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新任役員を待ち受ける厳しい現実

原題: I’M AN EXECUTIVE…GET ME OUT OF HERE!
新任役員を待ち受ける厳しい現実
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社外から登用されたCEOが短期間のうちに解雇される確率は、社内から昇進したCEOの場合と比べて7倍も高い。取締役会は、社外のCEO候補者についてどれだけ調べても、最終的には、現在のビジネス環境と戦略的な目標に精通しているという理由で、社内の候補者を選ぶ。2014年、S&P500社のCEOのうち78%は、社内から選出されている。このように、多くの企業が社内での昇進ルートの構築を重要視しているものの、サクセッション・プランが実行に移されると、経営幹部候補である有望な管理職は、確実に一連の難題に直面する。そして、まさにこのことは、コーチが取り組むにふさわしいチャレンジである。

かつての同僚の上司になる

コーチであるあなたのクライアントがある日突然、昨日まで冗談を言い合っていた同僚の上司になったとする。その同僚にとっては、かなり面白くない体験だろう。あなたのクライアントが、チームメンバーの関わる時間を増やし、チームの結束を強めるような取組みをしなければ、元同僚は、チームの破壊者になる可能性が高い。このクライアントは、同僚とうまくやっていくのに役立った自分の資質が、同じ同僚がリーダーに期待する資質とは一致しないということを理解していない可能性がある。「今まではうまくいっていたことも、これから先は通用しないかもしれない」のだ。

プライドの高い人たちと対等に働く

自信があることによって、あなたのクライアントは昇進した。組織の中で彼(女)の階層が上がるほど、自信が高まる可能性が高い。しかし、これは彼(女)の周囲の人にとっても同じである。彼らも、頂点を目指して奮起するなかで、あなたのクライアントと同様に自信を高めている。

あなたのクライアントである新任の経営幹部は、できるだけ早く周囲の信頼を確立したいと願っているだろう。しかし、準備もなく、プライドの塊ともいえる経営幹部達がそろっている会議室に立ち向かったところで、完敗は避けられない。であれば、何をするのがよいだろうか。一番自信のありそうな人物に対して、いわば顔面を殴りつけるようなことをして、他の人たちに敬意を払わせるようにするのがいいだろうか? あるいは、背の高い草陰に隠れて、殺戮者の本性を見せつけるための急襲のベストタイミングを待つのがいいだろうか? それとも、この集団でもっとも敬意を払われる人の真似をして、暗黙のうちにリーダーのレッテルを貼られるのを待つのがいいだろうか?

こういったシナリオに対処する、もっとも効果的な方法を決定するためには、チームの微妙なカラーを理解することが重要だ。出世することを重要視して行動することは、周囲と協調していくことを究極のゴールとしている文化の中では惨めな失敗を招く可能性がある。逆もまた真なりだ。

周囲からの信頼を確立するために、より速やかに実施できるアプローチは、あなたのクライアントの同僚が、それぞれ好んで演じている役割を棚卸しすることだ。結果、プロセス、あるいは関係性を重視する傾向があるのは誰か。また、革新者、あるいは実用主義者(プラグマティスト)の傾向があるのは誰かを区別する方法を、コーチがガイドする。このことによって、クライアントである経営幹部は、自分の同僚が将来とる可能性のある立場を予測できるようになるだろう (ある人にはもっとサポートが必要かもしれないし、また、ある人とは、もっと理性的にお互いを論破することが機能するかもしれない)。また、そうすることにより、そのクライアントは経営者グループの視野の中で埋もれているギャップや盲点を特定することができるようになり、その視点は速やかに自身の価値を高めることもできるだろう。

さらなる深みへ

経営幹部間での意見の不一致は目新しいものではない。上の立場の人に対するマネジメントも最近に始まったことではない。しかし、組織の上層部では、影響力、指揮、統制への強い欲求が猛烈なものになることがある。そういった政治的な画策が渦巻く上層部を最初に目の当たりにすると、新人経営幹部は確信のないまま、対立する勢力の双方に味方してしまう可能性がある。この状況で「迎合」のアプローチをとれば、周囲から彼(女)に対して、「情熱的な姿勢が欠如している」、また、「自分のチームを不当な批判から守る能力も低い」という認識が高まることになる。

そのクライアントにとっては、コーチングの期間中に自身のビジネス哲学を言語化して準備を整え、練習する時間をとることと、圧力のかかった状況でそのビジネス哲学を守っていく戦略を生み出すことが重要だ。「闘争」を選択することについての基準(パラメーター)についても議論しなければならない。



上記のさまざまな挑戦について知れば、誰でも一旦立ち止まって、野望のマイナス面について検討せざるを得ないだろう。しかし、もし幹部候補者が持続可能な成功を支えるさまざまな内部リソース、および外部リソース (すなわち、コーチング)を事前に準備できれば、これらの障害を切り抜けるのはかなり容易になる。

著者について

マイケル・サンガー (Michael Sanger)は、ホーガン・アセスメントのシニアストラテジスト。本件、その他のホーガンに関するお問い合わせは、日本における正規代理店である(株)富士ゼロックス総合教育研究所(担当:ナオコ ichinao@fxli.co.jp) までご連絡ください。

【翻訳】 Hello, Coaching! 編集部
【原文】 I'M AN EXECUTIVE...GET ME OUT OF HERE!
(2017年8月21日にICF BLOGに掲載された記事の翻訳。著者の許可を得て翻訳・掲載しています。)


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