The Economist Group Limited, "The secrets of successful listening", The Economist, January 21st, 2021
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