Easterlies

Easterliesは、日本語で『偏東風(へんとうふう)』。「風」は、外を歩けばおのずと吹いているものですが、私たちが自ら動き出したときにも、その場に「新しい風」を起こすことができます。私たちはこのタイトルに、「東から風を起こす」という想いを込め、経営やリーダーシップ、マネジメントに関する海外の文献を引用し、3分程度で読めるインサイトをお届けします。


祝福とリーダーシップ

祝福とリーダーシップ
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2017年、徳島の阿波踊りが資金難によって、4億円以上の赤字を出したというニュースがありました。(※1)

人々の生活様式や価値観の変化に伴い、「祝う」という習慣は少なくなり、形骸化する傾向が見られます。

しかし、何かを「共に祝福する」という行為は、私たちの祖先が、何世紀にもわたって築き上げてきた、コミュニティを維持・存続するための大切な知恵でもあります。

現代の複雑化した組織を運営していくためのヒントとして、今月は「祝福とリーダーシップ」をテーマにお届けします。

リーダーシップの挑戦

2000年代に突入し、経営学や組織論の世界では、「シェアド・リーダーシップ(Shared Leadership)」という考え方が急速に広まった。

それまで一般的であった「一人の卓越したカリスマ的リーダー像」を追い求めることの限界から、複数のメンバーで責任や権力を共有し、より良い意思決定を協同で行っていこうという試みである。(※2)

しかし、多様性(ダイバーシティ)やリモートワークによる分断が叫ばれる中、理想的なコラボレーションの実現は、言うほど容易いことではない。

メンバーに真の「コラボレーション」への参画が求められる今、どうすれば人々の間に、有機的で深い関わりが生み出されるのだろうか。

何が、職場に命を吹き込むのだろうか。

古くから社会形成の中心にあった「祝福(セレブレーション)」

2020年、Forbesに寄稿された記事で、エグゼクティブコーチのブライアン・ゴーマン氏が、力強いメッセージを発信した。

「今こそ、祝福(celebration)を、職場の前面に押し出すべき時だ」と。(※3)

何世紀にもわたり、多くの国や地域では、人々によって「祝賀」の場が設けられてきた。

ロシアの哲学者ミハイル・バフチン氏は、かつては儀式や祝い事が、共同体を形成・維持する上で、今よりもはるかに大きな役割を担っていたことを示唆している。(※4)

「祝福」は、単にコミュニティへの帰属意識を高めるだけではなく、コミュニティにおける「成功とは何か」を印象づけ、人々を未来に向けて鼓舞する機能も果たす。

組織人類学者であるジュディス・E・グレイザー氏によると、「誰かと共に成功を祝う」ことは、脳の「寛容性、革新、感謝、協力」の感情を刺激し、創造的思考や、コラボレーションを促進するという。(※5)

祝福の種を見つける

では、実際のところ、何をどう祝えばよいのだろうか。

忘れてはならないのは、私たち人間が根源的な欲求として、社会的なつながりを求める生き物だということである。

米国Gallup社の調査によると、昇進やボーナス、昇給といった個人に向けられた賞与よりも、他者による「意味のある承認(Meaningful Recognition)」の方が、社員のモチベーションを高めるという。(※6)

具体的に、最も効果的であるのは「あらゆる方向からの承認」であり、「少なくとも7日ごと」に他者から認められる環境が、売上と生産性に10%から20%の差を生み出すことが、同調査で明らかとなった。

つまり、年に一度、大きな成功を盛大に祝うよりも、毎週、あるいは毎日、継続的に小さな祝福の種を見つけることが、チームをよりいきいきとさせるのだ。

2022年の終わりを迎えるにあたって、祝い残していることはないだろうか。

今日の組織において、もっとチームのメンバー同士が互いを讃えあい、喜びを共にする「祝い」の体験をつくり出すことはできないだろうか。

  • あなたのチームは、今週、何を共に祝いましたか?
  • 来月、あなたは誰と何を祝いたいですか?

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【参考文献】
※1 徳島の阿波踊りが「イベント地獄化」した理由 観光客120万人超、補助金投入でも大赤字の謎. 東洋経済ONLINE, 2018-03-22
※2 Acar, F. Pinar, “Analyzing the effects of diversity perceptions and shared leadership on emotional conflict: a dynamic approach”, The International Journal of Human Resource Management, 2010
※3 Brian Gorman, "Ritual And Celebration In The Workplace", Forbes, January 14th, 2022
※4 Kenneth J. Gergen, “Relational Being: Beyond Self and Community, First Edition”, Oxford University Press, Inc. 2009
※5 Judith E. Glaser, "Celebration Time-A Cocktail Each Executive Should Know How to Mix", December 28th, 2015
※6 "Be Nice: It's Good for Business-How positivity can enrich individuals and companies", Gallup, Inc., August 12th, 2004

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