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腸内環境をよくすれば、問題解決能力もアップする?

原題:THE GUT-BRAIN CONNECTION
腸内環境をよくすれば、問題解決能力もアップする?

胃腸の健康状態が脳に与える影響が明らかになりつつある

コーチは、クライアントに胃腸の調子を尋ねたほうがいい。というのも、胃腸の健康状態は、不安感、感情の起伏、認知機能、痛みの感じ方に加え、脳機能の変化にも密接に関係するからだ。

精神科医らは、ストレスによって生じる「不安」といった精神科的症状は、過敏性腸症候群 (IBS) や炎症性腸疾患 (IBD) といった消化器疾患の原因となり得ると考えてはいたものの、最近まで、胃腸と脳の関係についてのエビデンスは裏付けに乏しいものがほとんどであった。

何年にもわたり、主に動物を対象にではあるが、多くの胃腸と脳の関係に関するリサーチが行われてきた。そして2012年に『Nature Reviews Neuroscience』は、「全体的に見て、行動・神経生理学・神経科学は、腸内フローラの変化に、さまざまな面で影響を受け得ることが次第に明らかになってきた」との結論を出した。
*腸内フローラ:腸内で共存している多種多様な腸内細菌の集まり。

2015年に『Current Opinions in Psychiatry』に掲載された論文によって、精神医学界においても、胃腸の健康が脳の健康に密接に関わっているという見解が受け入れられるようになった。その論文では、次のように結論づけられている。

「...腸内フローラは、セロトニンやセロトニンを作りだすトリプトファンに影響を与え、ストレス反応を制御し、認知や行動を調節する能力をもっている。それを考えると、腸内の細菌が、精神医学全般、とりわけうつに対して秘めている重要性は明らかだ」

精神科医が胃腸の健康状態について患者に尋ねるように、コーチがクライアントに対して、胃腸の健康状態について尋ねてもいい。

ビジネスマンにとって胃腸の健康が大事な理由

胃腸と脳に関する最近の研究の多くは動物を対象としたものだが、人を対象とした研究でも結果が出てきている。人を対象とした最近の4つの研究では、胃腸の健康状態が、脳の健康状態や認知機能、そして精神的充足感とどのように密接に関わっているかが浮き彫りになっている。

シュミット(Schmidt et al. (2015))らは、プレバイオティクス (バナナやオートミールといった、腸内の善玉菌を増やす非消化性炭水化物) を3週間摂取した被験者は、不安感が軽減することを発見した。うつ病リスクも軽減し、抗うつ薬や抗不安薬を服用した場合と同じような効果が得られた。

メッサウディ(Messaoudi et al. (2011))ら は、プロバイオティクス(善玉菌を含む食品)を30日間摂取した被験者は、うつ病リスクを軽減でき、問題解決能力が増すことを発見した。

ティリッシュ(Tillisch et al. (2013)) らは、腸内細菌と脳機能の直接的な関係を初めて実証した。4週間、毎日ヨーグルトを食べた後では、負の感情表現に対して脳が反応する度合が減った。

最後に、サンチェズ・ビレガス(Sánchez-Villegas et al. (2015)) らは、10年以上にわたって15,093人を調査し、フルーツや野菜、ナッツ、マメを多く食べる地中海式食事法が、うつ病リスクを軽減することを発見した。食事にちょっとした変化を加えるだけでも効果が得られた。

胃腸の健康状態が、脳の健康状態や認知機能、精神的充足感に影響を与えるという圧倒的なエビデンスから、胃腸の健康状態をクライアントに聞くことは、コーチにとって重要なことだと言えるかもしれない。現代の社会にはストレスがつきものであることを考えれば、クライアントの多くが胃腸に問題を抱えていることは想像に難くない。胃腸の問題を扱わなければ、クライアントの成長や成果が影響を受けるということもあり得るのだ。

コーチがクライアントに胃腸について質問したほうがいい理由

私のクライアントに、サラという女性がいる。彼女はポートフォリオ・マネジャーで、会った瞬間に、非常に知的で、能力の高い人物だということがわかった。サラは順調にキャリアを歩んでいたのだが、コーチングが始まる数か月前に仕事の環境が変わり、新しい環境において彼女は恐怖に身がすくみ、うまくいっているときにはコントロールできていた自尊心の低さによるネガティブな部分が、表面化してしまっていた。

コーチングが始まって数週間、新しい行動を促すのではなく、日々の食事を改めるよう勧め たところ(サラはジャンクフードを食べてストレスを解消していた)、サラはついに砂糖を断つ決心をした。すると、たちまちのうちに彼女は精神的にすっきりし、感情も安定したことを認識した。ただ、またジャンクフードを食べ始めると、「頭の中の霧」がかかり始め、自尊心も低下した。サラは、クリーンイーティング**とジャンクフードとのあいだを行ったり来たりしていたが、やがて、口にする食べ物に気を配っているときには、精神力がみなぎり、高い自尊心を維持していることがはっきりした。一方で、ジャンクフード食に戻ると、コーチングセッションには意味がなくなった。
**クリーンイーティング:食材をなるべく素材の形で摂取し、加工食品や精製した食品を避ける食事法。

クライアントが日々の食事を見直せば、サラの場合ほど劇的な変化はないとしても、ストレスの度合いは軽減され、エネルギー、集中力、そして気分は向上するだろう。エネルギーに満ち、集中力や気分が上がると、コーチングもより効果的になり、クライアントの進歩も速くなる。

著者について

アイリーン・オブライエン博士( Dr. Irena O'Brien, PhD,)は認知神経科学者で、脳を利用するメタコーチ。

【翻訳】 Hello, Coaching! 編集部
【原文】THE GUT-BRAIN CONNECTION
(2015年12月18日にICF BLOGに掲載された記事の翻訳。著者の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated and reproduced with permission of Dr. Irena O'Brien, PhD, from The Neuroscience School at neuroscienceschool.com. The Neuroscience School offers reliable, practical neuroscience information for coaches, wellness practitioners, and HR professionals, all in one place.


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