Easterliesは、日本語で『偏東風(へんとうふう)』。「風」は、外を歩けばおのずと吹いているものですが、私たちが自ら動き出したときにも、その場に「新しい風」を起こすことができます。私たちはこのタイトルに、「東から風を起こす」という想いを込め、経営やリーダーシップ、マネジメントに関する海外の文献を引用し、3分程度で読めるインサイトをお届けします。
急激な時代の変化における、「Empathy (感情を理解する力)」の重要性
2021年08月15日
Empathyとは何か
今年4月、Harvard Business Reviewは、ある問いを読者に投げかけた。
急激に変化するこの時代において、「マネージャー」の役割とはどのようなものであるべきか。
"What Does It Mean to Be a Manager Today? (※1)"
この記事の中で紹介されているのは、ガートナー社がグローバル企業における4,787人の従業員を対象に行った調査結果である。
中堅企業のHRリーダーのうち85%が、管理職の「エンパシー(Empathy)」がパンデミック以前よりも重要になると回答したという。
「エンパシー(Empathy)」という言葉は、日本語で「共感」や「感情移入」と訳されるが、必ずしも相手と同じ感情を抱くことを意味するわけではないようだ。
この記事の指し示す、高いエンパシーを示すマネージャーとは、「相手の行動や振る舞いの背景にある文脈を理解できる人のこと」であり、この能力こそが、「エンパシー(感情を理解する力)」として、不確実性の高い、変化する時代のマネジメントに求められる。
実際に、高いレベルのエンパシーを示すマネジャーは、低いエンパシー・レベルを示すマネジャーと比べて、従業員のパフォーマンスに3倍近くの好影響を与えていることが調査で明らかになったそうだ。
では、私たちはどのように他者の感情を理解し、どのようにその力を高めることができるのだろうか。
感情についての新たな理解
感情に関する研究の第一人者であるLisa Feldman Barrett氏が昨年11月に出版した書籍によれば、「私たちは、感情が「表情」に表れ、客観的に認識できるものであると誤解している」。
"Seven and a Half Lessons About the Brain (※2)"
人間の脳は、相手の表情から受け取った視覚的情報をもとに、自分の過去の経験や文化的背景、相手についての情報や会話の文脈に照らし合わせて、感情という意味を勝手に見出し、推測しているのだそうだ。
その上、その情報の正確性に自信を持ってしまうという。
要するに、感情とは、実にステレオタイプ化しやすい領域であることが明らかである。
私たちは、常に、相手の感情を理解できていないという前提から、好奇心をもって相手の体験を聞き、「今何を感じているのか」について話していく必要があるのかもしれない。
自分の感情を言葉にする
さらに本書の中で彼女は「感情知能 (EQ)」について触れており、それが表情を見て感情を推測する力のことではなく、どれだけ感情を表す言葉を持っているかという話であると強調した。
感情に関する言葉を多く知っているほど、脳が多くの感情を認知することができるようになる。
感情に関する言葉の多様性が、自分や他者の感情の理解やコントロールに役立つ、という。
このことから、何が言えるだろうか。
これからのリーダーは、部下や周囲の感情を理解するためにも、まずは自分自身の感情と真摯に向き合い、それを言葉にする力を鍛えていく必要があると言えるだろう。
これまでEasterliesでは「他者の話を聞く」ことの重要性について触れてきたが、今月は、少し立ち止まって自分の声にじっくりと耳を傾けてみてはどうだろうか。
あなたには今、何が見えているか。何が聞こえているか。何を肌で感じているだろうか。
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【参考文献】
※1 Brian Kropp, Alexia Cambon, and Sara Clark "What Does It Mean to Be a Manager Today?", Harvard Business Review, April, 2018
※2 Lisa Feldman Barrett "Seven and a Half Lessons About the Brain", Houghton Mifflin Harcourt, November, 2020
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