Easterliesは、日本語で『偏東風(へんとうふう)』。「風」は、外を歩けばおのずと吹いているものですが、私たちが自ら動き出したときにも、その場に「新しい風」を起こすことができます。私たちはこのタイトルに、「東から風を起こす」という想いを込め、経営やリーダーシップ、マネジメントに関する海外の文献を引用し、3分程度で読めるインサイトをお届けします。
関わりの可能性をひらく
2022年02月27日
パンデミック後の「大退職時代 (Great Resignation)」
米国は今、感染症拡大の裏側で、もう一つの危機に直面している。
「大退職時代 (Great Resignation)」である。
昨年、ハーバード・ビジネス・レビュー(※1)は、米国の離職率が2021年8月に労働者の3割近くを占め、過去最高水準に達したことを明かした。
離職の傾向は、特に30歳から45歳のミドルキャリア人材に見られたという。
同誌は、この要因のひとつとして、パンデミックによる、社員同士の「つながりの断絶」があると指摘し、「米国企業は、孤独な従業員によって年間4,060億ドルもの損失を被っている」と報告した。(※2)
Pew Research Centerの調査(※3)によれば、実際に、リモートワークの推進も相まったことで、6割以上の労働者が「同僚とのつながりが薄れたと感じている」と回答したそうだ。
有意義な「つながり」とは何か
多くの企業は、このことの重大性に気づき、リモートワークの中でも社員同士が積極的に関われるよう試行錯誤し、あらゆる機会を創出してきた。
しかし、人と人が居合わせる場を「与える」だけで、果たして本当に有意義な「つながり」は生まれるのだろうか。
過去にギャラップ社が行った調査(※4)によれば、職場に親友がいる社員のエンゲージメントの数値は、そうでない社員と比べて7倍にもなるが、実際に「職場に親友がいる」と答えた社員は、全体のわずか3割程度に留まったという。
他者と「つながりをつくる」というのは、非常に曖昧な概念である。
私たちは、「他者(others)」と関わることの必要性を漠然と感じつつも、「ひとりひとり(individuals)」と「どのような関係を築いていくか」については、それほど深く意識していないのかもしれない。
1対1の「関わり」の意味づけを見直す
多くの場合、私たちは、他者との関係に名前を付ける。
「上司部下」「同僚」「親子」「恋人」など。
名前が与えられることで、多様で複雑な人間関係は「単純化」され、物事は円滑に進む。
一方で、私たちはその表面的な名称にとらわれ、ひとりひとりとの関係を「固定化」し、新しい関わりの生まれる可能性を、自ら狭めてはいないだろうか。
あなたは今、部下との関係を、どのように意味づけているだろうか。
あなたは、職場でほとんど話したことのない同僚との関係を、どのようにとらえているだろうか。
そして、彼らとの間には、「他にどんな関係性がありえるだろうか」。
この問いは、新しい関わりの可能性をひらく。
「あの人と、こんなコラボレーションができるかもしれない」。
ふとした瞬間に、新しい関係のイメージが降ってきたとき、おのずと「いつもと違うひと言」を相手に投げかけてみたくなるのではないだろうか。
そんなゆるやかな隙間に、新しい「つながり」の芽がうまれるのかもしれない。
- あなたは今、誰とどんな関係を築いているだろうか。
- その人との間に、他にどんな関係がありえるだろうか。
- 今月、ひとつ新たな関係性をつくるとしたら、あなたは、誰とどんな関わりの可能性をひらきたいだろうか。
この記事を周りの方へシェアしませんか?
【参考文献】
※1 Ian Cook, "Who Is Driving the Great Resignation?", Harvard Business Review, 2021 Sep.
※2 Tom Rath and Jim Harter, "How Leaders Can Build Connection in a Disconnected Workplace", Harvard Business Review, 2022 Jan.
※3 Kim Parker, Juliana Menasce Horowitz and Rachel Minkin, "How the Coronavirus Outbreak Has – and Hasn’t – Changed the Way Americans Work", Pew Research Center, 2020 Dec.
※4 Tom Rath and Jim Harter, "Your Friends and Your Social Well-Being Close friendships are vital to health, happiness, and even workplace productivity", Gallup, 2010 Aug.
※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。