ブラインドスポットと「言わない文化」

新年がスタートしました。

早速新しい目標に向けて邁進されているリーダーの方々をお見かけします。

目標に向けて一意専心に取り組んでいるとき、時に私たちは、自身の振舞いが周囲にどう映っているのか、見えなくなることがあります。

『裸の王様』という有名なアンデルセンの童話がありますが、誰にでも、他者には見えていて自分には見えていない、「ブラインドスポット（盲点）」が存在するものです。

今月は、リーダーの「ブラインドスポット」をテーマにお届けします。

「自分は、よく見えている方だ」という思い込み

自分の背中を鏡なしで見ることができないように、人は誰しも、ブランドスポット（盲点）を持っている。

そして、ブラインドスポットは、「リーダーの成功を妨げる弱点や脅威になりうる（※1）」。

このことは、多くのリーダーが理解していることだろう。

しかし、興味深いことに、米国プリンストン大学の社会心理学者達が米国在住の600人に対して行った調査によると、85％以上の人が「自分は平均よりもバイアスが少ない」と回答している。（※2）

つまり、自分自身にもブラインドスポットがあることを「本当の意味」で認識している人は、ほとんどいないのだと言える。

ブラインドスポットが組織にもたらす業績への影響

しかし、現実問題として、ブラインドスポットが多い組織と少ない組織が存在し、そのことが業績に確かな影響を生んでいることも事実である。

コーン・フェリー社のアナリストらによる調査では、業績の悪い会社（poorly performing companies） の社員が、業績の高い会社（financially strong companies） の社員と比べて「ブラインドスポット」が20％多かったことが明らかになった。（※3）

では、何がその顕著な差を生み出しているのだろうか。

一般的に「経営者のジレンマ」と言われるように、役職が上の立場になるほど、周囲からのフィードバックを得ることが難しくなる。

自分自身の経験や知識に対する自信が、他者からのフィードバックを遮断してしまう傾向は、役職者に限らず往々にしてあるだろう。

このことについて、リーダーシップ論に関する数々の書籍で話題になったミーガン・ライツ教授が、ハーバードビジネスレビューに寄稿した記事において、まず第一に、読者へ、「他者の意見に「素直に」興味が持てますか？」と問いかけたことは印象深い。（※4）

組織の「言わない文化」が、個人のブラインドスポットを広げている

もう１つ、ブラインドスポットを広げる要因として挙げられるのは、多くの組織に「言わない」という文化が根付いていることだ。

2016年にコーチング研究所が日本国内で行った調査によると、「上司と異なる意見を持ったとき、あなたは自分の意見を率直に伝えていますか。」という質問に対し、「いつもしている」という一般社員の回答はわずか6％であった。（※5）

「言わない文化」は何を生み出し、何を失っているのだろうか。
あなたは誰かの盲点に気づいたとき、それを臆さず口にできているだろうか。

ブラインドスポットは、リーダー「個人の問題」と捉えられがちだが、「周りもつくりあげている」という側面を忘れてはいけない。

今、あなたの組織やチームでは、「ざっくばらんに言い合える文化」が築けているだろうか。
ブラインドスポットを埋めあえる関係性ができているだろうか。

新しいゴールに向き合う前に、今一度、立ち止まって見直してみてもよいのかもしれない。

• あなたが今、気づいているのに言葉にしていないことは何ですか？
• それはなぜですか？
• あなたのブラインドスポットを埋めてくれるのは誰ですか？
• あなたは誰のブラインドスポットを埋めることに協力できますか？