Easterliesは、日本語で『偏東風(へんとうふう)』。「風」は、外を歩けばおのずと吹いているものですが、私たちが自ら動き出したときにも、その場に「新しい風」を起こすことができます。私たちはこのタイトルに、「東から風を起こす」という想いを込め、経営やリーダーシップ、マネジメントに関する海外の文献を引用し、3分程度で読めるインサイトをお届けします。
リフレクションの価値を上げる
2021年12月19日
「自分のための時間」の希少価値
私たちは普段どれだけ自分の学習のために時間を使えているだろうか。
ハーバード・ビジネススクールが実施した研究によれば、アメリカのCEOの典型的なスケジュールでは、「1人で仕事ができる」時間は、たった15%だけということがわかった。(※1)
フォーチュン500企業の重役に対する調査でも彼らが、自分の「開発」に費やす時間は、1日わずか30分、しかも大抵が、「夜遅くになってやっと可能」という結果となった。(※2)
CEOでなくとも、同じような状況に心当たりがある人は多いだろう。
その限られた時間を私たちは、どれだけ有意義な時間にできているだろうか。
学習スピードを低下させる「反省」
学習において、振り返り、つまりリフレクションが重要であることは言うまでもない。
LinkedInのCEO、Jeff Weiner 氏は、毎日、90分~120分をリフレクションのために確保しておく。
彼にとって、この時間は「深い思考 (reflective thinking)」の時間だという。(※3)
では、その時間の中で一体何を思考するのが良いのだろうか。
スタンフォード大学の心理学者によれば、
- 私は十分うまくやれているのだろうか?
- 失敗しないだろうか?
といったネガティブな問いは、あっという間に、 私たちの 「新しく何かを学習する」能力を奪い取ってしまうのだという。(※4)
より有意義なリフレクションの時間を作り出すためには、どのような問いが効果的なのだろうか。
「考えること」 について 「考える」
その問いのヒントになる考え方が、「メタ認知(metacognition)」だ。
「メタ認知 」とは、自分が「知っていること」を「どのように知っているか」について「より注意深く」いることである。
ある研究によれば、「何か新しいことを学習する」とき、飛び抜けてIQスコアが高い人よりも、自分自身の「思考」を注意深くトラッキングする人の方が、「新しいことを学習する能力」が高かったという。(※5)
- 自分 は、この考えを本当に理解しているのだろうか?
- 友人に、説明できるだろうか?
- 私のゴールは、何なのだろうか?
- もっと背景についての知識や練習が必要だろうか?
このような問いを持つことで、私たちは、自分が体験したこと、経験したことから、常に新しいことを学ぶ機会を自ら創出することができるのかもしれない。
もちろん、年末やプロジェクトの終了時など節目に振り返りを行うことも、有効ではあるだろう。
しかし、もし、私たちが習慣として毎日リフレクションの時間を取り、自分や周囲の環境について、新しいことを学び続けることができたら、私たちはどのような未来を作ることができるだろうか。
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【参考文献】
※1 Oriana Bandiera, Luigi Guiso, Andrea Prat, and Raffaella Sadun “What Do CEOs Do?”, Harvard Business School, Working paper, 2011 Feb.
※2 CMOE Design Team, “How Leaders Spend Their Time”, Center for Management & Organization Effectiveness, Blog
※3 Martin Reeves, Roselinde Torres, and Fabien Hassan, “How to Regain the Lost Art of Reflection”, Harvard Business Review, 2017 Sep.
※4 Bandura A1, Locke EA, “Negative self-efficacy and goal effects revisited.” , J Appl Psychol. 2003 Feb;88(1):87-99.
※5 M.V.J. Veenman, “Giftedness: Predicting the speed of expertise acquisition by intellectual ability and metacognitive skillfulness of novices.” , Meta-Cognition: A Recent Review of Research, Theory and Perspectives, 2008 Jan, 207-220.
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