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チームを成功させたいリーダーが絶対に知っておくべき6つの「リーダーシップ・スタイル」
2017年10月06日
「リーダーシップ・スタイル」とは、リーダーが結果を出すために、チームメンバーとどのように関わるかを選択できるようにしたものである。ハーバード大学が、リーダーにとって欠かせないツールとなる、極めて重要な6つの「リーダーシップ・スタイル」を見出した。ふさわしい時にふさわしいスタイルを選べば、大きな成果を生み出すことができる。そして、「エモーショナル・インテリジェンス(感情知能)」は、その瞬間にふさわしい「リーダーシップ・スタイル」を選ぶ上で極めて重要な役割を果たす。
エモーショナル・インテリジェンス(感情知能)
「エモーショナル・インテリジェンス(感情知能)」もしくは「共感」とは、自分の感情と同じように、他者の感情も認識できる能力のことだ。そして、ここでいう「インテリジェンス(知能)」とは、「ゴール達成」を目指すために、相手の感情を理解することによって、さまざまな状況で、相手の行動をコントロールしたり、変容させたりする能力を指す。
エモーショナル・インテリジェンスは、優れたリーダーが携えているものであり、それが低いリーダーとは一線を画す要素である。すでに重要性が確立されているIQにならってEQ と呼ばれることも多い。EQは、いわゆる「ソフトスキル」とみなされることも多いが、状況やその場に応じた最も有効な「リーダーシップ・スタイル」を選ぶ上で、極めて重要だ。
感性の鋭いリーダーは、チームや一人ひとりのニーズに応じて、また状況に従って「リーダーシップ・スタイル」を変える。
チームのモチベーションを高め、導くために必要不可欠な6つの「リーダーシップ・スタイル」
「必要不可欠な6つのスタイル」という概念に馴染みがないリーダーでも、次の分かりやすい例をあげれば、その重要性をすぐに理解できるだろう。例えば、ゴルファーは、たった1本のクラブだけでプレーはしない。14本のクラブをフルに携えて毎回プレーに臨む。
まさにゴルフクラブ同様、「リーダーシップ・スタイル」にも「良い」「悪い」はない。ただ、使う頻度がより少ないものもあるというだけだ。重要なのは、6つ全てを使えるように学習することだ。
これまでの研究によれば、リーダーたちが、チームに対して用いているスタイルの種類はかなり限られてはいるものの、次の6つのスタイルは、業種や企業文化を問わず、どんな規模の組織にも用いることができる。
持続的な生産性につながる3つの「長期」スタイル:「ビジョナリー型」「参加型」「コーチング型」
1.「ビジョナリー型」
「ビジョナリー型」は、より大きなビジョンに向けて、基準を設定し、成果を測るリーダーだ。「鼓舞型」と表現されることもある。もし、何のビジョンも持たないチームで仕事をするとしたら、どんな気分になるか、ちょっと想像してみるといい。
この「リーダーシップ・スタイル」をとるためには、組織のビジョンを十分に理解すると同時に、そのビジョンを、チームメンバーに明快に伝えるスキルを備えていることが不可欠だ。
- あなたは、自分の会社のビジョンを知っているか?
- あなたは、そのビジョンを自分のチームメンバーに明快に伝えることができるか?
2.「参加型」
「参加型」リーダーは、決断を下すときに社員の参加を促し、積極的に彼らの合意を得ようとする人たちである。面倒見の良さが特徴であるこのリーダーには以下のような傾向がある。
- 定期的にミーティングを開く
- 社員の懸念に耳を傾ける
- 「やり方」を重視する
- ポジティブなフィードバックをする
- 社員の士気が業績に影響を及ぼすことを認識している
- 業績に関する対立を避ける
このスタイルは、前述の「ビジョナリー型」を補うもので、「ビジョナリー型」と組み合わさるとうまく機能する。「参加型」のリーダーは、個人ではなくチーム全体にねぎらいの言葉をかける傾向がある。
3.「コーチング型」
「コーチング型」は、継続的な指導とバランスの取れたフィードバックによって、長期にわたってチームメンバーを開発することに重点を置く。通常、このスタイルをとるリーダーは、リーダー経験が非常に豊富で、その結果、ゆったりとした気持ちでメンバーに仕事を任せることができる。時には、時間をかけてチームメンバーを開発することで、目先の結果が犠牲になっても厭わないことがある。その場その場の失敗や、期待外れな事態も快く受け入れる姿勢は、このスタイルにはなくてはならないものだ。
用途が明確で使用が限定される3つの「短期」スタイル
「関係重視型」「指示命令型」および「先導型」は、「短期」スタイルに分類される。この3つは、感情がぶつかり合う、困難で極端な状況で効果を発揮する場合が多い。ゴルフクラブに例えて考えてみるといい。クラブの中には、サンドウェッジなど、用途が非常にはっきりしていて、使い道が限られているものがある。このことは、これから述べる3つの「リーダーシップ・スタイル」にも当てはまる。
4.「関係重視型」
「関係重視型」のリーダーは以下の傾向がある。
- ポジティブなフィードバックをする
- 社員の士気がパフォーマンスにどれほど影響するか、その重要性を強く主張する
- 業績に関する対立を避ける
「関係重視型」のリーダーは、一見面倒見が良く、皆と親しくなりたがっているように見えるかもしれないが、これが度を越すと「厳しい決断」が難しくなる恐れがある。しばらくすると、周囲の人がつけこむようになることもある。このスタイルのリーダーは、メンバーにたくさんのチャンスや機会、自由を与えたにもかかわらず、結果がかんばしくなかったときには、イライラし、厳しい管理とコントロールを強化する体制に切り替えることがある。
5.「先導型」
このスタイルは、「ビジョナリー型」および「コーチング型」と組み合わせがいい。
「先導型」には以下の傾向がある。
- チームのメンバーに仕事を任せることを恐れる
- 高い成果が望めない場合は、メンバーから責任を取り上げる
- リスクをはらんだ状況に助け舟を出す
短時間で結果を出さなければならない場合には、非常に有効なスタイルと言える。士気を高めると同時に、人の背中を見て学ぶ人には上手く作用する。ただ多用すると、最も業績が高いメンバーですら自ら進んで努力しなくなったり、また、その一方で、成果を上げることに対する意欲が低いチームメンバーは、「先導型」に圧倒されてしまったりする恐れがある。
6.「指示命令型」
このスタイルは、危機的な状況に打ってつけだ。消防署の隊長が、このスタイルを使うべきリーダーの好例だ。
「指示命令型」のリーダーは次のような特徴がある。
- コントロールが強い
- 説明が指示命令になっている
- 指示命令に従わない場合のネガティブな結果を伝えることで、メンバーを動かす
- 短期的ではあるが、明確な行動計画を示す
差し迫った状況以外で多用すると、チームメンバーのモチベーションを下げることが多い。リーダーからの働きかけがなければ何も起こらず、それが、チームの前進を妨げる要素となる。
まとめ
今日、成功しているリーダーたちは、チームのモチベーションを高め、導く能力がなければ、「権威」自体には何の意味もないことを理解している。結果を出すために、しっかりと船の舵を取りつつ、集中を切らさず常に先手を打つ能力のことを、コーチである我々は「リーダーシップ・プレゼンス」という言葉で表現している。素早く機敏に「リーダーシップ・スタイル」を切り替えることは、「リーダーシップ・プレゼンス」に欠かせない要素であり、コーチングや専門能力開発を通じて、磨きをかけ、開発していかなければならない能力なのだ。
著者について
ダイアン・クレイグ氏(Diane Craig)は、企業向け研修/ワークショップなどを手掛けるコーポレート・クラス社(Corporate Class Inc.:トロント カナダ)の創業者兼社長。
【翻訳】 Hello, Coaching! 編集部
【原文】6 ESSENTIAL LEADERSHIP STYLES FOR ASPIRING LEADERS
(2017年7月24日にICF BLOGに掲載された記事の翻訳。著者の許可を得て翻訳・掲載しています。)
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