Easterliesは、日本語で『偏東風(へんとうふう)』。「風」は、外を歩けばおのずと吹いているものですが、私たちが自ら動き出したときにも、その場に「新しい風」を起こすことができます。私たちはこのタイトルに、「東から風を起こす」という想いを込め、経営やリーダーシップ、マネジメントに関する海外の文献を引用し、3分程度で読めるインサイトをお届けします。
「コンフリクト」を扱うとはどういうことか?
2021年10月10日
「コンフリクト」を扱う能力
「コンフリクト(対立)」という言葉を聞くと、あなたはまず真っ先に何を感じるだろうか。
コンフリクトとは、「意見の不一致」を意味する言葉であり、それ自体は、ネガティブな性質も、ポジティブな性質もはらんでいない。
しかし、「他者との対立が起きると嫌なストレスがかかる」「できれば避けたい」、そう思っている人は多いだろう。
それには、過去に経験した出来事が影響しているかもしれない。
しかし、Forbes誌「5 Keys of Dealing with Workplace Conflict(※1)」には、次のようにある。
「コンフリクトを認識し、その性質を理解し、迅速かつ公正に解決する能力がなければ、リーダーとしての破滅につながりかねない」
少し極端にも聞こえるが、リーダーにはコンフリクトを扱う能力が不可欠であることがうかがえる。
では、実際にどれだけのリーダーがコンフリクトを扱う能力を持ち合わせているのだろうか?
「意見の不一致」
ハーバード・ビジネス・レビューにおけるある調査(※2)では、ほとんどの人が職場で対立が起きそうな時に「反対意見を述べることを避け、伝え方も分かっていない」と感じていることが分かった。
この記事の執筆者は、次のような興味深い体験を語っている。
彼女は、若きコンサルタント時代、クライアントに対する文句を、誤ってクライアント自身に送り付けてしまったという。
なんとも苦い体験である。
彼女が意を決して謝りに行くと、「意見が違うときは言ってくれれば良いのに」とあっさり笑い飛ばされたという。
「コンフリクト(意見の不一致)」を過剰に重く受け止めず、建設的なフィードバックとして、軽やかに伝えほしい。
このクライアントは、そう彼女に求めたのだろう。
もちろん、これは寛大なクライアントに恵まれた事例である。
もし今、あなたが見て見ぬふりをしていることがあるとしたら?
英語では、「Elephant in the room(部屋の中にいる象)」というユニークな表現がある。
部屋の中に象がいることを、誰もが見て見ぬふりをして放置したらどうなるだろうか。
いつか全員踏みつぶされてしまうだろう。
このような「指摘されるべき重要な問題」のことを、不測の事態を表す「Black Swan(黒い白鳥)」とかけて、「Black Elephant(黒い象)」という。
コロナパンデミックも「Black Elephant」の一例だ。
パンデミックが到来する可能性について予測はされていたものの、企業経営上のリスクとして話題に上がることはほとんどなかった。
その結果、いざ世界にパンデミックが襲い掛かると、世界中の経営が大混乱に陥った。
同誌の「How Boards Can Plan for the Disasters That No One Wants to Think About(※3)」は、「黒い象」を話題にすることは、適切なリーダーシップがあってこそ実現できる「能力」であり、このような力を持ち合わせたリーダーを育成することが、「取締役会の最優先事項の一つであるべきだ」と主張する。
要するに、ある緊張状態がもたらされることを承知の上で、「誰もが気づきながら、まだ触れられていない問題に言及する」という能力が、真のリーダーに問われていることと言えるだろう。
あなたの職場には、勇気を出して「黒い象」を扱える人はどれくらいいるだろうか?
また、あなた自身は、どのくらいコンフリクトを扱えているだろうか?
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【参考文献】
※1 Mike Myatt, "5 Keys of Dealing with Workplace Conflict", February 22nd, 2012
※2 Amy Gallo "Why We Should Be Disagreeing More at Work", Harvard Business Review, January 3rd, 2018
※3 Seymour Burchman and Blair Jones "How Boards Can Plan for the Disasters That No One Wants to Think About", Harvard Business Review, September 4th, 2020
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