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自分にふさわしいコーチ・トレーニング・プログラムを選ぶ
2017年08月18日
「私は、長年コーチとしてやってきました」とその女性は語る。「マスターの学位ももっているし、数年ですが会社勤めもしました。コーチ・トレーニング・プログラムなんて私には必要ありません。」
この女性は正しい。が同時に、大間違いでもある。コーチのトレーニングを受けなくてもコーチを名乗っていいのだが、名ばかりではない真の能力や技術を身につけた本物のコーチへの道には、深い知識と徹底した訓練が欠かせないからだ。
さて、あなたがコーチ向けトレーニングの重要性をよく理解したとして、あなたにふさわしいプログラムを見つけ出すにはどうすればいいのだろうか。「あなたにふさわしい」かどうかが問題だ。ベストなプログラムを選び出すためには、まずあなたが、トレーニングで何を身につけたいかを心に決め、そのためにどれだけの時間や資金をつぎ込めるかを明確にし、どうしたら一番よく学び、知識を身につけることができるかをよく考えることだ。
何を身につけたいのか
もし国際コーチング連盟 (以下ICF) の認定資格を得たいのであれば (もちろんそれをお望みのことと思うが)、その資格が得られるプログラムを探すべきだ。中にはICFの認定資格のもつ価値をよくわかっていない人もいるようだが、この資格を重要と考える企業の数はどんどん増えている。コーチとしての高い能力を示しながら、さらなる高みを求めて学び続ける人物であることを示す、このICFの認定資格保持者でなければ、採用や契約をしないという企業さえあるのだ。
ICFがACTP (認定コーチ・トレーニング・プログラム:Accredited Coach Training Program) に指定するのは、資格認証のために必要となる要件のほとんどを網羅した包括的なプログラムだ。ICFはまた、ACSTH (認証済みコーチ専用トレーニング時間:Approved Coach-Specific Training Hours) というカテゴリーも設けている。これは、ICFが定める教育内容に厳格に従っているが、ICF資格認定の要件の一つであるより高度な「メンター・コーチング」の訓練を特に組み入れていないプログラムが対象である。既にコーチとしての経験を積んでいる人に対しては、ACSTHプログラムを一回受講するだけでは、ICF中級レベルであるPCC認定資格を得るには、受講時間が足りない (あるいは、初級レベルのACC認定資格に必要とされる受講時間にも満たない) かもしれない。だが、ACTPを受講するならば、十分である。
どれだけの時間や資金をつぎ込めるか
何かを習得するには、時間とお金を掛けて集中しなければならない。コーチ・トレーニングも同じだ。ACTPを例に取れば、125時間の授業時間に加え広範囲にわたるコーチ・トレーニングのセッションが用意されている。こうしたプログラムの修了までには何カ月もかかる。
プログラムがたとえインターネット上で提供される場合であっても、すべての授業に出席し、教室外の活動にもすべて参加することが重要である。コーチとしての専門的技量は、時間とともに増大する。しっかりとしたコーチ・トレーニング・プログラムならば宿題も出るし、受講生同志でのコーチング・エクササイズもある。国外へ転居するとか、子どもが生まれるとか、転職するなど、ちょうど人生の岐路を迎えている場合は、そうした変化に耐えながらコーチ・プログラムもこなすことができるかどうかをよく考えて欲しい。その両方に全力で当たるだけのエネルギーが果たしてあるだろうか。
高品質なコーチ教育は、決して安いものではない。ACTPプログラムは普通、何十万円もするし、ACTSHプログラムでも結構な費用が掛かる。それでも、コーチ・トレーニングはあなた自身のスキル開発に繋がる投資であり、顧客に対するあなたのサポートがすばらしいものになることを考えれば、十分に引き合うはずだ。そうはいってもやはり、プログラムの金銭面の負担に安心して耐えられるかどうかは、登録前によく考えた方がいいだろう。
最適な方法で学び、知識を身につけるにはどうしたらいいか
プログラムが自分に「ふさわしい」かどうかを見極めるポイントは、オンラインコースと集合授業への参加のどちらがいいか、だけではない。それもよく考えなければならない点ではあるが、講師の質や人柄、それにプログラムの自体があなたの「フィーリング」に合っていなければならない。候補のプログラムに出席したことがある人を探し出し、良かった点や残念だった点について率直な意見を聞いてみることだ。(たとえば、LinkedInでキーワードサーチをかければこうした人々を見つけだすことができる。) あるプログラムにちゃんと出席し、また修了するだけでは、十分な満足は得られないと知るべきだ。
為すべきこと
- コーチ・トレーニングに投資を惜しまない。
- コーチとしての自分のキャリアに目標を定める。
- ICFのトレーニング・プログラム検索サービスを利用する。
- プログラムを成功裏に修了するために必要な時間と予算、ならびに集中力についてよく考える。
- 関心のあるプログラムに出席したことのある人々と話しをし、率直な意見を聞く。
してはならないこと
- コーチの経験だけを信じて、コーチ・トレーニングは自分に必要ないと思い込むこと。
- しっかりした基礎 (たとえばICFが定めるコーチのコア・コンピテンシー) をベースに組み立てられたプログラム以外のものに登録すること。
- コーチ教育が必要としている義務や責任を軽視すること。
- コーチ・トレーニング・プログラムをひとつ終了しさえすれば、コーチとしての能力が認められたことになる、と考えること。
- コーチ・トレーニングを受講して、できるかぎり最良のコーチになってやろう、と考えること。トレーニングとは、しっかりした成果を得るための一つの投資であり、あなたが顧客に対しより質の高いサポートを提供することで、初めて元が取れるものなのだ。
参考文献:
International Coach Federation Individual Credentialing
McConnell, K.: Executive and Leadership Coaches Gain Ground for Business, Corporate Clients. Columbus CEO, May 2015
Frankovelgia, C.: The Key to Effective Coaching. Forbes, April 28, 2010
International Coach Federation TPSS
著者について
リル・ルブラン (Lil LeBlanc) 氏は、ICFの認定資格(PCC)を持つICFメンバーで、米国フロリダ州 アイビス・コーチング(Ibis Coaching, LLC)の代表である。
【翻訳】 Hello, Coaching! 編集部
【原文】 SELECTING THE RIGHT COACH TRAINING PROGRAM
(2015年5月29日にICF BLOGに掲載された記事の翻訳。著者の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Translated and reprinted with permission of the author, Lillian J. LeBlanc, PCC, Principal, Ibis Coaching, LLC, Hudson FL, USA.
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