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組織にコーチングカルチャーを築く #1 はじめに(ICF調査レポートより)
2016年11月21日
国際コーチング連盟(ICF: International Coach Federation)の最新リサーチレポート『 Building a Coaching Culture with Managers and Leaders (マネージャー、リーダーとともにコーチングカルチャーを築く) 2016 』を数回に分けてシリーズでお届けします。
#1 はじめに
人材管理(タレント・マネジメント)における最近の傾向として、「コーチングカルチャーを築くこと」を、組織がこれまで以上に受け入れるべきであるということが示されている。年次業績評価に代わり、業績管理システムが再評価され、「パフォーマンス」や「開発」についての対話の頻度が上がるよう改良されてきている。
労働人口に占める割合が伸びているミレニアル世代(訳注:1980年前後から2005年頃に生まれた世代)は、他の世代の社員に比べて、より多くのフィードバックを望んでいる。現場(OJT)での学習の機会も増えており、トレーニングと開発に対する責任は、人事や学習開発部門からラインマネージャーへと移ってきている。さらに、マネージャーおよびリーダーは、指示命令型のマネジメントスタイルから離れ、「一体感」や「巻き込み」、「参加」を基礎とした新しいアプローチへと移りつつある。
このような動向が、マネージャーおよびリーダーが、直属の部下や同僚とのやりとりの中でコーチングの知識、アプローチ、スキルを使いたいというニーズを生んでいる。これまで、コーチングを利用する機会は、主として、シニアリーダーが、「プロのコーチ」との契約をもって活用できるものだった。いまでは、「コーチング型マネージャーおよびリーダー」の数も増加し、「コーチ的アプローチ」は、組織の至るところに広まり、パフォーマンスと開発の原動力となっている。
数々の研究が、「コーチング的な関わり」が戦略的に設計され、導入されるときに、組織に与えるプラスの効果を浮彫りにしている。ハードな財務上の利益(例:生産性と品質の向上)、無形の利益(例:人間関係・チームワーク・仕事の満足度の改善)、ソフト面における利益(例:ストレス軽減、回復力・幸福度やエンゲージメントの上昇)、行動の変化(例:時間管理の改善、新人研修の迅速化、意思決定の改善)のすべてが、組織におけるコーチングの成果として示されている。さらに、HCIとICFによる最新の調査から、「コーチングカルチャーの浸透」は、「社員エンゲージメントの向上」と「財務業績の向上」と相関関係にあることがわかってきた。
コーチングは、特定のスキルを開発し、一定期間の業績を改善し、個人および職業人としての開発の拡大に利用することができる。プロのコーチではないものの「コーチング型マネージャーおよびリーダー」はこうしたニーズに対応することも可能だ。
シニアリーダーからの明らかなサポートとコーチング・ビヘイビアをロールモデルとすること以外にも、コーチング型マネージャーおよびリーダーをうまく機能させるためには、多くの要因が揃っていなくてはならない。第一に、マネージャーおよびリーダーは、「コーチング・コンピテンシー」のトレーニングを受ける必要がある。「コーチング型マネージャーおよびリーダー」は、「社外コーチ」と「社内コーチ」の活用よりも一般的だが、彼らは、プロのコーチほどはコーチの専門トレーニングを受けてはいない。この調査研究の枠を超えて、補足的な学習法、共通の価値観、適切なコーチングと学習スタイルのタイプ、補足的な性格特性などといった他の要因が、マネージャーと社員の関係がうまくいくためには必要になってくる。また、「コーチング・リレーションシップ」(コーチとクライアントの関係)を成功させる要因として、マネージャーやリーダーが、人の特性を「不変」とみるか「可変(成長のマインドセット)」と見るか、がある。というのも、これが、彼らが、どれだけの時間を「チームに対するコーチング」に投資するかに影響を与え得るからだ。
「私たちのやりたいことは、コーチングカルチャーを創ることによって、マネージャーはチーム内のスキルを開発し、また社員は自分で意思決定をし、必要と思う行動がとれるようにすることです。そうすれば、目標達成に焦点をあてたより大きな組織となることができます。一見、職権を手放しているように見えるかもしれません。仕事を社員に任せ、意思決定をさせているように見えるかもしれませんが、社員が自分で決定をしたと思うことほど、彼らに自信を持たせることはないのです」リカルド・ナイルズ(Ricardo Niles) 取締役人事部長
グローバル・ソーシング・フットウェア, アディダス・グループ
この2016年の調査は、HCIとICFが3年間に渡って共同で実施したものであり、過去最大のサンプル数(n=879)と対象地域(回答者の37%が北米以外から)となっている。さらに、マネージャーおよびリーダーがサンプル(対象者)のほぼ半数を占めている。人事、学習開発、人材管理部門を越えたこの回答者の広がりは、マネージャーおよびリーダーが、どのようにコーチングスキルを使っているのか、その結果、想定される成果、そしてコーチングカルチャーを創る上で何が障害となっているかを見つけ出す手がかりとなっている。
この調査レポートの目的は、ビジネスリーダー、ラインマネージャー、人事/人材管理/学習開発部門の専門家に、「強いコーチングカルチャー」を構成する要素が何かを教えることにある。調査結果およびこの分野の専門家に対するインタビューから、私たちは、「強い組織的なコーチングカルチャー」の特徴を、「コーチング型マネージャーおよびリーダー」に重点を置いて詳しく述べている。
【翻訳】 Hello, Coaching! 編集部
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