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組織にコーチング文化を築くためには?

原文:A STRATEGY FOR BUILDING A COACHING CULTURE
組織にコーチング文化を築くためには?
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私はかつて、2000人からなる営業主導型の組織のために、人材戦略を設計、導入するという仕事を請け負ったことがある。ちょうど、長期的なキャリアとして、コーチングの認定取得の勉強を始めた時だった。私は、人材開発の方法として、組織にコーチング文化を定着させることは、かなり大きな成果をもたらすと確信していた。それは、私にとって初めての試みであり、その仕事は、コーチングのノウハウ(「なぜコーチングなのか」「コーチングとは何か」「どうやってコーチングを機能させるのか」)を発見するための、最高の実験台だった。当時を振り返り、私が学習したことを紹介しよう。

最近のビジネスケース

これからの組織では、社員全員が権限を与えられたと心から感じるだけではなく、社員全員が、権限をもって行動することも求められる。これまで私たちは、無頓着に「権限委譲」という言葉を使ってきているが、実際の組織はおおかた「指示モード」で動いていた。現実はどうかというと、リーダーが必要としているのは、部下を監督することから解放され、自分の時間と注意力を将来のビジョンや革新的なマーケットに集中することである。そして、リーダーが社員に求めるのは、過酷で、自律的な風土の中で、もっとアカウンタビリティを発揮してもらうことなのだ。

ここに、コーチングの役割がある。

社員をコーチすることは、「指示」から「質問」へのシフトを促す。社員が、自分で考え、決断し、思考力を伸ばし、自ら答えを見つけ、仕事において余裕をもち、「指示モード」に依存しなくなるようになる。これは、権限をもって行動する能力を養うことに役立つだろうか? もちろんだ。これは部下を監督する必要性を減らすことにつながるだろうか? まったくその通りだ。

また、コーチングでは、組織が望む人材になるためではなく、その人のために能力を開発することを重要視する。コーチングは、それぞれが生まれもったユニークな強みをもとに、潜在能力を最大限まで伸ばすことを可能にする。これは、既存の人材開発を補完するものである。コーチングの導入は、起業家への転身が好まれる現在の人材マーケットにいる優秀な人材を惹きつけ、雇用したいと願う組織にとって、重要で、非常に大きな変化である。

さらに、コーチング文化は、社員エンゲージメントや効果的な組織内の連携を促進するだけでなく、変革の精神をも育む。このことは、「VUCA(不安定、不確実、複雑、曖昧)」な世界にとって、欠くことのできない重要な意味をもつ。人々がお互いに心から相手の話を聞き、効果的な質問を投げかける文化、共通のゴールや力強いビジョンに向かって働くこと。これは「未来の組織」の定義だろうか?その通りだ。それはまた、コーチとクライアントの関係の定義でもある。それなら、コーチングを使わない手はないだろう。

4つの基礎

1. コーチとしてのリーダー

組織文化の変革の際、または、コーチング文化に合ったリーダーのロールモデルを打ち立てる際には、まず最初に、経営層からの指揮とガバナンスが示される必要がある。それは、コーチング文化を導入するだけではなく、継続させる上でも非常に重要だ。ここで、次の点に注意してほしい。リーダーは、自分を「コーチ」だと思っているかもしれないが、実はそうでもない。彼らは、よくて「メンタリング」、悪くて「指示すること」をコーチングだと勘違いしている。どちらも「コーチング」とは見なされないことは明確である。これは、多くのリーダーにとって直感的にくみ取れることではないため、手助けが必要となる。時間をかけてリーダーが適切なコーチと接する機会をもってから、コーチングスキルのトレーニングをすべきだ。

2. 効果的なストーリーテリング

コーチングがどんな成功をもたらしたのか? どんな成果を上げたのか? どんな流れだったのか? コーチとクライアントのセッションとは、どのようなものなのか? エピソードは? ストーリーを語れば語るほど、コーチング文化がもたらすことの期待値が伝わり、コーチング文化を継続し定着させたいと相手に思わせることができる。重要なポイントとして、「ストーリーテリング」を、組織内の伝達手段を使って伝えることからスタートすること。その後、組織外に働きかけて優秀な人材を惹きつけたり、自身のブランドの強化に使うと良い。そして、その時はストーリーだけではなく、成果やその指標も公表すること。

3. 能力開発

これまで示してきたように、コーチングは新時代の人材開発ツールであることは、明らかである。我々が、組織導入の設計段階で意識した戦略の鍵は、「少ない方がより多くのものを得られる("Less is more")」という哲学に従うことだった。そして、導入先として、影響力の大きい社員グループを選んだ。その結果わかったことは、コーチングの導入を営業部隊から始めないことだった。営業部隊は影響力は大きいが、維持・継続するのは難しいグループだからだ。その代わり、上級管理職へのパイプラインルートにいるハイ・ポテンシャル人材から始めることである。このグループは、反応がよく影響力も高い。コーチングを、彼らの学習および成長の道筋の一部にすること。彼らをコーチすることと並行して、彼らが、様々な部門・部署やチームを超えて、現場マネージャー/セールスマネージャー/オペレーション・マネージャー達をコーチできるようにトレーニングすることが重要である。

4. 報酬と表彰

「アメとムチ」のアプローチは、もちろん有効だ。この場合、さらに言うと「アメとアイスクリーム」のアプローチが有効だ。「アメ」は、コーチングに費やした時間、クライアントが達成した成果、ビジネス/オペレーションの目標が達成された、といった評価指標にあたる。組織内情報システムを利用して、これらの指標を管理、追跡し、営業やオペレーションの指標報告の一部として上級管理職の目に入るようにすると良い。「アイスクリーム」は、ひときわ顕著なコーチングによる表彰やコーチの認定などを指す。それらのポイントは、コーチの認定、クライアントからのフィードバック、社員エンゲージメントなどの指数と結びついている。テクノロジーを使ってそのようなリンクをつくると良い。

「コーチング文化」を築く
(私が担当した企業事例から)

コーチとしての経営陣

  • 経営陣が、直属の部下とコーチング・セッションを始めること。
  • 経営陣が、部門を超えてハイ・ポテンシャル人材に対するグループおよび1対1のコーチングを始めること。
  • 経営陣が、月/四半期/年次毎の業績評価の中で、コーチングの指標をモニターすること。
  • 経営陣が、コーチング文化の醸成とその指標を、年間戦略の優先事項に含めること。

効果的なストーリーテリング

  • リーダーに、自分自身や他者のコーチング体験を、全社ミーティングや講演、リーダー会議などで紹介するよう要望する。
  • キャリアがどのように形成され、チームがどのようにしてより高い業績を残したかについての事実やストーリーを伝える。
  • コーチングによる生産性へのインパクトを、社内情報システム上で示し、オフィスや全社会議で紹介する。
  • クライアントによる「私のコーチング体験」を紹介する。

能力開発 (コーチングを受ける階層ごとの優先順位)

  • 経営陣
  • リーダー職を継承するパイプラインにいるハイ・ポテンシャル人材
  • シニアマネージャー職への人材プールにいる有能な現場/営業マネージャー
  • HRおよびER(企業と社員の橋渡しをする組織)のメンバー

報酬と表彰

  • すべてのコーチに対する、コーチング契約と重要経営指標(KPI)
  • アセスメントやクライアントのフィードバックをもとにしたコーチ認定プログラム
  • コーチングの成果指標やクライアントからのフィードバックをもとにした、コーチやクライアントへの表彰、コーチとクライアントのパートナーシップや果たした役割に対する表彰

<筆者について>

リーナ・ダイヤル (Reena Dayal)氏は、執筆家、コーチ、講演者、メンター、トレーナーでありコラボレーターズ(The Collaborators)社の創設者。著書に『The Brilliance Quotient』がある。

【翻訳】 Hello, Coaching! 編集部
【原文】For the original article in English follow link to the Blogs page of The Collaborators UK Ltd.
Coaching Strategy: A blueprint for raising productivity and business bottomline


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