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組織にコーチング文化を育むために欠かせないこと
2018年04月06日
ハーバード・ビジネス・レビュー誌が10年前、140人の一流コーチを対象に調査を実施した。調査の結果、組織がコーチを雇う理由のトップ3は、「ポテンシャルの高い人材を開発するため」「相談相手になってもらうため」「成功を阻んでいる行動に対処するため」であることが分かった。コーチングは、業績、人材開発、キャリアに関する課題に取り組む手段として利用されていたのである。
時は移り2018年、コーチングは「一般的」なものになった。それはもはや、経営幹部や有望な人材だけのものではない。コーチングは、「人々の熱意、自己開示、関心を促すために組織で育む文化」と見なされるようになった。
組織のコーチング文化とは
面白いことに、「組織のコーチング文化」にはさまざまな解釈がある。行動コーチング・インスティチュート(The Behavioral Coaching Institute)では、「コーチング文化とは、組織の構成員が職場と最適な形で付き合うことのできる方法を定めた、組織の人材開発モデルの1つである」と定義している。インターナショナル・ジャーナル・オブ・コーチング・イン・オーガニゼーションズ(The International Journal of Coaching in Organizations)のビル・プーレン氏とエリン・クレーン氏による2011年の記事では、コーチング文化を「自分が支えられているという感覚と、成長、学習、成果を求められているという感覚を持てる環境」と説明している。
私は多国籍企業で17年間働いており、組織のコーチング文化がどのようなものであるかは、じかに接して知っている。私の考えでは、会社が社員とともに作り上げるクリエイティブな探求プロセスとしてコーチングを取り入れれば、関係者全員が開放感、安心感、信頼感を持てるようになる。
それでは、社員と会社の双方が信頼感と安心感を持てるようなコーチング環境を育むには、どうすればよいのだろうか?
信頼感と安心感を生み出すには、2つの要素があると私は考えている。それは、コーチが効果的な質問を投げかけて心からの関心を示すことと、コーチングを受ける各社員がコーチングの構成と期待できる成果を十分に理解していることである。
関心と真摯な姿勢
マッキンゼー・アンド・カンパニーが2016年5月に公開した記事「時代を先取りする:パフォーマンス管理の将来(Ahead of the Curve: The future of Performance Management)」では、「優秀な社員を動機づけて行動に駆り立てるには、自分の仕事の目的と価値を見いだすことができるようサポートすることが最も重要だ」としている。コーチングを活用し、社員の自己探索を助け、自分の目標に向かって前進できるようサポートすることを、ぜひ組織で検討するとよいだろう。
社員が心を開き、自分の目標についてコーチに話せるようにするためには、信頼感と安心感のある環境が欠かせない。コーチは社員に対して心からの関心を持たなければならない。自分に真摯さと意欲があることを相手に示すには、効果的な質問を投げかけ、話を注意深く聞こうとする態度を見せることが重要である。
ICFでは、効果的な質問力(Powerful Questioning)を「クライアント自身やコーチングの関係にとって最高の利益を得るために、必要な情報を引き出す質問をする能力」と定義している。効果的な質問を投げかけて話を注意深く聴き、話の内容を正直かつ誠実に考え、社員が目標を達成できるよう支援するには、コーチは全神経を集中させる必要がある。
また、相手への配慮を示すために、コーチング・セッションの妨げにならないよう、デジタル機器をすべて片付けておくことも重要である。通知を切り、機器をしまい、ノートパソコンやPCモニターの電源を切っておく必要がある。
コーチングとセッションに対する期待
社員にコーチングの機会を最大限に活用してもらうためには、コーチングに対する期待を明確にさせるとよいだろう。そうすれば、社員が今後の目標の優先順位を決めることができるようになるほか、信頼感を与えることができる。
社員がコーチング・セッションの構造を知らなかったり、どのような成果が期待できるか分かっていなかったりするケースをよく見かける。会社幹部は、一般的なコーチング・セッションの構成要素をはっきりと伝えるとよいだろう。その要素とは、目標を設定して優先順位をつけること、目標の意味を探索すること、行動計画を協力して決めること、そしてアカウンタブルであることを確認することである。
信頼と安心
相手を正しく完全に信頼したときに人は信頼されるエイブラハム・リンカーン
コーチング文化が根付いた組織では、社員の離職率が大幅に低下するとともに、生産性と社員の幸福度や満足度が向上することが、いくつかの調査から分かっている。信頼と安心を感じられる組織でないと、コーチング文化は成り立たない。
筆者について
ミシェル・ウー氏 (Michelle Wu) は、GE Power Services 中近東/アフリカ地域のデジタル・テクノロジー部門ヴァイス・プレジデントであり、最高情報責任者 (CIO) である。小規模のコーチング・ファーム、KRMWコンサルティング (KRMW Consulting, LLC) の創業者で、トランジション・コーチングを得意としている。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Fostering a Safe and Trusting Environment for Coaching in Organizations
(2018年2月8日にICFのCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。)
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