Easterliesは、日本語で『偏東風(へんとうふう)』。「風」は、外を歩けばおのずと吹いているものですが、私たちが自ら動き出したときにも、その場に「新しい風」を起こすことができます。私たちはこのタイトルに、「東から風を起こす」という想いを込め、経営やリーダーシップ、マネジメントに関する海外の文献を引用し、3分程度で読めるインサイトをお届けします。
問い ~もしあなたが、4歳児のように問うことができたなら~
2022年05月29日
リーダーの「問う力」
世界で最も多忙な人物の一人、アップル社の創業者スティーブ・ジョブズは生前、マーケティングや経理部門をはじめ、全社を駆け回り、「なぜ?」「なぜこの方法でやっているのか?」と、常に問いかけていたと言われている。(※1)
- 私たちは今、どこに向かっているのだろうか。
- 私たちが向き合うべき、本当のチャレンジは、何だろうか。
このような「問い」が共有されることで、その場にいる全員が同じタイミングで、同じ問題に注目することができる。
「問い」は、まさに「スポットライト」ような役割を果たし、一人ひとりの思考や行動に変化をもたらす。
問いは、年齢を重ねるごとに減っていく
「なぜ?」「どうして?」「これは何?」
4歳の子どもは、1日に100から300の問いを口にする、という研究結果がある。(※1)
しかし、子どもが口にする問いの数は、9歳頃から、年齢を重ねるごとに着実に減少していく傾向にあるとも言われている。(※2)
実際、子どもの会話の70%~80%は「質問」によって構成されているが、大人の会話における「質問」の割合はわずか15%~25%にとどまるそうだ。(※3)
何が、問いを邪魔するのか?
なぜ、大人になるにつれて「問い」が減ってしまうのだろうか。
ひとつには、自分が「知らない」ことを開示することへの「緊張」がある。
学校教育の中で育まれた、分からないことへの羞恥や正しくあるべきという前提が純粋な疑問を声に出すことを躊躇させる。(※1)
更に「問い」は、「問われた側」にも緊張やプレッシャーを与える。
たとえば、ミーティングの場で「何か良いアイデアがある人いますか?」と意見を募っても返答がない。
そんな場面に何度も出くわすうちに、他者に意見を求めることを諦めてしまったリーダーは、少なくないのではないだろうか。
人は、正解の分からない複雑な問題に向き合うとき、多少なりとも不安になる。
「問い」が、問う側にも問われる側にも「緊張」を生むことは、
避けられない事実なのである。
問いの「表現」を見直す
では、どうすれば我々はこのような「緊張」を乗り越え、日々のコミュニケーションの中でもっと積極的に「問い」を活用していくことができるのだろうか。
ひとつの案として、問いの表現に少しの工夫を加えることで、心理的ハードルを下げ、「一緒に考える空間」を生み出すことができる。
たとえば、枕詞をいれたり、言葉遣いや表現を変えたりするだけで、問いの印象は大きく変わる。
- 「今頭の中にパッと浮かんだことがあれば、どんなことでもいいので教えてくれませんか?」 (ハードルを下げる)
- 「もし予算の制限を無視できるとしたら、何に一番こだわりたいですか?」(仮定法を用いる)
- 「この商品を買ったお客様から、どんなセリフが聴こえてきそうですか?」(相手の五感を刺激する)
もし4歳児の様に会社を駆け回り、おもしろおかしく問いを投げ続けるリーダーが一人でもいたら。 あなたの組織は間違いなく、日々絶えず進化し続けることだろう。
- 今日のあなたの問いかけは、誰にどんな影響を与えていますか?
- その問いを少し変えてみるなら、どんな工夫ができるでしょうか?
- それによって、どんな変化が起きるでしょうか?
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【参考文献】
※1 Berger Warren, “THE BOOK OF BEAUTIFUL QUESTIONS”, Bloomsbury Publishing Inc., 2018
※2 ”Littlewoods retailer survey finds mothers asked 228 questions a day”, news.com.au, March 29th 2013
https://onl.sc/qdXnEUa
※3 Tom Pohlmann and Neethi Mary Thomas, “Relearning the Art of Asking Questions”, Harvard Business Review, March 27th 2015
https://hbr.org/2015/03/relearning-the-art-of-asking-questions
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