Easterliesは、日本語で『偏東風(へんとうふう)』。「風」は、外を歩けばおのずと吹いているものですが、私たちが自ら動き出したときにも、その場に「新しい風」を起こすことができます。私たちはこのタイトルに、「東から風を起こす」という想いを込め、経営やリーダーシップ、マネジメントに関する海外の文献を引用し、3分程度で読めるインサイトをお届けします。
弱さを発揮する
2022年04月24日
人は、そもそも「弱さ」でつながっている
ニューヨークタイムズのベストセラー作家であるブレネー・ブラウンが行ったインタビューの分析によると、社会的なつながりの根底にあるものは「弱さ (Vulnerability)」であるという。(※1)
ここでいう「弱さ」とは、単なる人間的な弱点や、社会的な立場による権力の有無などではなく、個々人が「自分らしくいる勇気」のことを表す。
例えば、子どもの体調が悪い日に休みを取る、仕事で失敗して同僚に助けを求めるなど、誰しも、いつもの通りの自分でいられない日はあるだろう。
しかし、責任ある立場にいる人ほど、職場において、常に冷静沈着でプロらしくあろうと振舞う傾向がある。
そして、どんなときでもいつも通りの同じ自分を演じようとする。
そのような振る舞いによって、他者との間に距離が生まれていることを感じた経験はないだろうか。
人のつながりは「弱さ」と「信頼」によって強化されるものである。
その一方で、「こうした人間的なつながりは、職場から劇的に失われている」とブラウン氏は語る。
「不確実」で「分からない」ことをそのまま伝える
どんな企業・組織も将来の不確実性を抱えている。
それは事実であり、リーダーには、そのような状況の中で挑戦や課題に立ち向かうことが求められる。
Forbes誌のある記事によると、リーダーとして、「明るい未来」や、「良いこと」だけを伝えるのではなく、組織が直面している課題やチャレンジをオープンに示すほど、従業員は職場でベストを尽くそうという気持ちになることが統計的に判明している(※2, ※3)
もちろん大袈裟な表現を用いて社員の不安をあおることは避けたいが、組織のトップを含め「誰もが答えのない中で生きている」という前提に立ち、「不確実で分からないことがある」という事実をうまく共有することができれば、社員からの信頼と共感を獲得し、同時に彼らの自主性を高め、生産的な行動を促進することができるだろう。
「私は何を恐れているのか?」正直に恐れを打ち明けること
女性として初めて、米国で有力なヘッジファンドを率いることになったアイリーン・マレー氏は、部下と1on1コーチングの時間を取り、その中で自身の弱点を意識的に部下に伝えるようにした。
「CEOという役割を担うにあたって、馬鹿にされることに対する恐れ、誤った判断をしてクビになることの恐れ、発言がマスコミに曲解されることの恐れ、取締役を失望させてしまうことの恐れなど、私の頭の中には様々な恐れが渦巻いていました。」
そのような恐れを自ら部下にオープンに打ち明けることで部下と信頼関係を築いていったと言う。(※4)
不確実性の増す現代では、様々な視点を持つ周囲と関わりあい、協力を得ることが不可欠である。
リーダーとして誠実にあらんとすればこそ、正直に、自分らしく振舞い、恐れていることもオープンに共有することが周囲の信頼、共感、協力を得る鍵となるのかもしれない。
- あなたはリーダーとして、どれだけ「自分らしく」振舞えていますか?
- あなたは、自分の弱みや恐れを、誰と共有していますか?
- 誰ともっと共有する必要があるでしょうか??
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【参考文献】
※1 Emma Seppala, “What Bosses Gain by Being Vulnerable”, Harvard Business Review, December 11th, 2014
※2 Mark Murphey, “Great Leaders Show Vulnerability, But Here’s How To Do It Without Seeming Weak”, Forbes, October 29th, 2020
※3 “The State of Leadership Development”, Leadership IQ A Mark Murphey Company, 2020
※4 Jeffrey Cohn and U. Srinivasa Rangan, “Why CEOs Should Model Vulnerability”, Harvard Business Review, May 11th 2020
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