Easterliesは、日本語で『偏東風(へんとうふう)』。「風」は、外を歩けばおのずと吹いているものですが、私たちが自ら動き出したときにも、その場に「新しい風」を起こすことができます。私たちはこのタイトルに、「東から風を起こす」という想いを込め、経営やリーダーシップ、マネジメントに関する海外の文献を引用し、3分程度で読めるインサイトをお届けします。
プロジェクト経済 ~誰とでも変化をつくれる時代
2022年08月28日
「プロジェクト経済」がやってくる
昨年12月の米Harvard Business Review誌に掲載された『The Project Economy Has Arrived(プロジェクト経済の到来)』という記事が、多くの人の目を引いた。(※1)
同記事は、20世紀は「オペレーション経済」の黄金時代であったという。
1908年、ヘンリー・フォードがT型を発表し、自動車の大量生産を始めた。
効率化と生産性が求められたこの時代には、誰が作業しても「同じ結果が得られる」ことが強く求められた。
しかし今、組織の活動の中心は、従来型の「オペレーション型」から、「プロジェクト型」へと急速に移り変わってきている。
このことは、先行き不透明な世界において、業務を「安定させる」ことだけでなく、組織に何らかの「変化をつくる」活動が重視されるようになったことを示している。
「プロジェクト」とは何か?
「プロジェクト」とは、ある目標の達成に向けた一連の活動のことである。
その規模は大小様々であるが、プロジェクトには条件がいくつかある。
まずは、時間的な制約があること。
そして、ゴールに向けて、職種や経験を問わず「最適なメンバー」を集め、最高の成果を出すことが求められる。
さらに、目標が達成すれば、解散する。
つまりプロジェクトとは、恒常的なものではないということだ。
目標とともに生まれ、目標が達成されれば終了する。
プロジェクト型で仕事が行われることの最大のメリットは、環境の変化に合わせて、組織の中に常に「新しい変化」を柔軟に生み出せることにあると言える。
同誌によれば、2027年までに、このようなプロジェクト型で行われれる経済の活動は、2017年の12兆ドルから、10年間で約20兆ドルに拡大し、世界の約8800万人がプロジェクトマネジメントに従事することが予想されている。(※1)
また、昨年度のある経営戦略学会においても、組織内のプロジェクトの優先順位やそのパフォーマンスを管理する「チーフ・プロジェクト・オフィサー(CPO)」の役割の必要性が、強く主張された。(※2)
誰とでも、変化をつくれる時代
これまでプロジェクトというと、開発や企画といった特定の部門に限られていた。
しかし、今後はあらゆる組織活用において、誰もが、組織横断的なプロジェクトに関わることが「当たり前」になっていく。
The Standish Groupの調査(※3)によると、2020年に成功とみなされたITプロジェクトはわずか31%にとどまるそうだが、今後、プロジェクト型の活動を管理し、正当に評価する体制が整えば、より一層、組織の壁や年齢、経験の差を越えて、「誰かとつながり」、「何かを始めること」のハードルが下がっていくだろう。
「誰とでも、何かができる」。
本来、仕事とはそういうものであったのかもしれない。
「変化をつくる」ことが、組織活動の中心となる時代で、 あなたはまず、誰と何を始めたいだろうか。
あなたは今、誰と仕事をしてみたいですか?
その人と一緒に、組織にどんな変化をつくりたいですか?
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【参考文献】
※1 Antonio Nieto-Rodriguez, "The Project Economy Has Arrived", Harvard Business Review, 2021
https://hbr.org/2021/11/the-project-economy-has-arrived
※2 Wu, T. and Zhu, Z., "The chief project officer: a new executive role for turbulent times", Journal of Business Strategy, Vol. 42 No. 4, pp. 249-256., 2021]
https://doi.org/10.1108/JBS-02-2020-0038
※3 ”CHAOS 2020: Beyond Infinity”, The Standish Group International, Inc, 2020
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